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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第一章 何気ない日常
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確かその魔力は……



「はぁ……」

「どうかしたの? リク君」


 ボクのため息に早々に気がついたソウナが声をかけてきた。


「えっと、少し魔力を放出してみたんですけど……なんにも出なくて」

「え?」


 すると、ボクの言葉に意外だと思ったようにソウナが目を丸くする。


「今、確かにリク君の魔力を感じたわよ?」

「え?」


 今度はボクは驚く番だった。


「確かに……ウチも感じたからホントだと思うよ~?」


 マナもソウナの言葉に裏付けるようにして言ってくる。

 真陽は何を言わずにただ見ているだけ。気づいてはいると思うのだが、何かを考えるようにしている。

 ボクはもう一度右手から魔力を放出。なるべくそれを丸い形にするようにして見るが、残念ながら形作ることはできなかったし、そもそも色も見えなかった。


「やっぱり感じたよ~?」

「ええ。今度は先ほどよりもしっかりと。意識していたからかもしれないけど……ちゃんと感じたわ」


 二人がこういうのでボクはさらにわからなくなる。

 色が見えていないから魔力は流れ出ていないと思うのだが……。


「とりあえず、リクは魔力を動かすことぐらいはできるんだねぇ?」

「あ、はい……。そうみたい……です」


 まだ半信半疑ではあるが……。


「微妙って感じだねぇ。それじゃぁ、今日はひたすら自分の魔力を知ることかねぇ。誰の助言を受けてもいいから何とか理解してみなぁ。先に言っておくけど私はわからないって言っておくよぉ? これまでいろいろな魔力を見てきたけどぉ、リクのような魔力は本当によくわからないからねぇ」


 真陽がお手上げ行動を取る。

 ボクは真陽がわからないとすると、ソウナやマナもわからないなと考える。

 ここは魔術の神であるルナに訊いてみようと思う。普段からルナはボクの魔力も操っているのだからわかると思うのだ。


「む? リクの魔力じゃと? なんじゃったかのぅ……。昔にもリクの様な魔力を持った者がおったのじゃが……」


 記憶喪失のおかげでルナから答えが聞けなかった。

 仕方ないのでシラに訊いてみると……。


「え? りくの『魔力』はわたしとおなじ『氷』にたけた『魔力』ではなかったのですか?」


 それならば青系統の色が見えるはずなのだが、そんな物は見えなかった。


「でも、わたしの『魔法』をつかうときは『氷』がよろこんでちからをかしてくれますよ?」


 喜んで力を貸してくれると言われてもボクにはさっぱりなのだが……。


「ねぇねぇ。あたし――」

「すみません、つき。すこしかんがえたいので『静か』にしてもらえるとうれしいのですが……」

「あ、あれぇ? あたしもしかして邪魔みたいになってる?」


 ツキが微妙な顔をして「失礼しました~」とか言いながら隅にある遊具で遊び始めた。

 神三人にもわからないみたいだし、後わかるのは母さんぐらいしか思いつかない。


「ディスは何か分かる?」

「いや、僕もわからないな……」


 顎に手を当てて考えてみるけどディスはハテナを浮かべただけだった。


「フィエロは?」

「私も、リク様のような魔力はあまり詳しく知らなくて……。ですが、源雪(ゲンセツ)一族ならばあるいは……」

「「「源雪一族?」」」


 初めて聞く言葉にボクとソウナとマナが同時に訊き返した。


「知りませんか? 確か、悪魔を殺す事を生業とする村の人達が源雪一族と呼ばれているのですが……」


 悪魔を殺す? ということは神と契約している人がたくさんいるという事?


「そ、それってどこですか!?」


 同じ神使いならば少なくとも母さんやユウよりはわかりやすく教えてくれるかも知れない。

 そう思って訊いて見たのだが……。

 返ってきたのは真陽の言葉。






「あぁ、源雪一族なら二十年前に滅んだよぉ」






 どこか遠くを見るようにしながら言う真陽。少しの哀愁が目に浮かんでいる。


「ほ、滅んだのですか? あの一族は……」


 驚くフィエロ。最後に何かを言いたそうにしていたが言葉を呑みこんでしまっていた。


「真陽さん。滅んだって……」

「ん~。すまないねぇ。理由は言えないよぉ。あんまり言いふらす事でも無いからねぇ。それにしても、フィエロはどこで源雪一族を知ったんだぃ?」

「昔、源雪一族に力を貸していた神の一人でしたから」


 少し暗い顔になって答えるフィエロ。その目にはかつて力を貸していた人達の影が映っている事だろう。

 これ以上その一族の話をするのはよくないだろうと思い、ボクは話題を変える事にした。


「えっと、フィエロはこの魔力を知っているんですよね? 何属性が得意だとか……わかりませんか?」

「そこまでは……。ただ、その魔力がさまざまな神を使う上でとても大切な物だと思われます」


 そっかぁ……と心で落ち込む。

 とりあえず、魔力が放出ができるという事はコントロール出来るということだ。


「真陽さん。自分の魔力が得意な属性がわからなくても大丈夫ですか?」

「あのさ~」


 ボクは時間が無い事がわかっているので、真陽に顔を向けてそう言うが……。


「それは……少し厳しいねぇ。それぞれの属性をやらせてみて、もし違う属性が偶然にもうまく出来てしまってその属性ばかりを練習してしまったら時間の無駄だからねぇ」

「えっと、訊いてる?」


 却下されてしまった。理由もしっかりしているし、反論はできない。


「そうですか……。わかりました。今しばらく考えてみます」

「……聞こえて無い的な?」


 これも魔力コントロールがうまくなるためだ。仕方がない。


「まぁゆっくりしてみなぁ……っと、期限は一週間だったねぇ」

「え? なに? これいじめ? 聞こえてるよね?」

「そうなんです……一週間……」


 これが一ヶ月後とかだったらまだ猶予があったのだが……。今は完全に切羽詰まっている状態。

 頑張らなくては。


「リク!!!!」


 突然の叫びにボクは肩をビクッと揺らせて、ボクは声の聞こえた方へ顔を向けた。

 すると何やら疲れた様子のツキが肩で息をしていた。


「ツキ? お腹空いたんだったら家の冷蔵庫に確かアイスが入っていたはずだから食べても……」

「え? ホント!? じゃあ今から食べに……ってちがぁぁぁぁぁぁああああああああう!!」


 お腹空いたのでは無かったのだろうか?

 ツキがボクに用事があるようなことなんてそれ以外に思いつかない。


「そういえばツキはどうして肩で息をしているんですか?」

「リクが……何度言っても気づいてくれなかったから……」

「え? 何度も!? すみません。ツキ」


 まったく気がつかなかった……。そういえば真陽と話している最中に視界の端に灰色の髪が見えていたような気がした。


「それで、どうかしたの?」

「あれ……。何を言おうとしていたんだったっけ……?」


 頭に人差し指を当てて考え込むツキ。おそらく、ボクを呼ぶ事に必死で言おうとした事を忘れてしまったのだろう。

 なぜもっと早く気づいてあげられなかったのだろうか……。

 とりあえずボクはツキがなかなか思い出さないので自分の魔力を知ろうと目を閉じて感じてみたり放出してみる。

 すると、ツキがやっとの事で思い出したように右手を左手に打ち付けた。


「思い出した! リクリク!」

「なんですか?」


 何度も名前を呼ばなくても聞こえていると言いたいところだがまたそんなことを言っているとツキがせっかく思い出してくれた事をまた思い出すべく唸らせなければいけない。


 だから黙っていると、ツキはとんでも無い事を言った。







「リクの魔力はあたしがずぅっと前に力を貸していた人間と同じなんだよ! 確かその魔力はね?







 ――全属性が得意な空白色の魔力なハズだよ!」




誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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