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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第二章 ルクセル家
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 ある程度時間が潰れるとボクはふと思い出したように時計を見た。


「あぁ! もうこんな時間! 帰らないと!」


 窓から外を見るともう日が落ちるぐらいで、それがむしろ急いで帰らなければいけないと思わせた。


「あら、もう七時ですわ。そうですわね……風香!」


 ガチャと扉を開けて出てきた風香。


「リクさん、ゲートまで送りますわ。風香、車の手配を」

「……!? わ、わかりました」


 風香は何やら驚いた顔をしていたがすぐに頭を下げた。その後に部屋を出て行った。

 その行動に少し疑問を持ったがボクはまずレナに礼を言った。


「ありがとうございます、レナさん」

「そのくらい何でもないですわ。それよりも……風香の反応に少し気になりましたが……」


 レナも気づいたようだ。

 部屋を出て行く時もまるで焦っているようにも見えた。

 一体何を見て……って。


「ルナ達出したままだった!?」

「「「あ」」」


 何気なく話していたがそういえば三人はこの家に来るときにはボクの中にいたのだからその事にビックリしたのだろうと予想付けた。


「そうでしたわ……。三人は神様ですものね。話して行くうちにすっかり忘れていましたわ……。ですが、風香ならばおそらく訊いてくると思いますわ」


 それでは三人ではなかったのだろうか?


「じゃあ何に驚いたんだろう……」

「まぁ一旦妾達はリクの中に戻るとするかのぅ」


 神三人はそろって光となりボクの中へと消えていった。


「それでは、行きましょうか」


 レナに誘導されて、玄関へと進んでいく。

 迷路のような通路を何の迷い無く進んでいくレナ。離れて見失ったら大変だ。


「そういえば、来た時はあんまり気にしていなかったんですけど通路にたくさんの絵が飾ってありますね……」

「それは、お父様の趣味ですわ。自分で書いたりしますの。例えば……」


 そう言って立ち止まると、一つ大きな絵を見上げる。

 その絵には一人の女性が豪華なドレスを着て、イスに座って微笑んでいる。


「これはお父様がお母様を書いた絵ですわ」

「すごいですね……」

『うまいのぅ』

『ほんものかとおもいました』

『ねぇ。それより早く帰らない?』


 とっても綺麗に、そしてレナの母を見た事はないが、リアル感を漂わせる絵にボク達は感心する。約一名おかしなことを言っている人がいるが。

 きっと何時間もかけてこの絵を完成させたのだろう。


「お父様はとっても優しいのですが、会社ですとやはり、厳しいと言う声をよく聞きますわ。わたくしも、いつも優しいお父様とは進路の事になるとよく激しく言い合ってしまいますわ。進路は自分で決めたいのですが……」

「会社の跡取りをしてくれとか……ですか?」

「えぇ。まさにそのとおりですわ。会社の跡取りを頼む、と。……カンマはもう助からないと思っているからこその言葉ですわ。ほんとだったらカンマがお父様の会社の跡取りとなるはずでしたから」


 カンマはもう持たない……。

 それが名医に言われたから諦めてしまったのだろうか?

 でも、それは現実的な物なのかもしれない。


「お父様は、もう助からないからこそカンマにはなるべく楽しんでもらいたいと言っていましたわ。……でも、仕方ないんですわ。わたくしは元々お父様かお母様どちらかの会社の跡取りとしてやらなければいけないのですわ」


 ボクは、そのレナの言葉が少し痛々しいような気がした。何か諦めているような感じがして……。


「本当は……」


 何かを言い掛けた所で、前の玄関の扉がひとりでに開く。


「レナ様。車の準備が整いました」

「ありがとうございますわ。さ、リクさん。ゲートまで送りますわ」


 車のドアを風香が開ける。レナが入って、ボクが遠慮がちに入ると、風香がドアを閉める。

 それから運転手に一言二言話した後、風香は頭を下げた。

 車がそれを合図に動きだし、じょじょに速度が上がっていく。

 揺れる車の中でレナとたわいもない話をしていると、いつの間にかゲート近くまで来ていた。

 車は停まり、忘れていた荷物を運転手から受け取ると、レナとさよならをしてからゲートをくぐった。

 ゲートを通って地球へとたどり着くと、空はもう日が暮れそうな時間。

 ボクは脚を駆け足にして急いで自分の家へと帰って行った。




 自分の家について玄関のドアを開けて中に入ると――


「おにぃちゃーん!!」


 ユウが真っ先に気がついて扉に向けて走ってきていた。

 近くまで来たユウは急にジャンプをしてこのままいくと完全にボクにぶつかるのでボクはサッと遠慮なく避けた。


「あぶっ!?」


 顔面を玄関のドアにぶつけるユウ。

 ボクはその状況をスルーして靴を脱いで自分の家に上が――


「ちょっと待ってお兄ちゃん! 酷くない!?」

「え? どこが?」

「嘘だ! 絶対に嘘だ! お兄ちゃん絶対にわかってるよね!?」


 ただ単にユウを避けただけじゃないか。何を言っているんだこの妹は。

 あのまま立っていたら被害があったのは完全にボクの方だ。

 受け止めるという選択肢はあったがあえて無視した。

 なにせ今の姿は女なのだ。完全に受け止めれる自信は無い。

 ……女になっても筋力は変わらなかったから受け止めれたが……。


「うぅ……お兄ちゃんが酷いよぉ……。あ♪ その袋に入っている物は!?」


 涙目になって泣いていたユウはボクの持っている袋を見つけるとキュピーンと目を光らせて先ほどまで泣いていたとは思えないほど喜び始めた。

 つまり先ほどまでの泣きは嘘泣きだったのである。完全に見破っていたが。


「ユウが欲しいって言ったんでしょ。ほら、ヤキソバパンチ」


 コンソメパンチというお菓子のコンソメの部分をヤキソバ味にしたのがヤキソバパンチだった。


「やったぁ♪ お兄ちゃんありがと♪」


 ユウはそれをサッと取って開けて食べた。そしてその動作を0,1秒以内の内にやってのけた。

 ちなみに魔力などは使用されなかった。


「そんなにおいしい?」

「おい()()! はっへ(だって)はひほははひ(ヤキソバあじ)はふれ(ハズレ)はいほん(ないもん)!」


 そんなに頬張る必要があるだろうか……。


 ちなみに、ヤキソバパンチはヒスティマでのみ売られている。

 ヤキソバを心から愛している人のみ食べる事が出来て、それ以外の人にはちょっと味がキツイらしい。

 そして大体が売れない為に一つの内容量が普通のポテトの二倍以上はあるためにユウみたく口の中に頬張っても無くならない。

 そして値段はなんと普通のポテトの三分の二の値段だ。

 どうしてそんな物を作っているのだろうと思う。

 ヤキソバ大好き人間ではないボクにはいくら時間がかかってもわからないだろう。


「それより、今日は母さんいないの?」

「ほはあはんはひょう――」

「飲み込んでから喋りなさい」


 ボクの言葉を聞き、言葉を止めるユウ。そしてもぐもぐしてから一度ゴックンと聞こえそうな感じに飲み込むと、話し始めた。


「お母さんは今日帰ってこないよ? だってルーガさんにつきっきりで仕事させられてるもん」


 一体何をしたんですかお母さん……。


「ちなみに昨日仕事放棄して家に帰ってきたのが原因らしいよ♪」


 それならばまだよかったとホッとする。

 仕事を放棄して脱げ出す事は普段からしているらしいので大して変わらない。

 どうせならばいつもそうしてほしいほどだ。


「今日の当番はっと……」


 ボクは台所に入って、今日の当番表を見ようとする前に、声をかけられた。


「今日は私が当番のはずよ? リク君」

「あ、ソウナさん。ただいまです」

「お帰りなさい。遅かったのね」


 キッチンにはすでにソウナがいて、下ごしらえをしているところだった。


「えぇ。まぁ……。途中でレナさんと会いまして……」


 ボクは簡潔に病院でレナと会ったことやレナと買い物したことや家に言った事などを伝えた。

 すると……。


「カンマくん……【治癒天使】として助けてあげたいわね……」

「でも、今現在の医学・魔法じゃ助けられないって、言ってました」


 それはソウナも例外ではないだろう。

 いくら【治癒天使】だと言っても魔法でしかないのだから。


「それはそうとリク君」

「はい?」


 ソウナがいつになく真剣な顔をしている。何かマズイ事は言っただろうかと思いながらソウナの言葉を待っていると……。


「私とマナさんだけじゃ足りないというの……?」

「えっと、すみません。意味がわかりません」

「あとユウちゃんも入っているわね……。いつの日か二つ名が【夜の王】……。いえ、リク君には合わないわね……。ここはいっそ【夜の百合王】とか……。ダメよリク君。私は百合は認めないわ!」


 なんかいきなり変な事を言いだしたソウナ。全く意味がわからない。

 夜の王とか夜の百合王とかって一体何なんだろうか……。


「え、えっと、とりあえずボクは着替えてきますね~」


 冷や汗をたらしながら、ボクは逃げるようにしてキッチンを後にした。

 それからは夕食を三人で取り、真陽とマナが家に来たので稽古をした。

 家に帰るとボクは先にソウナをお風呂に入れて、その後に入った。

 そしてふかふかなベットに弾むようにして倒れ込むと、そのまま深い眠りについた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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