第五話 作戦遂行中
部屋を出れば、そこはだだっ広い空間。
右の方に、この倉庫の出入り口がある。
ここは同じような部屋が二つ並んでいるだけで、他に目立つ物と言えば所々に積まれた廃材くらいだ。
左隣の部屋の前を見ると、そこにはエビキラーが用意してくれた空のダンボールが扉を隠すように積まれている。
私は、そのダンボールを今出て来た佐希子の居る部屋の前へと移動し始める。
すると、廃材の影に隠れていたエビキラーが出て来た。
そして二人で部屋の扉が見えなくなるように、空のダンボールを綺麗に積み上げた。
とりあえず、これで扉は一つしか見えない状態になる。
まぁ良く見ればこんな物はバレバレなんだが、焦っている状況であればおもわず見えている扉に飛び込んでしまうものだ。
「それじゃ、もう一人が部屋に入って来たらコレ片付けておいてね」
私がダンボールを指差すと、エビキラーは素直に頷いてまた廃材の影へと歩いて行く。
それを見届けてから、私は隣の部屋に入って行った。
私は、その部屋で戸賀亜希子を待っていた。
隣の部屋とを仕切っている壁にはガラス窓が付いていて、佐希子が大人しく座っている様子が良く見える。
だが、向こうからはマジックミラーで見えない仕掛けだ。
とりあえず防音設備もバッチリ準備してもらったので、多少大きな声を出しても隣には聞こえない。
まぁ言ってみれば単純な仕掛けだが、鏡になっていると意外にわからないものだ。
佐希子から預かったクリスタルを良く見てみる。
へぇ~……ハート型なんだ~。良く出来てるな~……
色々な角度で見てみるが、様々な角度のカットから反射する光がとても綺麗だ。
もしコレを使って私が変身したら、いったいどうなるんだろう?
いや……
可愛いスカート姿とかになったりしたら、死ぬほど恥ずかしいからやめておこう……
下手な興味本位でやるものでは無い。
しばらく待っていると、部屋の扉が開いた。
「佐希子を返しなさい!」
景気良く入ってきたのは、これまた派手な女の子だった。
まぁどう考えても、戸賀亜希子の変身姿だろう。
私は隣の部屋を指差しながら答えた。
「君のお友達は預かった。まずはその変身を解いてもらえるかな?」
そこに視線を送って目を丸くした。
「さ……佐希子……」
実際は自分で手錠を掛けて座っているだけなんだが、今の状況を考えればそれだけでも捕らえられていると勘違いしがちである。
「さぁ、どうする?」
私が問うと、悔しそうにしながらも変身を解く気のようだ。
亜希子がポーズを取ると、また眩しい光が部屋を包む。
そしてクリスタルが手にあった。
「では、それを渡してもらおう」
「いやよっ!」
「あれれ? 佐希子ちゃんは、どうなってイイの?」
また隣の部屋を指差すと、悔しそうにクリスタルを差し出してくる。
私は、それを笑顔で受け取った。
よし……これで、第二段階終了だ。
しかし、ここまでチョロイとさすがに拍子抜けするよな……
アイツ等って、今まで何をしていたのやら……