海の鐘を鳴らせましょう――
とうとう始まってしまったか……(==
また忙しくなりそうです!
またお会いできた読者の方々に心より感謝です!
――音が聞こえる。
何かを吹く音。
何かを叩く音。
誰かの声……。
音に関するもののすべてだった。
そしてその音が重なり、一つの曲が生み出される。
美しく綺麗な曲だ。決して不快にはならない心休まる音。
だけど、それはとてつもなく深い海に眠っている。
そして、わたくしはその場に立っていた……。
別に驚かなかった。こんな夢はよく見る。
最初に見たのはまだ小学生のころだった。
その時から、年を重ねるごとに頻繁に見るようになってきた。
具体的に見るようになってきたかといわれると……リクが桜花魔法学校に転入して来た時だろうか?
おかげで、今ではとっても好きなこの曲を毎夜見る事が出来る。
だけど、今日の夢はいつもの夢とは少し違った。
――ここは海の果て。なぜ少女はここに居る?
「え?」
声が聞こえた方を見る。
そこには、わたくしの数十倍もあるだろう大きさの何かがいた。暗くて全貌までは見ることはできないが、大きいシルエットだけが見えていた。
自然と、脚は竦み、震える。
――自分から来ておいて我を怖がるか。それとも、ただの迷い人か……。
言っている意味がわからない。だけど、どうやらわたくしは変な所へ迷い込んでしまったようだ。
こんな夢を見るのは初めてだ。
今までは夢の中で音楽を楽しむ事が数回あった。
だけど今もその音楽が鳴っているけど、こんな大きな何かがいることは無かった。
――一つ問おう。何故淵海を見る?
「え、淵海? 深い海の事でしょうか……」
言っている意味がわからない。
とりあえず、何かがわたくしを襲うと言うことはしないようだ。
そう思ったらわたくしにも余裕ができた。
「あの……逆に訊きたいですわ。貴方は一体……?」
――我か? 我は……ウォホンッ。
突然咳き込む何か。
わたくしはそれに目を丸くして見上げる。
それを何かが見て唸り始めた。
――うぅむ。訳あって名を出す事は出来ぬのだ。
「それでは……なんて呼べばよろしいんですの?」
いつまでも何かでは失礼だろう。そう思って口にした。
すると何かは腕を組み考えた結果。
――我の事はカイシンでよい。安直だが……。
安直と言ったときに、わたくしは少々笑いがこぼれてしまった。
――笑うでない少女よ!
重い声が荒上げるがそれでも少々笑ってしまう。今では怖さよりも好奇心の方が勝ってしまったため、余裕があるのだ。
「ふふ……。すみませんわカイシンさん。でも、少々面白かったですわ」
――変な少女だな。
「まぁ。失礼ですわ」
ここが夢の中だとわかっているのに、何だか夢ではないような気がしてくる。
それから、お互い話す事も無く、暗い海に響いている音楽を二人で目を瞑って聞いた。
この音楽はわたくしのリラックスできる数少ない一つなのだ。
海の中で聞こえるその音楽はとても心地よく、悪い事などすべて忘れてしまいそうなほど心地よい物だった。
そして朝が近くなってくる。それは音楽とは別に、雀のチュンチュンという鳴き声が聞こえてくるのだ。
それが聞こえ始めると、わたくしはその場に立つ。その様子にカイシンが目を向けてくる。
――どうした?
「そろそろ、起きなければいけませんわ。起きないと専属メイドさんに怒られてしまいますから」
上を見る。ほんの少しだけだが光がさしているような気がする。
――そうか。では行って参れ。ここはいつまでも我を知らぬ人間がいていい場所じゃ……。
そのカイシンの言葉を無視して、わたくしはカイシンに一言だけ言った。
「また来ますわ。海の神様?」
――ほぅ。
カイシンが安直だと言うのであれば、カイシンは漢字で書くと海に神だろう。そう思って言ってみたのだが……どうやらカイシンの反応を見れば当たりらしい。
――ならば高貴な少女よ。我は、少女が呼ぶまでこの淵海で待つ事としよう。
その重い声が聞こえた後。
わたくし、レナ・ルクセルは迎えに来た光に包まれた。
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