プロローグ
残酷表現タグをつけておりますが、現状ではそういった表現・描写はありません。
今後どういった形になるかわかりませんので、とりあえずの措置ということで。
古より人の世にて暗躍するモノ 闇に紛れ人々に害をなすモノ
それらは妖や魔、悪霊など数多の名で呼ばれて来た
文明が進み科学の進歩した現代人にとって
彼らに対する恐怖といった感情は 随分と薄れたように感じられる……
暦20XX年 夏──。
時刻は深夜一時に差し掛かった頃。
とある街のとある家のとある中学生の部屋にて、暗闇の中蠢く影があった。
「よし…っと。不法侵入成功ッ」
その言葉の内容とは裏腹な、あっけらかんとした気楽さを含んだ声が聞こえる。
窓際に立つその影は月明かりを浴び、二つ並んだ髪留めの存在を明らかにした。
この侵入者は女性のようである。
「式紙を使えば一民家のセキュリティなんてホント意味ないなぁ」
声や話し方から中高生くらいの少女かと思われる。
どうやらその少女、窓と窓の隙間から式紙を侵入させ、なんなく鍵を開けて進入していたようである。
「へぇ…最近の学生さんは部屋が綺麗なんだ…って私も学生なんだけど…」
綺麗に整理整頓された室内を見渡し、部屋の主が起きぬ様小声で呟く。
いくら声を殺していたとして人によれば起きる者も居るだろうに、
その表情からはそんな心配など一切していないように思える。
「毎度の事ながら、起きないって分かってても小声で喋っちゃうんだよなぁ。
まぁ潜入してる感を自分で演出してるんだけど… フフ、私お疲れ様」
何やら不思議な力が働き、起きないようになっているような口ぶり。
がしかし、それはそれとして、なんとも独り言の多い侵入者である。
はてさて、この自演乙な独り言を言っちゃう式紙使いの少女、一体何の目的で侵入しているのか……