魔力の色
視点戻ります。
夕食を食べ終わり、しばらくしてから家のチャイムが鳴った。
それはいつも魔法の練習に付き合ってくれている真陽が来たのだ。
「こんばんわ、真陽さん……とマナちゃん?」
扉を開けて真陽だけかと思いきや、その隣には赤髪のツインテールが見えたのだ。
「昼間に言ったでしょ~? なるべく助けるって~」
「あら、そんなこと言ってたの?」
そういえばそんなことを言っていたなと思いだしながら靴を履く。それにソウナも習う。
「ありがとうございます。準備も出来ていますし、行きましょう」
この時、ボク自身はなるべく男としていたいのでヒスティマには行かず、真陽が人気のない広場に結界を張って練習するのだ。
真陽の結界は余程の者でないかぎり見破る事は出来ない。
「あ、真陽ちゃん♪ これ♪」
行こうとしたときに、中から母さんが封筒を持って出てきた。
「そういえば出していたねぇ。ちゃんと届いてよかったよぉ」
「ふふん♪ 大丈夫よ♪ 桜花魔法学校の手紙は私に直接渡るようになっているわ♪」
「それはよかったぁ。これでゲスト全員の承諾も得たしぃ、今年も面白くなりそうだねぇ」
二人が何やら変な会話をしている。ゲスト……とは一体何のゲストなのだろうか?
「でも、返事が遅くなってごめんね?」
「いいよぅ。いろいろと忙しいだろうしねぇ」
「そう♪ 良かった♪」
満足したように「二人をよろしくね♪」といって玄関で手を振る母さん。
「行ってきます」「行ってくるわ」
「行ってらっしゃい♪」
母さんに見送られてボクとソウナは真陽とマナの後について行った。
歩いて数分。ついた場所は前にキリと来た場所である公園。
そういえばあの時、マナが来たのだが雰囲気が少し違ったような気がする。あの状態がマナが悪魔に操られていた時なのかな?
そう考えている間に真陽はもう結界を張り終え、来ている服がいつもの服に戻っている。先ほどまでは地球で違和感が無いようにTシャツにジーンズだった。
「それじゃあ、今日はリクの魔力操作向上を目当てとしてやるかねぇ」
「はい! お願いします!」
ボクは自分の魔力という物がまだあまり理解できていない。だから、まずは自分の中に居る神を全員、魔力ごと外に呼び出す。
「ルナ、シラ、ツキ」
三つの光が出て、それぞれが人の形を取る。
「うむ。戦闘をせず悠々とできるのはいつぶりかのぅ」
「う~ん。あたしは知らないけど、とりあえず、あたしが契約した時から無かったよね?」
「ふたりともなにをいっているのですか! りくも『忙しい』のです!」
出てきて開口一番のルナとツキの言葉に物凄く申し訳なくなってくる。
「ごめんね……ルナ、ツキ、シラ……」
「あやまる『必要』はありませんりく。このふたりがわがままなだけなんですから」
シラが慌ててフォローする。ボクはとても感謝するが宿題やら何やらがあり、あまり三人を外に出さなかった事を後悔する。
「……ディス、外に出ていていいわよ?」
「えっと、フィエロも……」
その様子を見て、ソウナとマナが急いで自分が契約している神の断片を外に出す。
光から出てきたのは一つの剣。そしてその剣がまた形を変え宝塚のような姿をした。それはソウナが契約しているディス。『進軍する者』、戦神である〝マルス〟だった。
もう一つの光は途中で金色の炎に変わり、中から両腕から赤い翼が生えた凛々しい女性の姿があらわになる。マナが契約しているフィエロ。大鵬金翅鳥などいろいろな異名を持つ神、〝ガルダ〟だ。
「僕はたまにソウナの部屋で出してもらってるから別に言わないよ」
「私は爓巫……マナ様に不満など一つもありません。安心してください」
笑みを浮かべるディスと丁寧に頭を下げるフィエロ。
あまり不満を言っていない二人に対し、ソウナとマナはホッと胸を撫でおろす。
「まぁ冗談じゃから気を取り直せ」
「あたしはもっとリクのご飯食べ――」
ツキがルナとシラに全力で口をふさがれた。「む~」と唸っているがルナが沈黙の魔法を使って喋れないようになってしまった。
「えっと、今ツキなんて言ったの?」
聞こえなかったボクは今何を言おうとしたのかが全く分からなかったが、それをルナとシラは頑として教えてはくれなかった。
「そろそろ、始めてもいいかぃ?」
あきれ顔でずっと待っていた真陽の言葉で、ボクは意識をそちらに戻す。
「すみません、真陽さん」
「まぁ、神使いにもいろいろあるらしいしねぇ。別に何とも思ってないから安心していいよぅ」
何とか許しをもらい、ボクは目を瞑り、自分の魔力に集中する。
魔力という物は色を持っていて、主に明るい色と暗い色で別れている。
暗い色は主に闇の属性を持つという特色があり、逆に明るい色は光の属性を持っている。
そして色がついているのは赤だったり青だったり……。つまり火の属性や水の属性だ。
その色がどれも属性を持っているからこそ――
――ボクは自分の魔力を見つけられないでいた。
「普段から魔法を使っていればおのずとわかってくるはずだよぉ」
真陽に言われてもボクは自分の魔力が良くわからなかった。
ルナがいる事で他の人よりも魔力は感じやすいとしても、わからないのだ。
ボクは苦い顔で一生懸命探していると、ソウナやマナがそれぞれ思い出すように言ってくる。
「リク君の魔力って言ったらやっぱり氷属性じゃないかしら?」
「でも、氷属性だったらそれはシラさんの属性だよね? 違うんじゃないかな~」
「じゃあ、マナさんは?」
ソウナが返すようにマナに訊き返す。
マナはしばらく悩んでいて、やっとの事で答えが出た。
「やっぱり、光属性じゃないかな~」
「それだと、ルナさんやツキさんの魔力よね?」
「あ、そっか~」
先ほど、自分が言った事をそのまま返されたため、マナはまた唸るように考えてしまった。
わからない……。自分の魔力をどれだけ探しても見つからない。
魔力を持っているのは自分でもわかる。
そして雑賀も言っていた。魔力が多すぎると。
それはボクの魔力がしっかりとあるからわかることなのだが……。
目を開けて、右手の掌が見えるように上に向ける。そして何の形もない魔力を右手に放出。
今は神の魔力を持っていないから自分の魔力だけが放出されるはず。
目を瞑って色を見れないならば外に放出してみればいい。そう思って放出したのだが……。
何も見えず、ただ視界が揺らいだようにしか見えなかった。
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