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第十話 なんだと?

ちなみにこれからの連絡先を、どこにするか少し悩んだ。

何しろアイツ等ときたら商業ビルの中だと思って安心しているのか、平気で怪人姿のままウロウロしている事がある。

もしそんな状態のアイツ等と二人が出くわしたりしたら、それこそ大騒ぎになりそうだ。

そこでエビキラーが用意してくれた倉庫を、このまま引き続き借りて貰う事にした。


何やら話によると、ここの家賃は相当に破格らしい。

そのお陰で、首領の許可は簡単にもらう事が出来た。

まぁここに来るのは私とエビキラーしか居ないのだが、名目上はネオミルクティ出張所と言った立ち位置である。

しばらくは、ここに通うのが日課になりそうだ。


まぁここには電気も水道も無いが、別にここで生活する訳では無い。

すぐ近くの公園には公衆トイレがあるし、その側にはコンビニもあるのでそれほど不便を感じる事は無かった。



それから数日が経ち……


今日も続々と集まってくる申請書類を、ひたすらに確認をしている。

これに関してはエビキラー以外にも数人の手を借りて手伝ってもらっているのだが、さすがに誰もNPOの申請なんてやった事が無いので意外な所で不備が見つかったりするのだ。


しかし実際の所、この申請が素直に通るのかと言えばかなり微妙な所である……

だが少なくとも今は、こうした事で前向きなアピールをして行かなければ信頼関係など築けやしないのだ。


まぁもしこの申請が通らなかったとしても、私はそれほど大きな問題だとは思っていないのも確かだったりする。

まだ初めの一歩も踏み出して居ない状況で、わざわざ己の視野を狭くする必要など無い。

本気で慈善活動がしたければ、リサイクルでも森林保護でも仕事は探せばいくらでもある。

どう転がったとしても、まずは何かしらの形にする事が大切なのだ。



テーブルの上にまとめてあった書類を一枚ずつ手にして目を通していると、扉が開くと同時に元気な声が部屋に響く。

「今日も、来たわよ~!」

あれから、亜希子がここに良く来るようになった。

私はチェックをしているうちに乱雑に広がってしまった申請書類を、適当にまとめながら笑みを見せる。

「あれ? 今日も一人なんだ?」

亜希子はテーブルの前に置いてある、折りたたみ椅子に座りながら言った。

「何言ってるのよ、敵なんて私だけで十分よ!」

「そうなんだ……なんか心強いよ」

私は微妙な笑みを浮かべていた。



そして、しばらくの月日が経ち……



それからは私達を狙って攻めてくる敵を、亜希子は順調に殲滅して行ってくれる。

初めの頃はさすがにちょっと心配で慎重に様子を見ていたのだが、この子は本当に強い。

ハッキリ言って、敵に回したくないって感じだ。

もう何度も戦いぶりを見ているが、安心して見ていられる。



しばらくはそんな感じで楽勝とも思えたのだが、今日はちょっと状況が違う。

私の予想を遥かに上回る強さの敵が現れてしまったのだ。


亜希子が私の目の前で戦って居るのだが、ちょっと信じられない思いだ。

こんなに苦戦している亜希子を見るのは初めての事である。

その表情からは、相当の焦りが感じられる。

これは、さすがにヤバイ気がする……


その時、エビキラーが不安そうに聞いて来た。

「応援を……呼びますか?」

それを聞いて、私は少し悩んだ。

まぁ普通はそれが妥当な選択と言えば確かだが、あの亜希子でさえこの状態だ。

さすがに無理だ……下手な加勢は、無駄な死を招くだけ……

私は、呟くように答えた。

「ここで無駄に仲間の命を犠牲にする訳には行かない。頼む……せめて、君だけでも逃げてくれ」

エビキラーは厳しい表情でしばらく黙っていたが、唸るように呟いた。

「わかりました……お気をつけて」

そしてエビキラーは、唇をかみ締めながらその場を去って行った。



私は、また亜希子の方へと視線を戻す。

奴の姿は外見的にはタコ怪人のような感じでさほど強そうではないのだが、どう言う訳か異常な防御力を有しているようだ。

すでにパンチやキックは数え切れないほどクリーンヒットしているし、亜希子お得意の技でクリスタルボールと言う光の玉は既に3発もぶち込んだ。

その威力を、私は何度もこの目で見ている。

普通の怪人ならば、それ一発で軽く消し飛んでしまうほどだ。

だが奴には、その強力であるはずの攻撃が全く通用していないのだ。


そして奴が次々と放つ、手裏剣のような刃はやたらと強力だ。

亜希子が避けたその刃は、遥か後方の分厚いコンクリートを破壊しながら思い切り減り込んでいる。

あんな物に当たったら、ひとたまりもない。



私は、慌てて佐希子の携帯に連絡した。

「はい、井倉です」

「あっ! 佐希子ちゃん? 亜希子ちゃんが危ないんだ! すぐに来て!」

「え? どう言う事?」

「いいからすぐに来て! 敵が強すぎて、本当に危ないんだ!」

「わかったわ! 今どこ!」

居場所を教えて携帯を切ると同時に、私は亜希子に大きな声を上げた。

「もうすぐ佐希子ちゃんが来るから、ムリしないで!」

それに頷いたのかは良く見えなかったが、少し敵との距離を置いて戦っているようだ。

私は、その様子をひたすら伺うように見守っていた。



没頭するように戦いを見ていると、後ろから佐希子の声が響いた。

「おまたせっ! クリスタルパワー~チェ~ンジ!」

変身が終わり果敢に奴へと攻撃を仕掛けるが、見るからに効いていない……

少し距離を置いて二人の同時攻撃を仕掛けるが、それも効果が無いようだ。

その時、二人が動きを揃えて声を上げる。するとその間に乱気流が発生したかのように不思議な光の渦が現れた。その光は、見る見るうちに巨大化して行く。

「クリスタル、バ~スト……」

ん? その掛け声って、どっかで……

そうか! 資料のアレだ! 確か、二人が一番追い詰められた戦いの中で放った技だ。

コイツを食らった3体の兄弟怪人が、一瞬で消滅した超大技である。

これならヤレルか!

二人の間に現れた光の塊を、奴に向けて勢い良く放つ。

「グレネ~ド、ショット!!」

その光は辺り一面を巻き込むように包み込む。

あまりの眩しさで見ている事が出来ない。

私は、おもわず腕を翳した。

やがて物凄い光が徐々に収まってゆく。

どうだ……やったか?

前方に目を凝らして確認したその時、私は自分の目を疑った。

奴は、そこに平然と立ち尽くしている。

そして、二人を嘲笑うかのように言った。

「なんだ? この程度で、俺に勝てるとでも思ったのか?」

なんて……奴だ……



















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