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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第四章 姫様の一日
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嘘の代償

視点、リクに戻りますよ!


「う……ん……」


 暗かった視界が開き、朝の日。では無く電球の光が目に入ってくる。

 電球があると言うことはボクはどこかの家にいると言うことだ。

 そこでボクは辺りを見回す。するとそこにはキリ、レナ、アキと……そ、ソウナさん?


「あら、おはようリク君。今が何時かわかってる? お寝坊さん」

「え?」


 ボクはソウナに言われて、時計を探す。といっても、自分が知らない部屋だから探すのに苦労するかと思ったら案外と速く見つかった。


「あれ? 八時……?」


 ボクは深夜に意識を一度失っている事は覚えている。

 それから記憶が無い。ということは……。


「も、もしかしてボク。今日一日寝てました……?」

「「「「いいや(え)。チートだった(わ)」」」」


 何故だろう。みんなの返答がわからないのはボクだけだろうか。

 ボクは無意識の内に動いていたということなのだろうか。


「えっと……説明は……」


 訳がわからず、ボクは説明を求めると、キリが答えてくれた。


「あぁ。なんつぅか、名前がいえねぇ奴がお前の体を動かしてたんだよ」


 体を動かしていたと言われても、ボクは全く意識が無かったためによくわからなかった。


「お前、誰か心当たりねぇか? まるでリクの事を我が子のように守ろうとしてる女だ」


 我が子のようにしてボクを守ってくれる女の人。キリにそう言われてボクは夢の事を思い出す。

 夢に出てくるあの女性だ。ボクが疲れて寝た時に、あの女性が出て来て優しく抱きとめてくれたのだ。その時の腕の中はとても温かく、心地が良かった。

 それ以外で何か知っていると聞かれると何も思いだす事が出来ない。


「たぶん。夢に出てきた……」

「なるほどな。お前の夢に出てきた奴があの姫様だったってわけか……」

「姫様?」


 確かにキリがそう言ったので、ボクはつい聞き返してしまう。


「ああ。名前が言えないらしいんで、よく呼ばれていた姫様で通したんだよ」

「そうですか……」


 ということは彼女はどこかの王族だったということだろうか。

 あの神々しい雰囲気はそのためなのだろうかは定かではないが、ボクはキリの言葉に納得していた。


「リク君」


 ソウナにそう呼ばれて、ボクは小首を傾げた。

 すると、ソウナは目を細めてボクを見る。緊張でボクは手汗をかく。

 一体何を言われるのかと思いながら、ボクはソウナの言葉を待った。


「リク君。私言ったわよね? 一緒に行くって。どうして睡眠魔法なんて使ったの?」

「そ、それは……ソウナさんを巻き込みたくは……」


 なかった。そう言いたくても言葉が途中で詰まってしまった。

 ソウナが一緒に居てくれれば確かに心強いかもしれないが、今回は相手がどれだけ大きいかわからなかったし、もし負けたらソウナにまで被害が出る。

 ボクは自分の所為でソウナが傷ついて欲しくなかったのだ。


「リク君。今度やったら私、怒るから。もう二度と、私を置いて先に行かないで。リク君がお父さんを救ってくれたことはとても感謝しているわ。だからこそ、私はリク君の役に立ちたいの」

「でも……」

「でもじゃないわ。今度置いて行ったら、承知しないわ」


 ソウナが強く言い放つ。ボクはただソウナを巻き込みたくは無かった。だけどそう考えてから、キリの言葉を思い出していた。



 ――なんでもっと……俺達を頼らねぇンだよ。



 正直、キリがそう言ってくれたときにボクは心にくるものがあった。

 とても嬉しかった。そして、ボクがこれまでした事は余計な気遣いだったという事に気づかされた。


「わかりました……。次からは、必ずソウナさんも連れて行きます」

「約束ね」


 ソウナが右手で小指を出す。ボクも、少し恥ずかしかったが右手の小指を出すと、ソウナが小指をからませた。


「嘘ついたら、リク君の女性用ファッションショーね?」

「わ、わかりました」


 次からは絶対にソウナを連れて行こうと心に決めた。嘘をついた時のリスクが大きすぎた。


「そういえば、アキさん……」


 どうして彼女がここに居るのだろう。彼女はこちら側とは何の関係も無いはず……そう考えている所に彼女自信から答えが返ってきた。


「いやぁ。私自身も、なんだか守護十二剣士って言うの? そう言うのに巻き込まれちゃっててさぁ。それで、そっち系の情報が何か手に入ったらリクちゃん達にすぐに知らせるから、よろしくね!」


 そう言われてみれば、彼女は守護十二剣士に会っていると聞いた。なるほど、辻褄が合う。

 情報をくれると言うことは、彼女はこれからいろいろと調べてくれるということだろう。情報が入ると言うことはとても嬉しい事だった。


「それより、ここはどこなんですか」


 今の今まで訊くタイミングを逃していたが、ボクはとうとうこの質問を出す事が出来た。

 すると、今まで気持に余裕があったキリが突如、動揺し始めた。


「こ、ここか? ここは……レナの別宅だ別宅!」

「へ? ここはせんむぐ!」


 レナが何か言おうとしていたのだが、突然キリがレナの口元を押さえてたために何を言っていたのかわからなかった。

 そして、キリが何かレナに耳打ちをしている。その様子を見て、ソウナとアキがくすくすと笑っていた。

 何が起こっているのかさっぱりわからないが、ボクはその件に関しては保留しておく事とした。キリが言った、レナの別宅というのが本当かどうかわからないために。

 そうしていると、キッチンの方から出てきたらしき弦が食べ物の乗ってる皿を持ってこの部屋に入ってきた。


「ほら、夕食持ってきたぞ。キリがそんなにいらないってんでたくさんは作ってないが……」


 そう言って、持ってきたのはお茶碗一杯分とシャケのホイル焼きだった。


「しかし、これだけでいいのか?」


 弦がそう聞くと、げんなりとしながらキリが肯定した。

 そういえば、ボクもなんだかお腹があまり空いていないように感じる。何か食べたのだろうか。舌が何かとっても甘いような気がする。


「それじゃあ、さっそく……いただっきまーす!」

「「「いただきます」」」


 アキが勢いよく挨拶をしたのでボク達もそれにのった。

 舌が甘いためか、シャケのホイル焼きがなぜか、ちょっとだけしょっぱい気もしたが、今はそのしょっぱさが欲しいとさえ思ってしまった。


 なにはともあれ、キリやレナが無事な所から、ボクが気絶したあの夜は勝って、守る事が出来たようだ。

 そう思いながらボクはホッと安心したように息を漏らすと……唐突に思いだした。


「あ、あの……魔石争奪戦って……」

「ん? 魔石争奪戦? 今日入れずに四日後だな」



 四日後……四日後……。



 ……あと三日で空白魔法を覚えろと?



 今現在。ボクは崖っぷちに立たされている事に今頃気がついた……。


次からは次章に入るとおもいま~す。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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