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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第一章 何気ない日常
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いつか……

「えぇ。では今から桜花魔法学校恒例『魔石争奪戦』の説明を始める」


 勝也先生の言葉と共に、ざわざわと騒がしくなる教室。

 近づいてきたのは桜花魔法学校の最初の行事。学年、組関係なしのチームを作り、それぞれのチームが持っている魔石を24時間、奪い合い、終了時間に一番多く持っていたチームから一位と順位付けされるようだ。


 アニメなどで、よくありそうな行事だった。そしてその行事を一年生は初めて行うのだ。説明が長くなりそうだ。ちなみに戦場となる場所は桜花魔法学校の敷地内すべて。敷地外には行けないように校長である真陽が結界魔法を使うとのこと。


「もっと詳しく言えば、チームは一組七人まで。魔石は初めそれぞれのチームのリーダーが一つ持つ。何かしらの魔法で敷地外に出たら魔石は没収。ベクサリア平原のどこかへと転送される。あと、戦闘について、始まる前に安全装置が武器につけられる。死ぬ事が無いから、派手に暴れてくれ」


 七人……。そうすると、前衛が四人、後衛が三人ぐらいか……それとも前衛は全員壁にして後衛が攻撃の主とする人も出てくるかもしれない。


「それと、一部の先生が戦場を徘徊する。先生は魔石を二つ以上持っている。ただし、先生も必ず一人でいるとは限らない。チームを組んでいる事もあるので用心するように」


 そこまで先生の説明が入って、クラスメイトの一人が手をあげた。


「はい。久嶋(くしま)。質問をどうぞ」

「先生のグループは何人までって決まっていますか?」

「いい質問だ。聞かなければ黙っているところだ。先生のチームは最大三人。少なくて一人だ。他にはあるか? わからない所や俺が行っていない所を質問しなければわからないだけだぞ?」


 そう言いながら先生が名簿に記入している。

 なるほど……もうすでに始まっているという事か。

 そうすると、質問はたくさんした方がいいのかもしれない。

 そう思って何があるのかなと考えていると、赤い髪をツインテールに縛っているボクの幼馴染、篠桜マナが手をあげていた。


「はい。篠桜。質問をどうぞ」


 ちなみにマナは学年一位の頭脳を持つ天才。だけどその頭脳を発揮することがあまり無いという残念な人。そして、大切な幼馴染。六月上旬ぐらいに、神〝ガルダ〟を従えて、悪魔を使う謎の男、漆原(うるしばら)竜田(たつた)をボクと一緒に戦って勝った。

 その竜田は、ロピアルズ警察会本部に捕まえられたものの、何者かの襲撃によってロピアルズ警察会本部ごと吹き飛ばされ、脱走されてしまった。


「最初に始まる場所ってどこですか~?」

「よく気づいた。とは言ってもこれは気づいてほしい物だが……。最初に始まるのはランダムだ。校長先生がランダムに転送魔法を使い、この学校敷地内のどこかへと配置される。運が悪ければ状況確認する暇も無く戦闘だ」


 それが学年主席だと尚の事な。と勝也先生が付け加えた。

 確かに、いきなり学年主席の実力者が相手となるとその人は運が悪いと言えるだろう。

 すると、今度は藍色の髪を伸ばしたレナ・ルクセルが手をあげていた。


「はい。ルクセル。質問をどうぞ」


 彼女はボクの数少ない男友達である仙道キリという人の幼馴染。だからボクも彼女とはよく話すようになってきた。お金持ちなのと、マナに次ぐ頭脳の持ち主。とりあえず、ボクの周りに居る友達って頭いい人ばかりだなと思う。そういう自分は実力テストなる物を桜花魔法学校でした事が無い。ボク自身は中位いければいい方だと思う。


「魔石を取られた生徒はどうなるんですの?」

「魔石をとられた生徒は校内にある視聴覚室で観戦だ。強制的にテレポートされるようになっている。つまり、視聴覚室は戦闘禁止区域だから入ることはできん」


 とすると……。なんとなく思った事をボクは手をあげてみた。


「はい。天童。質問をどうぞ」


 天童といわれ、そういえばと思いだす。ボクはこの学校には天童リクとして通っているのだ。本名は赤砂リクだが、今は無いジーダスという組織に見つからないように天童という名前と、性別を変えて学校に来ている。

 白銀の髪と瞳。後は童顔なのは元からだからいいのだが、指につけている性転換魔法のかけられた指輪により、体が完全に女性となっている。元は肩より少し上ぐらいの髪だったのに今は腰下ぐらいまであり、身長や体格があまり変わっていないにしても胸の部分はあるとわかる程度に育っている。


「えっと、視聴覚室以外にも戦闘禁止区域ってあるんですか?」

「ああ。もちろんある。具体的には校長室。職員室。指導室などだ。基本的に戦闘禁止区域は鍵がかけてあるからわかるだろう」


 鍵か掛かっていなければどこに入ってもいいという事か。校内で戦って魔法が飛び交う。

 ……壊れたりした物はどうなるんだろう。

 ボクは戦闘よりもそっち方面で気になってしまった。


「質問が無ければ続けるんだが……無いな。ならこれで質問タイムは終了だ」


 何か見落としているところがあると思うのだが、ボクにはさっぱりだった。


「それじゃあ、リクとマナ、それとソウナは校長先生に呼ばれているから終わったら校長室に行ってこい」

「校長室……ですか?」


 ボク達何かやっただろうか? そう考えて目を隣の席にいるマナに向けてみるけど小首をかしげるだけだった。

 とりあえず、終わったら校長室に行った方がよさそうだ。


「それじゃあ、これで終わる」

「きり―つ。礼!」

『さようなら』


 クラスの礼が終わると、今日は珍しくクラスメイト達が寄ってこなかった。


「って当たり前ですよね。帰るのにボクは校長室ですし」


 そしてこれがボクが望んでいた事。とっても平和で心地が良い。それに、今日はチームを決めた方がいいと思うし……そう思ったところで、ボクはみんなに囲まれた。


「リクさん! 終わったら俺達、校長室の前で待ってますんで声かけてくださいね!」

「こんな人達より私達に声かけてね!」


 まさか終わるのを待っているとは……。校長室で何分話すのかも知らないのに……。


「い、いえ。ボクはマナちゃん達と帰りますから……」

「帰る方も大事だが、俺はリクさんと組みたいだ!」「何言ってんの! リクちゃんと組むのは私よ!」


 どうやら帰る方ではないらしい。チームのお誘いらしいのだが……。どうしてこう誘おうとするのだろうか。

 ボクをチームに入れてもそんなに期待に備えるような事が出来るとは思えない。


「はいはい。リクちゃんはウチとソウナさんと一緒に校長室に行くんだから他の人は早く帰る~」

「そうですわ。第一、貴方達下心丸出しですわよ?」


 そのクラスメイトを避けてマナとレナが出てくる。

 ……間違えた。炎と水の魔法むき出して出てくる。それにクラスメイト達がザザッと引く。

 どう考えても危ない。特に最近のクラスメイト達はマナの成長を知った。今のマナの炎に当たると一部を除く生徒達ではどうしても防げない。完全に防げるのはせいぜい無力化できるボクと防御魔法の得意なソウナ。後は水を得意とする生徒達ぐらいだろう。


「それじゃあリク君。みんなどいてくれた事だし、早く校長室に行きましょう?」


 そう言って腕を引いて行くのは透き通る青色の滑らかの長髪が特徴的なソウナ・E・ハウスニル。

 ボクがヒスティマを知った原因だが、初めから彼女を責めることは無かった。逆に、今では感謝しているほどだ。

 父親が悪魔に憑かれて九年間。親の変貌を見て育った彼女。

 父親、フェデルから悪魔を放したのだが、汚染がひど過ぎて他界。すでに母親は他界していたため、身寄りが無くなってしまったが、そこをボクが家に招いた。

 今では大事な家族としてボクの家で過ごしている。


「あ、あの……。腕を組む必要は……」

「別にいいでしょう? それともリク君は他の事でも考えちゃうのかしら?」

「そ、そんなこと無いです……けど……」


 こんな大勢の人がいる中ではかなり恥ずかしいというか……。腕に当たってるというか……。


「そ、ソウナさん……。あんた何やって……」

「マナさんには出来ない事かしら?」


 ソウナが何やらマナに勝ち誇った笑みを浮かべる。

 そのソウナにマナが右手を炎で纏わせて握りこぶしを作る。その顔はとても見れた物ではない。見ただけで睨み殺されてしまいそうだ。


「だ、大丈夫ですわマナさん! そのうち…………きっと…………いつか……そう。いつかマナさんも大きくなる可能性がありますわ!」


 レナの歯切れの悪いフォロー。そのおかげでさらに暗くなったマナは「ウチだって……」を繰り返しながらトボトボとついてくる事になってしまった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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