表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第二章 ルクセル家
15/77



 ――起きて、心優しき子。



 え?

 目を開ける。

 だけど目の前の空間は真っ暗で……。それでいてどこか見覚えがあるような気がする。

 だけど、考えてみても曖昧だった。神様が現れるような場所では無い事だけは確かだが……。

 なぜなら、神様が現れる場所は少なからず色がついている。ここは色がついていない。真っ暗闇だ。


『大変な事が……起きてる……』


 声がまたした。

 ボクはその方向へと顔を向けると、どこか見た覚えがあるような幻想的なまでに綺麗な女性。


「大変な……事?」


 ボクはついそう聞き返してしまった。

 するとその女性は首をゆっくりと縦に動かした。


『守護十二剣士の二つが黒い悪に消されてしまった。継承をしていない為に世界の柱を守る二つの盾が壊れてしまった』


 一体何の話をしているんだろう?

 守護十二剣士? 世界の柱?

 訳の分からない単語ばかりを並べていく女性。だけど、彼女はそんなことは関係なしに話を続けた。


『一つは電光の中心から八時の方向、知を司る〝ヒナ〟。もう一つは電光の中心から十時の方向、闇を司る〝阿偽(アギ)〟。この二つを黒い悪に消されてしまった』


 ヒナ? 阿偽? またもわからない単語……。

 司るとか言うということは神様の名前? でもそんな名前の神様は知らない……。

 だけど、一つだけ知っている単語が出た。それは……電光。

 これは白夜が持っていた本に乗っていた名前……。


『これ以上、黒い悪に守護十二剣士を討たせないで。彼ら彼女らはこの世界の柱を守る大事な盾。それを壊されてしまうと世界の柱があらわになってしまう。だから、その前に悪を討って』

「ま、待ってください! その、守護十二剣士……とか。世界を支える柱……とかって一体何なんですか!?」


 ボクは意味がわからない彼女の言葉にきちんと説明を求める。

 だけど帰ってきたのはただの一言。


『教えることはできない』

「どうしてですか!? 教えてくれたって……。大変な事なんて言われてもボクにはどうしていいかわからないですよ……」

『…………』


 沈黙が帰ってくる。

 ボクに大変なことなんて言っても、今の自分ではどうにもできないことぐらいわかる。

 そして、彼女の言葉がもし本当ならば、世界を壊そうとする悪と戦えということなのだ。どれくらい強いかも知らないのに……。


『世界の声が悲鳴をあげている。それは知と闇が消されてしまったから。世界の柱が壊れないかぎり、知と闇が完全に消すことはできないけど、このままいけばすべての盾が壊れてしまう。そうすれば、世界の柱が現れ世界(ヒスティマ)崩落の危機となる』


 淡々と話す彼女の言葉を理解できないまでも、ボクはその言葉を何とか記憶に焼きつける。

 そうすれば誰かに訊けばわかるかもしれないと思ったからだ。

 彼女からはただの沈黙しか返ってこない為に、こうすることしかできなかった。


『次に狙われるのはきっと八時から十二時の間を司る誰か。九時は光を司る。十一時は土を司る。十二時は月を司る。三人とも力は強大でも八時の知よりも力は劣る』


 彼女の声が薄れてくる。


『だから……して。これは……にしかできない事だから……』


 言葉が切れ切れとなって、なんて言っているのかわからなくなってくる。


「待ってください! やっぱりわからないです! 一体……。一体それでボクに何をさせたいんですか!?」


 強大な力を持つというのならば守ることなんて到底無理だろう。

 ボク自身が強大な力を持っていないのだ。だからただの足手まといとなってしまうのではないか?


『ちが……。守らなくてもいいの。……等と……くれれば……くできっと……はず。だから……って世界の(、、、)継承(、、)を――』


 彼女の言葉が途中で途切れる。

 そして、朝を迎えた――。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「おっきろ~♪」

「グハッ!!」


 唐突にお腹に激痛。そして重みを感じる。

 久しぶりのその感覚にボクは目を開けると、眼前に迫っていたユウを睨んだ。


「お兄ちゃん起きた? ……大丈夫? 何だか眠たそうだよ?」

「今ユウが……ボクを永眠させようとしたんでしょ……」

「えぇ!? そんな事ないよ!? ユウはお兄ちゃんを起こそうと恒例の起こし方をしただけだよ♪」

「それがボクを永眠させようとしてるの!! だから今後一切そんな起こし方禁止!!」

「えぇ……。だってこうでもしないとお兄ちゃん起きてくれないんだもん……」


 別に肩とか揺らせば普通に起きるというのに……。


「揺らしたよ? それもベットごと揺らしたよ?」

「ベットを揺らさない!!」


 ベットから少し顔を出して下を見てみると、確かにベットがずれたような跡がある。しかも何度もこすったのではないかと思えるような跡が残っていたのだ。


「……ユウ」

「なぁにお兄ちゃん♪」

「今すぐにベットの位置を直す事と傷つけた床を綺麗に修復する事」

「えぇ!? そんなの無理だよ!?」

「魔法あるでしょ」

「まぁ、魔具とか使えばそんなの簡単だけど……」


 簡単なのか……。魔法って便利だね……。

 ボクはベットから降りる。するとユウは、どこからともなく取りだした雑巾とスプレーのような物を取り出した。そしてスプレーを雑巾にかけると、さっそく傷付いた場所を拭き始めた。すると拭いた所が瞬く間に直って行ったのだ。


「ねぇ。お兄ちゃん。ご飯って言ってたから早く着替えないと遅刻するよ?」

「うん。わかってるけど……ユウ。もしかして口実を作るためにワザと床を傷つけたの?」


 するとユウの肩が目にわかるようにビクッと跳ねた。


「ち、違うよ? お、お兄ちゃんが起きなかったから仕方なくベットを揺らしただけだよ♪」

「それにしては直すための魔具の準備が良いね」

「!!?? こ、ここ、これはたまたまだよ! たまたま!!」


 たまたまでそんな物を持ち歩いている人はいない。しかも自宅で。

 そしてボクは黙ったままジーっとユウを見ている。

 すると、ボクの妹はどんどん汗が流れ出てくる。

 そして、ついに我慢が出来なくなったのか、ユウはすぐさま誤った。


「うぅ。ごめんなさい……。こうすれば見れるかなって思いまして……」

「はぁ。あのさぁ。ユウはどうしてボクのを見たいの? 毎度毎度思うけど」


 思わずボクはいつも思っている事を口にしていた。

 するとユウは割と単純に返してきた。


「お兄ちゃんだからだよ!」

「はい?」


 単純だけどまったく意味がわからない。

 だけどそれには続きがあった。


「お兄ちゃんのだから見たいし、見せてみたい! ユウの一糸まとわぬその姿で着替えっこみたいなそんなこともしてみたいし何よりもお兄ちゃんじゃないとよくないし! ユウはお兄ちゃんのを一糸まとわない姿でもみてみたぷぎゅ!」


 完全に暴走気味になったユウの顔面に猫の抱き枕を投げた。

 途中で意味がわからなくなった事も兼ねてだ。

 そしてボクはユウがこれ以上ここにいてはいけない事だと考えて行動に移った。


「酷いよお兄ちゃん! いきなりなにす――」

「今すぐにこの部屋から出て行こうか♪」


 ユウの顔を見たままシャーと音がしてカーテンを開ける。


「え? ちょ、お兄ちゃん?」

「この部屋から出て行こうか♪」


 同じく手探りだけで今度は窓を開けた。


「ま、まだ傷とか直ってないし……」

「出て行こうか♪」


 そしてボクはゆっくりとユウに近づいた。


「え、ちょ、今その手に持ってる危ない魔力を帯びた物をどうするのお兄ちゃん!?」

「出てかないなら……」


 ボクがそう言うと、ユウは一目散にこの部屋から撤退した。

 部屋に残されたボクは右手に持っていた魔力で作った氷のハリセンを無くす。



 ……ちなみに、あのまま出て行かなかったら窓を開け放ってハリセンでユウをプロ野球選手もびっくりなホームランをする予定だった。



 それからドアを氷で完全に密着させ開かなくさせた後にクローゼットを開いて制服を取りだした。

 とりあえず、今日も桜花魔法学校の制服。

 最近は赤砂学園と桜花魔法学校を一日ごとに交互に行っていたのだが、『魔石争奪戦』が終わるまでしばらくの間は桜花魔法学校に通うつもりだ。


(夢の事もあるし……ね)


 今でもはっきりと覚えているあの夢。話している女性が誰かは全くわからないし、話している内容も全くわからないが、ヒスティマが今現在大変な事になっているらしい。

 ボクの夢に出て来て、何かを伝えたかったと思われる。ボクはその実、あまりわかる事が出来なかった訳だが……。それでも、地球にいるよりはヒスティマにいた方が何か起こりそうなのだ。

 指輪を付けてから着替えを済ませると、先に髪を梳かしていない事を思い出した。ボクは鏡の前に座り、櫛を手にとって髪を梳かした。

 これをしなければいつも髪が絡まっていてよくないのだ。


「よし!」


 髪を梳かし終えると、ボクはカバンを持ってドアの氷を解く。

 それから、階段を下りて朝食を食べてからヒスティマへと向かった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ