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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第六章 淵海曲
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爆発音



「何の音?」


 ガラスが割れるような音と、爆発音が聞こえたボク達は、その方向へと顔を向けるがここは第二闘技場なので見えるはずが無い。

 そう思って、ギンから魔石を貰うのも忘れてボク達は観客席の一番高い場所まで向かう。

 高いところまで行くと、爆発音がした方へと視線を向ける。

 だが日が落ちて、視界が悪い場所では残念ながら見る事が出来なかった。



 ――そう。何も見えなかった。



「あ……あれ? 結界は?」


 マナが動揺して学校の敷地を囲むようにして張られてある結界を探す。

 今回、魔石争奪戦で真陽が張った特殊な結界は一定時間ごとに光が上へと昇るようにして淡く光っていた。

 なのに、今現在は一定時間ごとに光るはずの結界が見えない。


「つまり、先ほどの爆発音とガラスが割れるような音は……」

「敷地内を囲むようにして張られていた結界を誰かが爆破させて壊したってこと……?」


 ソウナとアキが確信を得るようにして呟く。

 そうすると、ボク達に並ぶようにして立っていたギンのパネルが突如音を鳴らして振動する。


「はい。【写し身の鏡】蘭童ギンです」


 ギンがその通信に答えると、すぐにパネルの向こうから荒上げた声が聞こえた。


『魔石争奪戦は中止だ! 卒業生は在校生を守るようにして校舎へ連れてこい!』

「は? 何を言っている? その声、雄二か? 一体何がどうなっている?」


 何やら相手、雄二は焦っているようで、言われているギンとボク達にはさっぱりの話だった。


『第二闘技場に居るってことは外が見えるな!? 結界を壊された事はわかるな!?』

「ああ。今観客席の方から外を見てみたが結界が見えない」

『敵襲だ! 敵襲! 魔法生物が数をなして襲って来たんだ!』

「何!? 魔法生物だと!?」


 魔法生物とは良くわからないが、何かよくない事が起こっている事がわかった。


『魔石を奪っての転送ができない以上、在校生を全身全霊をもって守って校舎へ連れてこい! 魔法生物は英名とロピアルズで最初対処し、それから卒業生でチーム編成してから出張って倒すとのことだ! わかったな!』

「チッ。楽しみしていた行事を壊しやがって……了解! すぐに向かわせる!」


 ピッとパネルを操作して通信を切るギン。その額には冷や汗が浮かんでいる。


「今のを聞いていたね? すぐに校舎に移動するから着いてきてくれ」


 ギンがそう言うと、真剣な面持ちでボク達は頷く。その直後。

 ポケットが振動する。そこには携帯を入れておいたので誰かからの連絡という事がわかった。取り出して画面を見ると、そこには篠桜真陽と書かれていた。


「真陽さん! 一体どうなっているんですか?」


 ボクは携帯に出ると、すぐに質問をする。


『すまない。結界はそれなりに強くしていたんだけどね。魔法生物も君達が気づかない内にある程度対処はしていた。だけど私達が見つけていなかった幾つもがあったらしくてね』


 どうやら真陽もこれは一大事として受け取っているらしい。いつものような伸ばす口調では無く、真剣そのものだ。


「……ボク達は、何をすればいいんですか?」

『今からすぐに校舎に来てくれ……と言いたいところだがそうも言っていられない。神様を使ってリクとマナとソウナは魔法生物を各個撃破してくれないか?』


 真陽にそう言われ、ボクは頷きながら「わかりました」と答える。


『すまないね。少しでも戦力が欲しいんだ』

「いえ。わかりきっていた事ですから」

ボクはそう答え、携帯をポケットにしまう。

「電話は終わったかい? それじゃあ、校舎に……」

「いえ」


 向かおうか。というギンの言葉を遮ってボクは答える。


「ボクとマナちゃんとソウナさんは魔法生物を倒しに行きます」

「なッ!? 君達個々の力じゃ魔法生物に適うはずが無いだろう!? 俺ら卒業生もチームを組むんだ!」


 驚くギンにボクは静かに言いのける。


「それでは遅いんです。それに、ボク達は本気を出していない」

「……誰の電話だい? 今のは」

「真陽さんです」


 ボクは答える。するとギンは腕を組むようにして悩み始める。

 そして、何かを決めたのか、顔をあげると、その手に鏡を顕現させた。


「真陽先生の命令でも、俺はまだ納得できない。君が一人で俺に勝てたら信じよう」


 ギンはそう言うと、また観客席から闘技場へと飛び下りる。

 ボクもそれにならって飛び下りて、ギンと正反対の場所にある島へと立つ。


「ルナ、シラ、ツキ」


 ボクは神三体を全て神具として纏う。


「時間がありません。一撃で仕留めます」

「それが通るならば! 〈シールドミラー〉!」


 先手必勝と、ギンが先ほどとは比にならないほどの数の反射魔法を発動する。

 ボクは無言でルナだけを鞘から引き抜き、魔力を通す。


『いつでも良いぞ。あんな反射魔法。いくらでも斬ってくれようぞ』

「よろしくね、ルナ。行きます! 〈アイスフロア〉!」


 ボクはまず敷き詰められている水を一瞬で全て凍らせる。

 それに少し動揺したギンに、ボクは思いっきりその場から身を低くして跳躍する。

 身体強化魔法を極限まであげたその跳躍は、立っていた島を一撃で破壊した。


「早い!? でも、この鏡の通路を越えられるはずが――」

「ハッ!」


 ギンがそう言うと同時、ボクはルナを振るって鏡を斬り裂いた。




「!?」



 ブォンッ!




 ギンまでの道のりにあった数個の鏡を全て斬り裂いたボクは、ギンが気がついた時にはすでに首筋に刀を押し当てて寸止めをしていた。


「すみません。ボクとしても、今回の襲撃。心当たりがありますので、のんびりしていられないんです」


 そう言われたギンは垂らした汗を拭きとらずに後ろに尻もちをつく。


「き、君は……一体……」


 呆けたギンを置いて、ボクは顔をマナとソウナへと向けた。

 するとマナは右手の親指を立てて、フィエロを鷲の姿で呼んでその上へと乗った。


「ウチは空から魔法生物を狙うね!」


 そう言ってマナは空へと昇って行き、先に魔法生物を倒しに飛んでいった。


「それじゃあ私も行こうかしら。〈セイントウルフ〉」


 ソウナはディスを呼んで、それから魔法を唱えたかと思うと、突如として綺麗な灰色の毛並みをした狼が魔法陣から出現した。人一人乗せれそうなその狼にソウナが頭をなでると嬉しそうに喉を鳴らした。

 確か、〝マルス〟の聖獣が狼だと聞いた事がある。あの狼がそうなのだろう。

 狼にまたがり、この場から去るソウナ。これで校舎に向かわない人で残されたのはボク一人。


「ギンさん。他の人達を校舎に連れて行くの。お願いします」

「わ、わかった」


 ギンの肯定を聞くとともに、ボクは凍った水の上を走って行った。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



(始まったか)


 突如騒がしくなる視聴覚室。

 【黒き舞姫(ブラックダンサー)】が慌てて通信をして魔法生物の処遇を伝えている。隣に居る【自由な白銀(フリーダムシルバー)】は何もせずにモニターを見ていた。

 何もしないで大人しくしているのは俺としてはとても都合がいいので俺は所定の位置まで移動する。

 先に潜入していた仲間はすでに聖地様を捕まえる、もしくは殺すべく移動しているようだ。

 俺も自分の仕事をしなければいけない。


「静かに! 私が今から説明するから全員静かにしな!」

黒き舞姫(ブラックダンサー)】の大声により、今まで騒がしかった視聴覚室が大人しくなり始める。


 来賓出来ている人達は生徒よりも早く落ち着く事が出来た。


「今、私とロピアルズ統括者であるカナと共に作った結界が破られた。何が目的かはわからないが、私やカナ、そして第一闘技場に居るルーガ。ライコウでは最強を名乗る数少ない英名の内が此処に三人居る。それだけでなく、ここにロピアルズ統括者もいる。だから安心してほしい」


 落ち着けるようにそう言うが、残念ながら、もうここに居るんだよな。敵はよぉ。


「〈浸透真・円陣〉」


 魔法を発動し、視聴覚室を全て覆い尽くす。それに気がついた来賓がこちらを向くがもう遅い。

 俺はにやつかせた口元を元に戻す事が出来なかった。


「ふ、ふはははははは!! おせぇ! 何もかもが遅いんだよ!!」


 どうせ俺の声は届いていない。なぜなら俺と視聴覚室内とでは宇宙ぐらい距離が長いのだ。声が届くわけがない。

 姿は見えても、距離は全く違う場所に立っている。これで中に居る奴等は全員無力化されたと言われても過言ではない。

 中に居る【黒き舞姫(ブラックダンサー)】が何か叫んでいるような気がするが聞こえない。通信機を使おうとしているのだろうが、そんな物が俺が作った空間内で使えるはずが無い。

 侵入して無力化するだけの難易度が低い仕事を掴まされるなんて、信用がガタ落ちした証拠か。

 俺は【黒き舞姫(ブラックダンサー)】が叫ぶような景色を見ながら、視聴覚室の出入り口の扉の前に陣取って寝る事にした。もちろん、視聴覚室の出入り口の前も、距離はとても長くしてある。

 つまらない仕事だとぼやきながら、俺は眠りについた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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