Chapter9 ギガース
みるみるうちに姿が大きくなったピスケス。高さにして約10メートルだ。
「こんなでかいのどうやって倒すんだよ!」
「わ、分からない。ど、どうすれば……」
上位職の巫女であるミーでさえ分からないと言う。
「やみくもにやっていくしかないのか……」
やはりそうするしかないらしく、ミーも魔法攻撃を続けている。
「俺もやらねえと!ブースト!雷属性!」
そう叫び、ピスケスに襲いかかる。左から右へ水平斬り、その後、上から下へ垂直斬りをし、後ろへと下がる。
「ぐっ!?」
どうやら麻痺がついたらしく、ピスケスの体を電撃が走る。
「ヤツは水属性だけだ!雷属性を使っていくぞ!」
「おう!」
「電撃神よ、今ここに力を現せ!ストライクサンダーフラッシュ!」
今まで使われてきた魔法攻撃の中でダントツに名前が長い攻撃を与える。さらにピスケスに電撃が走り、動けなくなっている。
「ストライクサンダーフラッシュ、雷属性の魔法攻撃に約10秒のスタン効果まである魔法攻撃。いつこんな魔法を使えるようになったんです?」
ミーも驚きを隠せないようでリンに聞く。
「なんかいつのまにか使えるようになってたから、詠唱を覚えてたの」
「なるほど。たまには良いことするじゃん」
「いつも良いことしてるし!」
やはりいつも通り、ツンデレさは変わらないな。そう思いつつ、ふと気づいたことを聞いた。
「MPの方は大丈夫なのか?」
「それが、あんまり使わないのよ」
強さがあってMPも使わないのはあまり見かけないと噂でも聞いたことがある。恐らくはこれを知った人は死に物狂いで習得しようとしてくるだろう。
「ピスケスの動きが止まっている今、攻撃できるチャンスだ!総員、かかれ!」
「「「おう!」」」
ユウはブーストした剣でピスケスを攻撃する。リンは雷属性のストライクサンダーフラッシュを使いまくる。レイはテイムしたモンスターと、自信が持つ槍で攻撃する。
「ブースト!雷属性、対象はテイムモンスターと槍!」
「んな!?同時にブーストしただと!?」
レイもそんなことができるようになってたのかよ、とユウは思っていた。
「そんなもん効かんぞよ!」
「な、なんだって!?」
全員が全力で戦っているのに、それが効かないとピスケスは言っている。
「そんな……属性的にも有利なはず!」
「我の装備を見てみたまえ、挑戦者よ」
「ま、まさかあの防具に……」
ピスケスが纏っている黒の鎧は自分の不利属性である雷属性の耐性を持っているようだった。
「雷属性のブーストを止めるんだ!代わりに炎属性以外の別の属性をブーストすればいける!」
「そんなのわかってるわよ!けど……」
「他の属性がブーストできないんです……」
リンの代わりにレイが答える。
「……え?」
「私たちがブーストできるようになるにはもっとジョブレベルを上げないことには……」
「くそっ!なら……どうするんだよ……」
ユウは近くにある壁を殴る。
「……ん?何かこの壁が違うような……」
「ユウ、どうしたの?」
リンが聞く。
「ううん。なんでもない。今は集中しないと!」
「そういってるあんたがちゃんとしないと……」
「う、うん。ブ、ブースト……」
そう言うが、ユウの声に気力は感じられない。
「ユウ、ちょっと休んだら?」
「いや……大丈夫。ちょっと考え事してただけだから。……ダメなリーダーでごめんね……」
「ダメなんかじゃないよ!」
「そうですよ。ユウさんは私のお兄ちゃんなんだから」
「意味深すぎじゃねえか!?レイさん?」
ユウは今までで一番のツッコミを入れた。その言葉にレイは何も答えなかったが、クスクス笑っているように見えた。
「レイ、どうした?そんなに面白いことがあったのか?」
「ううん。ユウさんの調子が戻ってきたから」
確かにそうだ。ユウはいつも以上に笑っている。そう、自然と笑顔になったのだ。
「なんか調子出てきたぞぉ!あ、そうそう。あそこに壁かあるだろ?その壁が違うような気がしたよ。則ちあそこにあるものがこれを切り抜ける策なんじゃない?」
「え、どれどれ?」
「触れてみたらわかるよ」
リンの代わりにレイが壁に触れる。
「確かに違います、お兄ちゃん」
「お兄ちゃんはやめい!」
「この壁だけ、なんか異様にガタガタしてます」
「スルー……だと?」
そのツッコミさえもスルーしリンが壁に触れる。
「確かにガタガタだね。壊してみる?」
「ああ。やってみてくれ」
「エクリクシス!」
すぐに壁が破壊されるほどの爆発が発生した。その先に広がっているのは……
「な、何これ。何かあるぞ?」
「確かにありますね。ミーさん、これ何か解りますか?」
「見に行くから誰かピスケスの相手をしてて!」
「わかりました。バク!相手しててください!」
「グルゥ!」
レイはテイムしたモンスター、「バク」をピスケスに襲わせている。
「こ、これなんですけど……」
「どれどれ?…………こ、これは!?」
「知ってるんですか?」
ユウはミーに聞く。一体なんだと言うのだ……。期待を込めながらミーの次の言葉を待つ……。