白い部屋で
「どうなってるんだこれは」僕は、呟いた。なぜか僕達は白い部屋にいた。
「さあ?どうなってるんだろうね?」僕の隣から声が聞こえてくる横を見ると僕の背より少し低い女の子が不安げに胸の前で手を押さえていた。彼女は、天谷雫僕の小学校からの友人だ、「ねえ、そーちゃん。私達…生きてるの?」
そうだ……あの時、僕達は死んだんじゃなかったか?
眠い。いつものことだが今日はことさら眠い…。
理由は分かっている、昨夜遅くまでゲームをしていたからだ。
VRMMO「クロスソートオンライン」
剣と魔法のファンタジーに銃器を盛り込んじゃったゲームである。サービス開始前までは「こんなもの面白いはずがない」「ファンタジーぶち壊しじゃねーか!」など批判的な声が多かったが、サービスを開始して1週間で「ごめん、普通に面白いわ」「予想以上にファンタジー」などの肯定的な声に変わったという伝説も持っていたりする。
そのクロスソートで僕、兎賀相太ことトガはトッププレイヤーとして活動している。プレイスタイルは高いSPDとATKで敵を瞬殺するというスタイルだった。それにしても
「ああ、眠いな畜生…」呟いたところで眠気が飛ぶわけでもないけどな……などと考えていると、強い衝撃を背中に受けた。振り返ってみるとそこには見知った顔があった
「おはよー、そーちゃん!今日も不健康的な顔色だねえ」笑ながらそう言ったのは友人の天谷雫だった。
「朝からなにしてんの?バカなの?」僕は、呆れて言った
「残念!私はそーちゃんより頭はいいよ〜!」…そうなぜかこいつは頭がいいのである。何故だろう僕は眠気を我慢して授業を受けていて、こいつは爆睡してるのに。こいつの方がテストの点が高いのはおかしいんじゃないだろうか、なんでなの教えておじいさん。
「で?そーちゃん今日は何時までゲームしてたの?」
「3時半」
「うわ…そーちゃん身長伸びないよ?」
「うるせえよ、やめろよ傷つくだろ」
身長の事を言うのはやめて欲しい、そりゃ165cmしかないけども……
「そんなことより今日から始まるイベントにはもちろん参加するんだろ?」僕は雫に尋ねた、
「当たり前じゃん!一緒に頑張ろうね!」そう、実はこう見えて雫もクロスソートをやっているのである。プレイスタイルは魔法を主体としたもので威力は高い。しかしクロスソートにおいて魔法主体というのは一般的ではない、何故かというと遠距離攻撃は銃器を使えば済むからである。
クロスソートにおける魔法の評価は、
・威力は高いが発動が遅い
・飛距離が銃に比べて短い
となっており正直な話、魔法主体というのは使えない、とされておりみんな回復魔法を取ったら後は放置といったスタイルになっていた。
しかし、雫は変わっていて「せっかくのファンタジーなんだから魔法使いたいよね!」と言って魔法スキルを上げまくっていた。周囲のプレイヤーからは「バカだな」「銃の方が強えだろww」「魔法少女www」などと言われていたが、めげずに上げ続けた結果魔法スキルをマスターし1番目にスキルをマスターしたものに与えられる固有スキルを手に入れ、とてつもない強さを手に入れていた。
「ほら、そーちゃん!そんな暗い顔しないで!今日はとてもいい天気じゃない!」
「この曇り空を見ていい天気と言えるお前の目はどうなってんだ」
まったくこれで僕より点数取れるなんて泣けてくるね。
そんな風にふざけながら学校に向かっていた時突然轟音が鳴り響いた、
「雷でも落ちたか…?」僕がそう呟いたと、同時に悲鳴が響き渡った。
なんだよ、煩いな…そう思い悲鳴を上げた方向を見ると1人の女性が僕達の頭上を見ていた。
なんだ?なにかあるのか?僕は上を仰ぎ見た、そこには何本もの鉄骨が降り注いでいた。
ああ、これは死んだな……そう考え、僕の意識は途切れた。