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第九話 ミッションコンプリート

そして次の日……


私は、あの倉庫の一室で待っていた。

今日は話し合いのつもりなので、私の前にはアジトで使っていたような折り畳みの長いテーブルが置いてある。折り畳みの椅子も用意した。

私とヒロイン二人の分で合計三つ、向こう側に二つの椅子を並べて置いてある。

そして、準備しておいた数種類の資料をテーブルの上に置く。

二人が来たら、このテーブルを挟んで話し合うつもりだ。


倉庫で待っていると、遠くから物音が聞こえて来る。

お? 来たかな?

しばらくすると、静かに扉が開いた。

そして昨日最後に話していた亜希子が、一人で部屋に入ってきた。

「ん? 今日は一人かい?」

おもわず聞いてみると、少し間を置いてから小さめの声で答えた。

「えぇ……私一人居れば十分でしょ。佐希子まで危険な目に合わせる訳にはいかないわ」

「あぁ、なるほど。危険だと思ったんだね?」

私が人差し指を立てると、亜希子は急に怒鳴った。

「そりゃそうでしょ!」

何やら妙に怒っているようなので、私は笑みを浮かべて返す。

「でも今日は、そんな危ない事なんて無いよ。まずは話をしよう、まぁ座って」

心配そうにしながらもそこの椅子に座るが、心なしか少し震えているようだ。

どうしたんだろう……それほど寒く無いよな?

そう考えながらも、亜希子の様子を良く見る。

そうかっ! なるほど……

私はまた笑みを浮かべながら亜希子に言った。

「今日は変身しないで来てくれたんだね、ありがとう」

するとキョトンとして私を見ている。

「攻撃の意思が無い事は良く伝わってるよ、怖かっただろ?」

それに黙って頷いたので、私は話を続ける。

「ごめんね、そんな思いをさせるつもりじゃないんだ。今日の話は、昨日の続きでね。この組織を、NPOのボランティア団体として蘇らせる計画を聞かせようと思っていたんだ」

それに、はぁ? と言った表情を浮かべて呟いた。

「あんた……何を言ってるの?」

「いやっ! だから悪の組織じゃなくて、ボランティアを始めるんだよっ! これからのテーマは愛っ!」

それに目を丸くしてパチパチと瞬きをしている。そして一言呟いた。

「もしかして、あんたバカ?」

「バカとは酷いな~」

私が笑いながら答えると、畳み掛けるように言ってきた。

「そんな事できる訳が無いじゃないのよ! 私をバカにするのもいい加減にしてよ!」

「いや、本気なんだってば。まずはコレを見てよ」

テーブルの上に、法人団体の登録に必要な書類を並べて見せる。

「これから新しい会社として立ち上げなきゃいけないから手続きは大変だけど、これが認可されればボランティア団体として活動できるんだよ」

それを見て亜希子は目を点にしている。そして小声で聞いてきた。

「ほんき?」

私が素直に頷くと、亜希子は突然に笑いだした。

「ちょっと……いくらなんでもさっ! いや、もうムリ! あんた本物のバカでしょ!」

こちらを指差しながら激しく笑っている。

「いや……ウケてもらって嬉しいけど、至って本気だよ?」

その答えに、亜希子はそのまま腹を抱えて笑い転げてしまった。


しばらく笑いが止まらなかったようだが、ようやく落ち着いてきた亜希子が聞いてくる。

「それで? そんな事を聞かせて、どうするつもりなの?」

私は一度頷いてから答えた。

「実はね……私達は、君達だけでは無く他の組織からも狙われているんだ」

すると不思議そうな表情を浮かべて聞いてくる。

「どういうこと?」

その質問に、私は考える素振りを見せてから答えた。

「君達は知らないかもしれないけど、私達のような組織は数多く点在しているんだ。そして奴等は、こう言った善に満ちた活動が大嫌いだ。私達は、それ等に狙われているんだよ」

しばらく間を置いてから、亜希子は首を傾げながら言った。

「それ、なんか変じゃない? 良い事をすると狙われるの?」

「そうなんだ。少なくとも、これまで悪を名乗って来た組織だからね。彼等にしてみれば、面子を潰されるようなもんさ。それこそ何か活動するごとに、残党狩りのように仲間が殺されてしまう事が予測できる」

それを黙って聞いている。

私は一呼吸置いてから、亜希子に言った。

「それで……私達を、悪の組織から守ってくれないだろうか?」

しばらく固まったままだったが、また不思議そうに聞いて来た。

「え? 私達が?」

素直に頷くと、慌てたように言ってきた。

「ちょっと待ってよ。ソイツ等ってさ、いったい何を狙っているの?」

私は軽く溜め息を付いてから答えた。

「まぁ奴等の考える事って言ったら、大抵は世界征服とかじゃないかな??」

「そうすると? いずれはソイツ等が、私達の平和を乱すって事?」

それに素直に頷くと、亜希子は深く考え始めた。

また、しばらくの間が空く。


やがて亜希子は呟くように言った。

「わかったわ……ソイツ等の事は、私達に任せて」

おっし! きた~!

心の中でガッツポーズを決めながら、真剣な表情で続ける。

「ありがとう。これで心置きなく、慈善活動が出来るよ」

その時、亜希子が冷たい視線を送ってきた。

「でも、もし騙したりしたら……その時は、覚悟しておきなさいよ……」

お~こわっ!

私は、また素直に頷いた。



















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