やっぱりツキはツキでした
「へぇ。レナさんの部屋ってなんだかお嬢様! って感じですね……」
恐る恐る入った部屋は、何だかキラキラとしたような雰囲気を漂わせている。
金を特別たくさん使っている家具が置いてあるわけではないのだが、どれも雰囲気が高級品だと思わせられる。
「そんな事ないですわ。大体がお父様やお母様に頂いた物ですから」
よく見て行くと、イスからテーブル。置いてある本棚や壁にかかっている時計。何から何までブランド品だと思われる。
それもヒスティマではなく地球のブランド品だ。
「レナさんの御両親は地球で仕事しているんですか?」
「まぁそんな所ですわ。お金を会社で稼ぐならばヒスティマよりも地球の方が稼げますわ」
地球では最近不景気が続いているのにヒスティマよりも地球の方が稼げるのだろうか?
ヒスティマの政治とはよくわからないが。
すると、コンコンと控えめな音と「風香です」と言う声がする。
「入っていいですわ」
ガチャ……と扉を開けて中に入ってきた風香。
「紅茶をお持ちしました」
両手でお盆を持ち、その上に乗っている紅茶の入ったコップを近くの丸いテーブルに二つ置く。
「失礼いたしました」と言って扉の前で頭を下げた後、扉をゆっくりと閉めた。
「それでは、紅茶が入りましたし一度一息入れましょうか。お荷物、ありがとうございましたわ」
「いえ……。たまたまです」
ボクはレナとは反対側のイスに座り、貰った紅茶を持って一口飲む。
するとハーブの香りが口一杯に広がり、喉を潤した。
「美味しいです……。でも、ちょっと違う味も混ざっていますか? 何だか体が少し軽くなったような……」
「いえ、正真正銘のハーブティーですわ。ただ、ハーブティーに入っているハーブですが、これは家のメイドが育てていますの。育てる時にちょっとした物を使えば魔力が少し回復する特殊なハーブになりますわ」
だからか……。体が軽くなったのは午後の授業で使った魔力が少し回復したような感覚だったのか。
それにしても……。
「何だか、平和ですね~」
「?」
レナはボクの言葉の意味がわからず、ハテナを浮かべたが、すぐになるほどと思いだした。
「リクさんの周りには騒々しい人達ばかりですわね」
「そうなんです……。レナさんはそういう人達の中では結構……かなり貴重かもしれませんね」
ボクの脳内で騒々しい何人かが浮かぶ。
そう言う人達の中ではやはりレナは大人しめで良いかもしれない。
あんまり……ツッコミをしなくて疲れない。
「それより、海の神様について、もう少し訊いてもよろしくて?」
「もう少し……ですか? すみません。ボク、この二人以外あんまり知らなくて……」
申し訳なさそうにそう言うと、少し落胆するレナ。
そこに救いの手を差し伸べるようにして声が聞こえた。
『あたしなら少しは知ってるよ~』
「え? ツキ?」
頭の中で聞こえたツキの声に反応して、つい名前を呼んでしまう。
すると、ツキが外に出てきた。
「へへん。博識なツキ様登場!」
「すみません。呼んでないです」
「嘘!? ひどっ!」
こんな平和な空間を壊すのがまさか契約している神様だなんて……。
とりあえず、戻そうとすると……。
「ちょっと待って! 本当にギリシャ神話なら海の神様知ってるから!」
「ほんとに?」
少し疑いの目を向けてしまう。
だってツキは馬鹿で働かなくていっつものんびりと満喫しているような駄神なのだから。
いや、昨日の夜はツキが答えを出してくれたのだから今回もうまくいくかもしれないと思い、ボクはツキからとりあえず話を聞こうと思った。
まずすることは……。
「ルナも出て来て」
シラは寝ているだろうから呼ばない。冬は基本起きていると本人から聞かされているが夏は熱さでやられていて基本寝ていると言っていた。
「ふむ。妾は記憶を無くしておるからあまり教えることはできんぞ?」
「ううん。ツキのブレーキ役になってほしいなって」
「あたしが暴走するとでも!?」
「そのくらいならば任せい」
「ルナちゃん!?」
ツキをヤる気満々とでも言うように作りだしたハリセンをブンブンと振り回し始めるルナ。
「あたし……話し終わるまで生きてるかな……」
「初めからくらうとわかっているのですわね……」
レナが何やら呆れたような顔をしている。そして控えめなツッコミが入っている。
「それじゃ、話し始めようか! まずは〝ポセ――」
「〝ポセイドン〟は話しました」
「そ、そっか。じゃあ……あれ? 確かいたような気がしたんだけど」
「しっかり考えてから物を言えい!!」
スパァンッ!
「あふんっ!」
ハリセンを顎からくらい、ツキが飛びあがってベットの上に倒れた。
「あははは……。すみませんレナさん。やっぱりツキはツキでした」
から笑いと謝罪をレナにすると、レナは口をひきつかせていた。
「どういう意味かわかりませんが……彼女は大丈夫ですの?」
「まぁ……大丈夫だと思います」
ピクピク……と痙攣するツキ。ルナは肩にハリセンを置き、「やはり昨日のあれはマグレであったか……」と頭を押さえてやれやれと首を振っていた。
『でしたら、わたしが』
「シラ? 起きてたの?」
夏は基本寝ていたのではないだろうか?
シラが外に出てくると、室内の温度が少し下がったような気がする。
「……やっぱりそとはあついです……。ということでかってに『温度』をさげさせていただきました」
「自由すぎじゃないですか……?」
シラは結構常識を持っていると思っていたのだが……。いや、室内の温度もそこまで下がっていないし、むしろ丁度良いと思うが……って、ボクは寒さを感じないんだった。
「大丈夫ですわ。丁度良いぐらいの温度ですし、海の神様の事が聞けるのでしたら……」
「ありがとうございます。それではさっそく……『海神』のことについてですが……」
シラが教えてくれた神様は大きく分けて二つ。
〝綿津見神〟と〝住吉神〟だった。
どちらもボクの知らない神様だった。
〝綿津見神〟は三姉妹で海を治めているらしい。古来の読み方でワタは『海』、ツは『の』、ミは『神霊の意』であるからワタツミとは海の神霊と言う意味でもあるとのこと。
〝住吉神〟は三兄弟で海の神、航海の神、和歌の神とされているらしい。住を『スミ』、古来の読み方で吉を『エ』と呼び、その間に助詞で『ノ』を入れた事により『スミノエ』と読むだとか。そしてそのスミノエとは『澄んだ入り江』の事を指しているとのこと。
どちらも三人そろわないと本来の神としても力を使えないらしい。
「そのかわりそろえばきっとわたしよりつよいです」
最後まで説明して満足したようにするシラは、レナの……。
「夢で見た神様は確か一人でしたわ」
という言葉により一転して「そうですか……」と考えるようにしてしまった。
「そうなると、日本の神様ではないみたいですね……」
「ですが、教えてもらってありがとうございますわ」
「いえ。あまりおちからになれずすみません」
ペコリと頭を下げたシラ。
それからというもの、海の神様の話題とは離れて、ボクはレナと神様三人を加えていろいろな話をして時間をつぶした。
その大体でツキはルナによりハリセンで飛ばされていた。
はい、平和な時間終了です(==
ボケやツッコミが無くてすみません。
これからはリクとレナを二人きりにしてはいけませんね……。
笑いが取れませんww
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
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