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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第一章 何気ない日常
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一週間後……



 校長室を出ると、ソウナとマナが待っていてくれたので、ボクは二人と一緒に下校した。

 空の日が落ち始めて、行きかう人々もそれぞれが自分の家へと向かっている。

 特定の人は武器を腰から下げていたりするが……その人達はたぶんネイチャーなどの武器を顕現しない人だろうと思われる。

 地球で町行く人が武器なんて持っていたら驚きものだが、ここはヒスティマで、異世界だ。これが普通だし魔法なんてもっと当たり前の世界だ。


「それにしても……リク君、良かったの?」

「え? 何がですか?」


 ソウナが訊いてきたことは真陽から言われた神の力の使用を禁止する事だった。


「リク君、神を使わずして魔法を使った事って無いんでしょう? リク君だけでも神の力を押さえて使うことは許されるようにすればよかったのに……」

「いえ、それだと不公平ですから」


 自分だけ強力な力を使うのはフェアじゃないと思われる。

 そしてこれは学校行事なのだ。実力を隠す事になるとは思われるが、他の人をわざわざ危険にさらすのはよくない。


「まぁ、リク君がそれでいいならいいのだけど……」

「これから練習するの~?」

「それしかないと思いますけど……。当日ぐらいには何とかしたいと思います」


 ボクがそう言うと、マナが顎に人差し指を当てた。






「でも、ウチの記憶が確かだと、魔石争奪戦の日取りって……。たしか一週間じゃなかったっけ~?」





 ピタッと脚が止まる。ソウナとマナがボクのその反応に気づいて脚を止める。

 一週間……その言葉がボクの頭の中に響き渡った。


「な、七日! まだ七日もあります! その間に何とか……」


 出来るだろうか……?


「ウチは魔力コントロールをするのにせいぜい二ヶ月はかかったけど……。まぁ学校でしかやらなかったからなんだけど~」

「私はお父さんにつきっきりで教わったのだけど……それでも一ヶ月はかかったわ」


 二人の言葉がボクの心に突き刺さる。

 これは……今から本気で教わなければいけないのかもしれない……。寝る間も惜しんで……。


「ま、まぁ頑張って~。ウチに何か出来る事があったら言ってね~?」

「わ、私もなるべく協力してあげるわ」

「ありがとうございます……」


 ボクは二人に礼を言って、そしてマナとはそこで別れた。

 前に見えるのはゲート。歪んだ空間の様に見える。

 ボクとソウナは毎日ここを通って地球からここヒスティマに来るのだ。そうしなければここに来ることはできない。

 あと、このゲートはいつでも開いている。魔力の無い者や魔力が覚醒していない人はこれが見えないという。ボクも、ソウナと会った時はこれの事を知らなかった。今では何の不安も無く(くぐ)っているが、最初のころは少々不安がったものだ。

 なにせ向こうの景色が見えないのだから。


 ボクとソウナはそのゲートをくぐり、それから地球へと帰った。

 出た場所は人があまり通らない裏路地。道幅も狭いから人一人分しか入る事が出来ない場所だ。そんな場所にゲートがある。

 初めは不良とかの心配もしたのだが、そこは魔法で寄りつかないようになっているらしい。主に魔力を持っていない人を。

 他の場所にもゲートが複数存在するというが、その場所は知らない。あるとこは学校の裏山にあるというが、はたしてどうなのだろうか……。

 ちなみに、この世界で目に突くような魔法を使おうものならロピアルズというライコウ最大企業のロピアルズ警察会が捕まえに来る。

 すべてのロピアルズをまとめる統治者がボクの母のため――未だに信じがたい事だが――ロピアルズにはボクの知人が多数いる。

 歩いて行く中で、ボクは自分の家の前についた。

 自分の家のドアを開けて、挨拶をする。


「ただいま~」

「お帰り~お兄ちゃん♪」


 ドタドタと台所から走りだしてきてそのままボクにダイビングしてくる少女。騒がしい事この上ないこの少女がボクの妹、赤砂ユウ。

 あの母にしてこの妹という言葉がしっくりくるようなのがボクの妹だ。

 ユウは天真爛漫で素直な性格だ。嘘をつけないと言えばいいだろうか?

 ユウの嘘ならほぼ絶対見抜ける自信がある。白銀の髪は肩ぐらいまで伸びており、その髪は光に照らされると少々薄赤く染まる。ボクは光に照らされると薄青く染まるから正反対だ。

 そして妹であるユウはボクよりもヒスティマ歴が長い。産まれたころから魔法を知っていて、そして神と契約しているのだ。何の神かは知らないけど、ルナ曰く高等の神らしい。

 炎の神で神の断片の名前はエングス。武器として顕現すれば大剣になる。ユウはそれを軽々と振りまわす。神具なので使用者は重さをあまり感じないのだ。

 しかもユウはロピアルズ警察会に入っている。二つ名はヒスティマで恐れられている【朱】。『朱の魔神』といわれる事が良くあるが本人はあまり気に入っていないようだ。まぁ可愛さの欠片もないからだと思われるが……。


「ただいまユウちゃん」

「あ、ソウナさんもお帰り~♪」


 帰りの挨拶を終え、ボクはどうしてユウが先に帰っているのかを聞いてみた。


「ユウ、今日は早いんだ。仕事はどうしたの?」

「あ、あのね……。き、今日は仕事あまり入っていないから早く帰ってこれたんだよ♪」


 歯切れが悪い。絶対に嘘だ。

 そう思っていると廊下の奥から声がした。


「嘘を吐くな。本当は後の事を同業者に任せて遊ぶために帰ったんだろう?」

「あぁ!? カレンちゃん酷い!?」


 なぜか中に居たチャーム付きベレー帽を深く被っている少女。

 名前は劉璃(りゅうり)華蓮(かれん)

 顔を見せるのが恥ずかしいらしく、何かしらで顔を少しでも隠していないと堂々と喋れないようなそんな性格だ。かつてジーダス攻略戦でユウが戦ったのだが、その時彼女は幹部長という座にいた。

 ロストの使い手であり、本来一つしか呼び出せないはずの自分の武器を何十何百と呼び出してそれを自由に操って戦う飛翔剣の使い手だ。

 今はロピアルズ警察会で監視という状況でユウにつきっきりで働かされている。特別な仕事以外は、大体赤砂学園にユウと一緒に通っている。それは今着ているその服でわかった。その服は赤砂学園の制服だったのだ。


「えっと、どうしてカレンがここに?」

「ユウが遊びたかったから家に招いたんだよ♪」

「普段から遊んでるじゃないか……。主に学校で」


 仕事をしなさい。真っ先にボクはこの言葉が思い浮かんだ。

 まぁこれが母さんだったらさらに酷いんだけど……。ロピアルズ最高責任者がいつも遊んで――。


「あら♪ 二人とも帰ったの? だったら着替えて――」

「どうしているんですか!? 母さん!?」


 廊下の先から覗いてきたのはボクの母である赤砂カナ。

 ボクよりも小さい身長にウェーブのかかった白銀の髪。どこからどう見ても小学生高学年とぎりぎり言えるかどうかぐらいの容姿だ。

 ヒスティマでは英名と呼ばれ恐れられるほどの力の持ち主の呼び方があるのだが、まさに母さんがそのうちの一人だ。都市伝説程度にしか知らされていないが、【自由な白銀(フリーダムシルバー)】の二つ名を持っていてさらに英名の中でも一、二位を争う実力の持ち主らしい。

 そして二つ名からわかるように……ボクの母さんは『遊び』という物をこよなく愛する。仕事を放棄するほど……。

 どんな時でも思い立ったが吉日とでも言うように雪山に突然連れていかれるわ、朝起きたらどこか変な森の中に居たりするわ……とりあえず、それに巻き込まれる人達はとっても災難だと思われる。ちなみにボクとユウは絶対に入っているのでそこのところは諦めた。だから行動されせる前に何とか対処するテクニックが必要になってきた。


「リクちゃん……。母さんに家にいちゃだめだっていうの?」


 うるうると瞳をうるわせながら言う母さんにボクは問答無用で言い返した。


「仕事終わったんですか!?」

「まだよ♪」

「自信持って言わないでくださいよ!!」


 「ふふん♪」とでも言うように腰に手を当てて笑う母さんにボクは思いっきりツッコム。

 どうせまた自分専属で働いているルーガに仕事をまかせっきりで出てきたのだろう。

 どうしていつもこの人は……。



「仕方ないじゃない♪ Ⅱでは私まったく出て無かったのよ!!」

「すみません。何を言っているのかさっぱり分からないです」


 何やら誰もいない方に叫んでいるのだが、これはどうしたらいいのだろうか?

 ボクが取った対処法は完全に考える事を放棄することだった。

 それが一番最善で一番簡単な作業でそして一番母さんの変な事に関わらない事だった。


カナ「だから出しなさいよね♪」


いや、カナさんだけひいきする訳には……。しかもカナさん、仕事やりなさいよ!


カナ「え~」


本気で嫌そうな顔をしない!!



誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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