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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第五章 魔石争奪戦
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陰で動く者

視点、真陽から竜田へと変わります。



『またあったわよ? 黒いカバン♪』


 カナが正門の黒いカバンを見つけてからという物。次々と結界の外に黒いカバンが見つかって行った。

 カナはそれらを順に中に入っている悪魔を退治していく中で、一向に黒いカバンが無くなるためしがない。

 一体あのカバンは誰が用意したのか。まったくわからないままだった。

 そして、しばらくすると、カナは正門から真反対の深い森の方にまで行っていた。


『こんなところかしら? この付近にはもうない?』

「無いねぇ。一旦戻ってきたらどうだぃ?」

『りょうか~い♪』


 カナがのんきに言いながらここへとテレポートしてきた。


「ふぅ♪ お仕事完了♪」

「お疲れ様ぁ」


 軽くカナをねぎらっておき、私はまたモニターを操作して画面を凝視する。また黒いカバンがあるかもしれないのだ。


「あぁ! リクちゃんがルーちゃんと戦う姿見れなかった!」

「さっきまで戦ってたねぇ。やっぱり、リクちゃんにはまだルーちゃんは早すぎるかぁ……って神様使っちゃいけないんだったねぇ」


 それじゃあしょうがない。とは言っても神様を使ったところでルーガに勝てるとも思えないが。


(英名にはまだ足元にも及ばないかぁ。毎夜稽古してるとはいえ、まだ約三ヶ月だしねぇ)


 そう納得しながらも私はモニターで黒いカバンを探す。

 一応魔石争奪戦の戦況も見ているから大丈夫だが。


「ねぇねぇ、真陽ちゃん♪ あの黒いカバンなんだけど……あれ、悪魔の力を借りてた魔法生物だったの♪」

「魔法生物ぅ? 一体何のためにぃ?」


 魔法生物というのは魔法を使って作られた生き物だ。普通の生物とは違い、異形の姿をしている。例えば耳が無かったり目が無かったり……。

 だけど魔法生物を作り出すためには一体一体魔力を譲渡しなければいけないから、魔法生物を作り出している間は自分の魔力の上限が譲渡した分低くなる。その魔法生物を悪魔と同じぐらいの魔力を持たせて何十以上もあったカバンの中に入れていたとしたら……使った本人は相当の魔力の持ち主だ。


「この学校にでも戦争したかったのかぃ?」

「さぁ? でも断言する事があるわ♪」

「断言することぉ?」


 カナが自信満々にしながら私に言ってきた。






「今回の件♪ 私は何もしないわ♪」






「な――ッ!?」


 何もしない!? 悪魔が関わっているのに!?

 一体カナは何を考えてそんなことを言うのだろうか。私にはまったく理解できなくて頭の中身が混乱する。


「ふふ♪ 魔石争奪戦が途中で終わっちゃうのは残念だけど、しょうがないわね♪」

「な……な……何を言ってるの!? 悪魔だよ!? わかってんの!?」


 小声だが、カナにそう怒る。だけどカナは笑顔を絶やさないままでこう言った。


「逆よ♪ 私には何も出来そうもないから何もしないのよ♪」

「何も……できない?」

「これは真陽ちゃんの事も言えるわ♪」


 私もだって?

 カナはそれから、モニターを見るだけで、どうして何もできないのかを教えてはくれなかった。

 事件はそれから六時間後。午後九時過ぎに起こったのだった……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 プルルル。プルルル。ピッ。


「何かあったのか?」

『予定通り、【自由な白銀(フリーダムシルバー)】が正門にある魔法生物を殺し始めた。お前は中に居る奴に指示しろ』


 中に居る奴といわれて、あいつかと思いだす。確かあいつは四六時中仕事をしていたようだ。おかげで今日、目標に会う事が出来たらしい。


「ンじゃあ指示を出せばいいんだな?」

『そうだ。そしてお前はもう中に居ろ。髪でインカムを隠せ。魔具を使っていたら気づかれる。【自由な白銀(フリーダムシルバー)】は簡単に見抜く』


 そんなに危険なのか……。聖地様の親だって聞くが、それほどまでに強いそいつを無力化しろだなんて上の方も無茶を言う物だ。

 宇宙以上の距離が必要なのも納得できた。


「それじゃあ電話を切るぞ?」

『わかった。後はマイクから指示をする』


 そう言って、電話を切る。

 それからインカムを装着すると、トントンと二回指先で叩く。


「聞こえるか?」

『問題無い。始めろ』

「了解」


 インカムに何の問題も無い事を確認すると、俺はヘッドホンを付ける。

 ヘッドホンが繋がっている線は胸ポケットにつながっており、そこには音楽プレイヤーが入っている。

 つまり音楽を聞いているかのように見せるだけだ。

 インカムのマイクは襟につけられているので普通に話せる。


「それじゃあ、やりますか!」


 そう言って、俺は今いるこの場所と桜花魔法学校にある視聴覚室の距離を無くして誰も見ていない時に移動した。

 途中にある結界は気づかれないように仲間が小さな穴を開け、視聴覚室の窓はすでに中に居る仲間が開けた。

 障害物が無いために俺は距離を帰る事が出来た。


 そうやって、視聴覚室に侵入すると一人の女が俺の隣へと自然に近寄ってきた。


「例の作戦を?」


 小声でそう聞いてきた。俺は一瞬でこの女が中に潜入していた仲間だと言う事を知る。そうとわかれば俺も奴に指示された事を教える。


「あぁ。そうだ。やれとの御指示だ。【自由な白銀(フリーダムシルバー)】と【黒き舞姫(ブラックダンサー)】が外のあれに注意が引き付けられている間になるべくたくさん置け」

「わかりました」


 そう言うと、その女の行き先の距離を無くしてその場から消した。

 【黒き舞姫(ブラックダンサー)】の方へと目を向けるとモニターを凝視して何やらブツブツ言っていた。おそらく外に居る【自由な白銀(フリーダムシルバー)】と話しているのだろう。テレパシーか何かで。

あの様子を見る限り俺が侵入した事に気づいていないようだ。ここまでは作戦通りか。

 にしても、どうしてわざわざ学校に侵入しなくてはいけないのかと思う。下っ端で、そして失敗続きの俺に信用が無いのも分かるが、こんな事をした所でどうしようかというのか。


(まぁこんな所を攻める理由なんて、聖地様以外に無いと思うがな)


 そう、聖地様以外に目的が無い。あるとすれば、天使を堕とすぐらいか。

 堕天使になればそれこそこちらの思うつぼだ。聖地様を堕とすならば堕天使を使った方が楽だからだ。


(さて。暇になった俺はしばらくモニターでも見ているか)


 指示も来ないので、俺は大モニターに映されている聖地様を見る事にした。

 俺を三度も倒したあの聖地様。だけど、三度目に倒した時のような強さをまったく感じない。俺とツーマンセルで動いているあいつは何か知っていたようだが教えてはくれなかった。


(ったく。なんだよあいつは。知らないのは俺だけか? 最終的な目的も教えてくれない)


 そう思いながら聖地様を見ていると、なにやら楽しそうにしながら歩いていた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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