スイーツ×スイーツ
「ここが……すいーつばいきんぐ、というお店ですか?」
「はい。ここがライコウ一のスイーツバイキング店。『スイーツ×スイーツ』だよ。……なんかなれないよ。この言葉使い……」
「アキさん。あまり変わっていないと思いますわ」
「ホントに? 良かったぁ」
アキがホッと息をつく。
そのアキの様子や、仕草を見ていると、特に気になるところは無い普通の男子生徒だった。
アキが常日頃から女らしさよりも事件を追及していたためか、男になってもあまり違和感を感じなかった。
店は『スイーツ×スイーツ』と、可愛らしく文字が飾っており、それでいてライコウで一番大きい道にあった。
そして、休日になると行列ができるだろう店の前には看板が置いてあった。その看板にも一番上に『スイーツ×スイーツ』と書いてあり、下には新商品らしきデザートが写真付きで載っていた。
「ちなみに、この写真はわた……僕が取った物だよ」
アキが得意げに話す。
「いつまで店の前で話してんだ? さっさと入るぞ?」
キリが先導して先に入り、わたくし達はその後を追うようにして入って行った。
すると、片手に名簿を持つウェイトレスが礼をしながら出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。何名様で御座いますか?」
「あ、予約した者です! 名前はアキで予約されてると思います」
「アキ様ですね」
アキの名前を確認すると、手に持っている名簿の紙をめくり始める。
そして、アキの名前を確認する。
「アキ様。人数は七名。よろしいですね?」
「はい。そうです」
「わかりました。こちらへどうぞ」
いつの間にか予約していたアキに感謝しつつ、わたくし達はウェイトレスに案内されて奥の方にある席へと通された。
「結構良い席じゃない」
ソウナが席の場所に満足する。なぜなら、ここからスイーツがある場所まで近いし、窓からは外の風景が見える。といっても見えるのは街並みだが。
「あ、ウチ飲み物持ってくるね~。何にする~?」
「ンじゃあコーラ」「わた……僕は紅茶で」「私はレモンティー」「わたくしはアップルティーがあれば……」「……コーヒー」「私はマナさんのお任せで」
「……ば、ばらばら……。まぁいいか~。行ってくるね~」
マナが席を立って飲み物を取りに行く。
その間にわたくし達がマナの分もスイーツを持ちに行く。
「こんなにたくさん……。全部食べてしまってもいいのでしょうか?」
「全部食べれるなら、ですわ。いくらでも食べて良いんですわ。それがバイキングなのですの」
実際には払った分の元を取ると言う事でたくさん食べると思われるが、何も知らない姫様にはこの説明が丁度いいだろう。
「ここに置いてある皿に取って行くんですわ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
説明すると、姫様は目を光らせて隅にある定番のイチゴケーキからレアチーズケーキなど、次々と手に持っている皿に乗せていった。
わたくしも自分が好きなスイーツであるプチケーキを四種類、それぞれ二つほど皿に乗せて、もう一つの皿を取り、マナ用にと、適当に乗せて一度席に戻った。
姫様は皿に乗せれるだけ乗せているようだ。
席に戻ると、そこにはキリが先に一人で座っていた。キリはスマホを弄りながら目の前にあるモンブランを少しずつ食べていた。
あまりスイーツを食べないキリにとってはただの暇つぶしだろう。そのキリが、わたくしが近づいてきた事に気がついたようだ。
「ん? 速かったな、レナ」
「わたくしがたくさん食べれない事ぐらい、仙ちゃんはわかってますわよね?」
「まぁな」
キリが席を立つ。わたくしは皿を置いてから、キリの座っていた席の奥に入る。
「それより仙ちゃん。モンブランだけで良いんですの?」
「別にいいだろ? 俺以外の奴が俺の分まで元取ってくれるだろ?」
御尤もだ。
今現在いる人でスイーツをたくさん食べるのはアキと白夜。ソウナとマナと姫様は今日初めてなのでわからないが、姫様はあの様子だとたくさん食べる方だろう。
「はい、お待たせ~。キリはコーラ。レナさんはアップルティーでよかったよね~?」
「はい。ありがとうございますわ」
戻ってきたマナからアップルティーを受け取る。そして一口飲む。
キリもコーラを受け取って三分の一ぐらい飲む。
「あ、マナさんはこれでよろしかったですの?」
「うん。ありがと~」
マナも席に座ると、フォークと持ってチョコケーキを食べていく。
「す、すげぇ食べっぷりだな……」
「え~? そう~? みんな一緒だと思うよ~?」
いつの間にかチョコケーキを食べ終わっており、次にイチゴのプチケーキ。それもすぐに食べ終わり……という状況だ。
マナも意外と食べるようなのかもしれない。
「おかわりしてくるね~」
他の人が戻ってくる前に食べ終わってしまったマナはおかわりしにお皿を持って席を立った。
それと入れ違いにアキ、白夜、姫様、ソウナが戻ってきた。
それぞれの手にはたくさんのケーキやデザートが乗った皿を持っていた。
「たくさん、持ってますわね……」
「これくらい普通じゃない?」「……普通」「元々甘い物には目がありませんので……」「私の皿に乗ってるのは大体姫様のだから」
ソウナもたくさん食べる方かと思いきや、そうでもなかったみたいだ。
姫様がここまで食べるとは思わなかったが……。
「おいしい……。これがいくらでも食べられるんですか」
「一応、三十分間って決まってるから。えっと……25分までかな?」
アキが時計を確認しながら言うと姫様は食べる速度が上がったかのように思えた。
「ここ、たくさん種類があって良いわね。これだけいい店だったら予約取るのも大変なんじゃないかしら?」
「うん。結構大変だね。でも、わ……僕の知り合いがここで働いててね、手を回してくれたんだ」
いくら知り合いが働いていてもそんな簡単に予約が取れるわけな……。
「……ちなみにここの店長」
白夜がそう言った事によりわたくしは納得してしまった。
アキならばいろんな店の店長と知り合いになっていそうだ。なぜならばアキにとっては新聞のネタ材料に。店長にとってはライコウで唯一の新聞を扱っているアキと知り合いになっておけば新作などがすぐに国中に広がって客の出入りが良くなる可能性がある、ということだ。
それから他愛もない話をしながら食べていると、何回か出ているスイーツが無くなると言う現象が起きた。
誰かと追求するまでも無く、アキと白夜。そして姫様による犯行だ。
ちなみにそれだけ食べられても店側が赤字になることは無い。それだけのお金を取っている。だけどそのお金を取っていても入りたくなるほど美味しいので市民からは苦情が無い。
「……テメェ等、どれだけ食やぁ気が済むんだよ……」
皿がたくさん重なって置いてある中、キリが呆れるようにして答えていた。
ちなみに、ここに積み重なっている皿以外にも、ウェイトレスが皿が足りないと言う事で持って行った分が何十枚かあった。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
感想や質問も待ってます。




