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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第六章 淵海曲
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強い意志

視点レナさんです。



 わたくしが放った三つの水の槍はキリは直線状にダッシュしてきた事により避けられる。


「〈雷球〉」


 キリはその手に雷の玉を出現させ、それを投げてくる。かなり速度が速いのでギリギリのところで避ける。


「〈ウォータースライサー〉!」


 水の刃を展開させて水平に斬る。キリはそれを拳を使って下からはね上げるようにして飛ばす。


「〈雷剛拳〉」


 キリが目前まで迫り、その拳を振り上げてくる。わたくしはウィンディーネの手を取って、後退する。

 拳が空振りすると、すぐまた次をいれ込もうと跳躍して迫ってくる。

 〈雷迅〉が発動されているために目で追う事を初めから諦めているわたくしは魔力だけで追う事しかできない。

 そのキリがウィンディーネに追いつく速度なのでわたくしは次の魔法を使った。


「〈ウォーター〉!」


 発動され、顕現した水はキリへと襲い掛かる。それをキリは曲折し、速さに物を言わせて避けるので、わたくしは水を操作して大量の水を囲むようにして襲わせると、キリはジャンプをして回避、わたくしは二つの魔力を設置する。


「〈レインクラスター〉!」

「!」


 水圧を爆破させてキリにダメージを入れる。だが、全身に雷を纏わせているのであまりダメージは与える事が出来ないだろう。

 そして落ちたキリが着地したと同時に、また魔法を発動する。


「〈ウォーターロック〉!」


 水の刃物が、キリの着地した地面から出て来て、それでキリの四肢を縫いつける。

 だが、纏っている雷でそれは阻まれ、刺す事が出来なかった。


「残念だったなぁ!」


 跳躍し、更に接近してくるキリ。わたくしはウィンディーネの力をさらに増大させ、魔法を放つ。


「〈ウォーターランス〉!」

「おせぇっつってんだろ!」


 水の槍は避けられ、そしてキリの拳がわたくしへと向かってくる。

 手を交差させて防ぐと、電気の痺れと痛みが同時に襲ってくる。


「くぅ……ッ」


 続けて拳を引き絞るキリに向けて、わたくしは手を広げる。


「〈レインスプラッシュ〉!」


 キリの目の前で拡散魔法が発動し、キリはそれを全て受け止める。

 そして、いままでわたくしの前ではした事の無いような後ずさりを二、三歩して下がる。


「やっべぇ……。女の体ってこんぐらいでよろけんのかよ……」


 それはそうだろう。今の魔法は本来広範囲に居る敵を攻撃するもので、それが全て当たったのだ。ここは湖が近くにあり、そしてウィンディーネの力も借りている。よろけてくれなければこちらが困る。


「女性の体は繊細なんですわ。仙ちゃんにはわからない事ですわね」

「クハハッ。違いねぇ。〈雷剛拳〉!」


 笑ったキリはその手に握る拳の魔力を増大させて襲ってくる。


「〈ウォータースライサー〉!」


 水の刃が雷の拳に当たるが、雷は弱点だけあってすぐに壊れる。

 わたくしはまたも後退し、キリから距離を取る。


 そのうち、湖の中へと侵入していく。

 キリは脚が水の中になるために動きずらくなるが、水を扱うわたくしにとってはそうでもない。こちらの方がむしろ動きやすいとさえ思う。

 わたくしは魔力を練り、水しぶきを跳ね上げるようにして近づいてくるキリに魔法を放つ。


「〈ウォーターランス・散槍〉!!」

「おせぇよ!」


 散槍の水の槍を屈折して避けたキリは、そこから〈雷球〉を投げてくる。わたくしはウィンディーネに任せる。ウィンディーネが水の膜を作って跳ね除ける。だが水の膜だったためか、少し雷を受けたようだ。

 だが、そんなのを気にしている余裕は無い。


「〈レインスプラッシュ〉!」


 水の拡散魔法を発動し、飛びまわるキリをとらえようとするが、全てが避けられ、そしてキリはすぐにわたくしの目の前まで迫ってくる。


「〈雷剛拳〉!」

「〈ウォーターシールド〉!」


 わたくしが張った水の壁にキリの拳が当たる。当たると同時に横へと回避する。

 キリの事だからこの壁ぐらい突破できる事を知っているからこその回避だ。

 次の時にはキリが水の壁を突破し、更に次の拳を繰り出してくる。


 肉弾戦に持ち込まされれば完全にこちらが不利。当たり前の事を考えながらもわたくしはまたウィンディーネの手を掴んでその場からすぐに離れる。

 拳が空振りし、そしてキリはまたも手に〈雷球〉を発動して投げてくる。


「懐ががら空きですわ! 〈レインクラスター〉!」


 わたくしは投げた瞬間にキリの懐らへんに用意しておいた魔力を爆発させる。

 だが、先程のようにうまくいかず、予想していたキリはそこから消えており、次の瞬間には横から走り込んできている。

 わたくしは湖の中心へと移動すると、すぐさま魔法を発動した。


「〈ヴォルテックカラム〉!」


 湖のいたるところに渦潮が出来上がる。そして、その渦潮の中心から水柱が跳ね上がり、迫ってくるキリを襲い始める。


「邪魔だな」


 そう言ったキリは一度湖の外に出ると、その手に雷の玉を作り出す。


「何度やっても同じ事ですわ!」

「そうか?」


 キリは雷の玉を投げる。それは先ほどよりも遅い速度で飛んでくるので、わたくしは軽く避けてその手に魔力を集めて次の魔法を放とうとした瞬間。


「それは〈雷球〉じゃねぇぞ?」

「!?」


 キリがそう言った瞬間、突如としてその雷の玉が水平に広がった。もちろん、その中にわたくしも入っている。

 そして、広がったのは誰がどう見ても魔法陣。


「〈爆雷陣〉! おらよぉ!」


 キリが手を握った後、魔法陣に雷が生まれ、轟音が鳴り響いた。



「あ゛ぁぁぁああああああああああ!!!!」



 体中に雷が貫き、思ったように体が動かなくなる。

 それにより、発動していた〈ヴォルテックカラム〉が消される。

 その隙に、キリが跳躍して握った拳を作り、わたくしの体を押し倒しながら顔をめがけて――






 ――振り下ろされた。






 ザッパァァァンッ!!







 派手な音を立てて、水柱が上がる。


「レナ様!」


 風香の声が聞こえる。だが、それよりもわたくしは自分の身に何が起こったのか全くわからなかった。


 なぜなら、思いっきり振り下された拳による痛みがまったくと言っていいほど無かったのだ。

 そのかわり、全身が水に濡れて、制服が少々透ける。だが、それがどうでもいいとさえ思える事が起こっていた。



 なぜなら、目の前にキリの顔があったから……。



「なぜ……殴ってくれませんでしたの……?」

「そしたらよ。お前、絶対に気絶してたじゃんか。俺の本気の拳を受けてタダで済むと思ってんのか?」


 キリの拳は、わたくしの顔のすぐ横を殴っていた。若干クレーターができ、そこに湖の水が埋めるようにして入って行く。

 先程までうるさかった湖のほとりが、一瞬にして沈黙の空気の中へと放り出された。


 その中で、キリがゆっくりと口を開いた。


「ワリィけどよ。俺は掌の上で踊るのが一番嫌いなんだよ。だからよ、俺はお前が親の掌の上で踊っているだけの人形の部分が嫌いなんだよ」

「どういう……意味、ですの……?」


 わたくしの頭の中が混乱する。一体何を言われているのかさっぱりだったのだ。


「お前。しっかりと言ったのか? あのオヤジによ。言ったのか? 自分はこうやりたいってさ」

「そのぐらい、言ったってさっきも……」

「俺が言ってんのはそう言う意味じゃねぇンだよ。ちゃんと、あのオヤジの目の前で言ってみろよ」


 わたくしの口を言葉で塞いで、キリが続けた。






「自分の道は自分で決める。親が決めるもんじゃねぇ。自分の赴くままに決めさせてくれってさ」






 キリのその言葉を聞いて、わたくしはその瞳から涙が流れ始める。


「だから……それができたら……苦労は、しませんわ……」

「だからよ。お前、苦労って言葉で逃げてるだけじゃねぇか」

「そんなこと……ありませんわ……。親だって、カンマを諦めてわたくしに希望を抱いているのに、わたくしが自分勝手にそんなことを決められませんわ……」

「良いじゃねぇか。そんくらい」


 カンマが病で倒れ、自分しか跡取りができない。そんな親の希望すらも捨てろとキリは言うのか。


「仙ちゃんは……普段は優しいお父様、お母様を裏切れと言っているんですの……?」

「だったらなんで!! テメェは迷ってんだよ!!」


 キリの突然の怒鳴り声に、肩をビクッと揺らせる。涙が視界を揺らし、見にくくする。



「逃げンじゃねぇ! お前は親よりも怖ぇ奴と戦ってんだよ! 命を取ってくるような奴とジーダスで戦ってんだよ! いまさら親如きに逃げンのか!? 言ってみろ!! レナ・ルクセル!! お前はただの操り人形なのか!?」



 視界が揺れる。見えなくなる。キリの紫色の瞳が見えなくなる。


 どうして……いつもいつも、キリは真っ直ぐなのか、わからない。どうしてここまで強い意志を持てるのかがわからない。


 親の跡取りにはなりたくない。だから自分で決めさせてとは言うが、親の次の言葉は目ぼしい所があるのかと言う物だった。わたくしは言葉に詰まり、そして親が会社の跡取りになるよう言ってその場を立ち去る。

 そこで、風香が逃げ道を用意してくれ、わたくしはそれに乗ろうとしてしまった。


 だから……。


「仙ちゃん……。一度、殴って欲しいですわ……」

「馬鹿言え、自分でやれ。……と言いたいところだが、今回だけだ」


 キリがそう言うと、拳がわたくしの頬を殴る。

 少し弱めにやってくれたおかげか、戦闘中の拳よりは痛くは無かったが、それでも十分痛かった。


「もう一度……お父様に言ってみますわ」

「おぅ。そうしろ。なにせ俺とつるんでたんだからな。言い争いなんかに負けるかよ」


 キリのその強気な言葉に、わたくしは少々笑ってしまった。


「なッ。笑うなよ! おい!」

「ふふっ。すみませんわ。そうですわね。仙ちゃんとつるんでいたんですわ」


 そう言うと、わたくしはキリをどかしてその場に立つ。

 湖の端では、風香がこちらを向いている。その目は少し、敵意が含まれていた。


「こちらには、来ないのですか?」

「えぇ。どうやらこの学校の問題児が優等生のわたくしを地に堕としたようで」

「クハハッ。言いやがるなレナ」


 風香の手が握りこぶしを作って震えている。手に握るサーベルも壊れそうなほどに。


「ならば……殺すしかありません。〈ストーム〉!!」


 怒りの魔法。荒れ狂う風の魔法がわたくし達へと襲ってくる。


「仙ちゃん! 避けますわよ!」


 わたくしはすぐに避けるように脚を動かすが、キリが動く気配がなかった。


「何していますの!?」

「あ~。ワリィ、レナ。実はお前と戦ったときに体全体に雷纏ってただろ?」

「だからなんですの!? すぐに避けないと……あれは防げれませんわ!」

「だからよ」


 キリがなおも動こうとしないので、わたくしは近づ――。


「俺、魔力切れで今にも倒れそうなんだよ」


 ――こうとして、その場こけそうになった。


「はぁ!? なんでわたくしと戦って魔力切れなんか起こしていますの!?」

「いやぁ。だってお前、今の決闘ぐらいマジでやんねぇと示しにならねぇだろ?」

「の割には結構手を抜いていたとわたくしは思いますわ! って言い争ってる暇ないですの!!」


 いつの間にか風の渦が目の前まで迫っており、切り刻む魔法が到達する。

 わたくしはキリの体を押し倒すようにして飛び着き、背中に感じるはずであろう痛みに備えた。









「〈氷柱〉!!」



 背中に冷気を感じる。



「大丈夫ですか!? 二人とも!」


 そして、救世主の声が聞こえた。


「リクさん!」



 そう叫びながら振り向くと、そこに刀を持った一人の少女のような、少年が綺麗な白銀の髪を揺らして立っていた……。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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