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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第一章 何気ない日常
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禁止令



 ボクとソウナ、マナは校長室へ向かったのだが、その途中。ボク達は【一匹狼】としてこの学校では恐れられてる仙道キリと会った。

 その制服は完全に着崩していて、校則を完全に無視だ。

 キリはボク等三人を見てマナで視線を止めた後、華麗にスルーしてボクを見た。


「なんだお前ら。揃ってどこかに行くのか?」

「はい。真陽さんに呼ばれていて……」

「真陽に? ……あぁ、なるほど」


 キリは何かを悟ったようだ。ボク達はわからないのだが、キリにはわかったみたいだった。


「チッ。そうなると行事に出る意味があんまりねぇな……。フケるか?」


 それもキリにとって悪い事のようだ。


「ダメですよキリさん。ちゃんと学校は来なきゃ。あと、ちゃんと行事とかにも参加しないと」

「わかってるよリク。始まったら真っ先にお前ら三人を狙おうと思ってたんだが……仕方ねぇ。上の学年でも……」


 キリがブツブツ言いながら廊下の先にと消えていった。

 真っ先にボク達を狙っていたとは……。それにしても、キリにとってそんなにも悪い朗報だったのだろうか?

 とりあえず、ボク達は校長室の前に並んだ。

 ボクはコンッコンッとノックしてから、自分の名前を言い、返事を待つ。すると中から返事があったので、ボクはそのドアを開けた。

 中には、黒の袴の巫子服を着ていて、白髪の胸が特徴的な女の人。英名と言われる強者の証【黒き舞姫(ブラックダンサー)】の名を持つ桜花魔法学校校長。篠桜マナの祖母にあたる人。篠桜(しのざくら)真陽(まひ)がいた。


「すまないねぇ。ほうか……なんだぃ? 空気が悪くないかぃ?」


 そして、真陽が真っ先に空気の悪さに気づく。

 その反応にボクはから笑いをしたのだった。


「まぁいいよぅ。それよりぃ、『魔石争奪戦』の話は聞いたかぃ?」

「はい。一通りは……」


 ボクは真陽の質問に頷く。すると真陽が「その事なんだけどねぇ」と話を続けた。


「実は、君達三人はその『魔石争奪戦』で神を使うことを一切禁止したいんだよねぇ」

「神を使うことを禁止? ということは、自分の魔力だけで戦えという事かしら?」

「まぁ。ざっくり言うと、そんな感じだねぇ」


 真陽がソウナの確認に対して同意する。


「ウチは別に炎の使い方もわかったし、フィエロを使わなくたって大丈夫だから問題ないね~」


 マナが言ったフィエロ。それはマナが初めて持つ事になった神の断片。

 金色の炎と真紅の翼が特徴的な〝ガルダ〟の名前だ。インド神話の聖鳥。マナは呼ぶ時〝大鵬金翅鳥〟と言ったが……。


「私も大丈夫かしら。元々補助型でこれまでやってきていたのだから」


 二人は問題ないというように真陽の提案を承諾した。

 あとは、真陽はボクの承諾を待つだけなのだが……。


「えっと、それって神様の魔力含めですか?」

「当然だろぅ?」


 何を当たり前な事をと言いたそうな真陽にボクは少し難しい顔をした。

 なぜ自分がこれほどまでに悩んでいるのか? それは自分の魔力をハッキリと使ったという自覚が無いからだ。

 〈氷刃月華〉は確かに自分の魔力をつかったらしいのだが、そういう魔法は大抵まだできないからと、ルナが魔力コントロールしていたため、自分が使ったという自覚が無いのだ。

 つまり、ボクはまだ魔力コントロールが全然出来ていない。

 自分の魔力を使ったという事も自覚していないのだから、これは一大事だと思うのだが……。


『逆に、これを機に自分の魔力を知る事と、魔力コントロールが上手になるように努力してみたらどうじゃ?』


 ルナが頭の中で答えた。ルナというのは、ボクの契約した一番初めの神様だ。魔術の神〝ヘカテ〟で、髪が金髪で普段は灰色のワンピースを着てる。背の高さはボクよりも下だ。

 そして、そのルナの言葉はかなりポジティブな考え方だったが、ボクはそれで納得した。これから戦闘訓練よりも魔力コントロールの練習をした方がよさそうだ。


「わかりました。神様を使わなければいいんですね?」

「そうしてくれると助かるねぇ」


 真陽が満足げに頷き、それからソウナとマナの方を向いた。


「それじゃあ、マナとソウナは話が終わったから先に外に出ていてくれないかねぇ?」

「え? 私達だけですが?」

「リクちゃんは?」


 ボクも、二人と同様にハテナを浮かべる。


「すまないねぇ。ちょっとリクとは話があるから残って貰うよぉ?」

「わかりました」


 ボクが何だろうと思いながらも頷いた。


「それじゃあリク君、また後でね」

「失礼しました~」


 二人が礼をして、校長室を出て行く。

 ボクと真陽がそれを見届けた後、ボクは真陽に向き合った。


「それで、話ってなんですか?」

「実はねぇ。もうジーダスは無いから、ヒスティマでの戸籍とかいろいろと元に戻せるようにできてねぇ」


 戸籍とかいろいろ? それって……。


「も、もうボク女の子の格好をしなくてもいいということですか!?」


 ボクは驚き半分。嬉しさ半分の状態になる。

 飛び跳ねたい気持ちを一生懸命押さえつけて、ボクの考えている事が本当かどうか訊いた。


「まぁわかりやすく言えばそういうことだねぇ」


 真陽にそう聞いた時、ボクは初めてそこで飛び跳ねた。


「やったぁぁぁぁああああああ! もうこれで女の子にならなくてもいいってことですもんね!?」

「そ、そうだけどぉ。そんなに嫌だったのかぃ?」

「そりゃぁもう! だってボクは男の子なんですから!」


 これまでその事で怒ったりしていたのに本物の女の子になって怒れなくなった。ボク自身は本当は男の子だというのに女の子扱いばかりされてはさすがにストレスもたまるという物だ。


 そう考えていると、ボクはふと頭の隅でアキやハナ、後はクラスメイトの事が思い浮かんできた。

 彼らはボクが女と思って話しかけてきてくれたのだ。

 ここでボクが本当は男だとわかったら……どんな顔をするんだろうか?

 もしかして、変態のレッテルを張られてしまうのだろうか……?


「ん? いきなりそんな顔になってどうしたんだぃ?」

「いえ……。その、ボクの戸籍が元に戻ったら、学校には男子生徒として来るんですよね?」

「もちろんそういうことになるけどぉ。何かマズイ事があるのかぃ?」


 ある。主に社会的な面で。

 ジーダス攻略戦のすぐ後なら社会的に死ぬことは無いと思ったのだが……どうしてこんなにも後に言いだしたのだろうか?


「すみません……。やっぱり、このままでいいです」

「そうかぃ? ならいいんだけどぉ……さすが、カナちゃんだねぇ。自分の子供の考えはすべてお見通しかぁ」

「え? 母さん?」


 どうしてそこでお母さんの名前が?

 赤砂カナ。これがボクのお母さんの名前で、ボクの身に起きる事件の大半の元凶だ。ヒスティマでは真陽と同じく英名【自由な白銀(フリーダムシルバー)】の二つ名を持ち、英名の中でも最強と言われる【終焉を知らせる者(ラグナロク)】と肩を並べるなんて言われているけど。都市伝説でしか知らされておらず、知る人は少ないが……ボクにとっては天然トラブルメーカーでしかない。

 ちなみに真陽とは昔からの腐れ縁らしい。


「カナちゃんがねぇ? いまさらリクに戸籍を変えれるよなんて言ってもどうせ変えないでしょなんて言ってたからさぁ」


 ……あの人はどうしてこうボクの考えがことごとくわかるのだろう……。


「まぁこれはただの前座だとしてぇ。本題に入ろうかねぇ」

「これまでのは前座ですか……。どれだけ長いんですか……」


 ボクは音量を押さえながらそう言った。真陽は聞こえていなかったようで何も言わなかった。


「君の言っていた、漆原(うるしばら)竜田(たつた)。あいつについていろいろと探ってみたんだけどねぇ」

「何か分かったんですか?」


 ボクがそういうと、真陽は肩をすぼめて首を振った。


「それがぁ。全くと言っていいほどわからないんだよぉ。この国の者ではない事は確かなんだけどねぇ。他の国でも、そんな名前は訊いた事が無いしぃ」


 竜田はこの国の人じゃない。それはボクは事前に分かっている事。

 だけど、竜田の言葉だったので、完全には信じたわけでは無かった。だから真陽の言葉で竜田が嘘を言ってはいなかったという事がわかった。

 それにしても、あれだけの実力者だったら……なんて思って真陽に訊いて見て、調べてくれた。だけど真陽が調べた結果じゃわからなかった。


『今まで、実力を隠していたとしか思えんのぅ』

(ルナもそう思う?)

『わたしだってそうおもいますけど?』

『それよりさ。あたしお腹減ったんだけど』

『『ツキは黙っておれ(なさい)!』』


 ボクの頭の中でケンカしないでほしい。

 二番目に聞いた声はシラ。冬の女神〝白姫〟でボクが契約した神の二人目。人型になると、背中にある氷柱のような物が六つ。対となって浮かんでいて、これは翼らしい。頭には氷のティアラがあるのが特徴的だ。

 三番目に聞いた声はツキ。月の女神〝セレネ〟でボクが契約した神の三人目。灰色の髪に月のヘアピンで、その灰色の髪は月が空に出ていると光の粒が纏わりつき、金髪に見える時がある。

 そして、ルナとツキは武器の刀となり、シラは腕輪となってボクが使う。最近は大体二つの刀を同時に使うので、二刀流を真陽に教わっている。


「まぁ、そういう事だから、役に立てなくてすまないねぇ」

「いえ。大丈夫です。わざわざ調べてもらって、ありがとうございます」


 ボクは礼儀正しく礼をして、これで話も終わりと言われたので「失礼しました」と言い、扉の前でもう一度礼をしてから校長室を出たのだった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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