1-7 宿のオヤジはいい奴
宿に戻った俺は、二人をベッドに寝かしつけ、ギルドカードを眺めていた。
「魔法属性の適応もあったし、魔力量も尋常じゃないのは理解したが……、俺まだ魔法使えないんだよな……」
口にしてしまうと気になり始め。気になり始めたら、試してみたくなるのが人間である。
「簡単な魔法位ならいいよな……?」
先ほど検査した部屋でやった、両手に念じる。ということをまず試してみる
「ん……。なにかぼやけたのが見えるが、それ以上なにもならないな」
宿の受付まで行き、店主に尋ねる。
「どこかで魔法を学べる場所か本はないか?」
「ガハハ! お前さんまだ冒険者なり立ての見習いか! そういやぁ、最初に来た時気絶してるところを運ばれてきたもんな!」
店主は豪快に笑いながら、手でこちらの肩を叩きながら喋る。
「まぁ、見習いと言えばそうなるな。何処か心当たりはあるかい?」
「あぁ! 店を出て右にしばらく行く、街の中心の噴水があるのはもうわかるな? 噴水からギルドの方を見ると北だ! そんで東の方に進めば商店街がある! そこに本屋があるはずだ! あとは情報が欲しいなら噴水から西にある酒場に行ってみれば誰か教えてくれるかもな!」
街の構造は中心に噴水があり、北の方に進むと街で一番大きな建物のギルド。東には商店街が広がり、西は酒場や、ちょっとしたスラム街の様になっている。南は宿屋などが軒を連ねていて、冒険者などがよく利用する場所らしい。ギルド行く迄に、レーミアから聞いた受け売りだ。
「おう。ありがとなオヤジ」
出ていこうとした俺に、オヤジが話しかけてくる。
「ところでおめぇさん、金は持ってるのか? 本は高いしよぉ、酒場行って魔法を教えてくれる奴がいても、ただじゃなにも教えてくれねぇぞ?」
オヤジにそう言われ、袋の中身を受付台の上に出してみる。
「銀貨2枚、銅貨30枚、小銅貨40枚か……。これじゃあちぃっと厳しいかもしれねぇな」
貨幣の価値は、オヤジ曰く、白金貨、金貨、銀貨、銅貨、小銅貨があるらしい。滅多に見れなく、普段使わない物で白貨というのもあるらしい。それぞれの価値が、銅貨は小銅貨100枚分。銀貨は銅貨100枚分。金貨が銀貨100枚分。白金貨が金貨100枚分。白貨が白金貨100枚分らしい。貨幣の単位がエフラというらしく、俺の所持金は23040エフラ。本は貴重らしく、1冊買うのに最低10万エフラ。銀貨10枚は必要だそうだ。
魔法を教えてくれる人を見つけたとしても、本と同じ位の金額は取られるらしい。
「こりゃ参ったな……」
何をするにしてもお金が必要なこともわかったが、俺が金を殆ど持っていないこともわかった。
そもそも、今持っている金に関しても、レーミアが俺が気絶している時にゴブリンのドロップ品を回収して売った金額だ。
「まずは自分で稼ぐところから始めて、それから魔法を覚えないとしょうがないな」
「ガハハ! お前さんにいい話でもしてやるか! もしもこの先、この街にいる間ウチの宿を使ってくれるってんなら人を紹介しようじゃないか!」
悩み始めたところで、オヤジが急に提案をしてくる。
「それはいい話なんだが、ここの宿の料金を俺はまだ知らないんだ。いくらなんだ?」
「ウチの料金は大分良心的だぞ! 3食付きで一泊一人1000エフラだ! 近所の宿も安いとこは安いが、3食付きで1000エフラで提供してるのはウチだけだな! だからレーミアもウチを贔屓してくれてるんだ!」
言われてみれば、ここはレーミアが連れてきた宿だ。冒険者が使う宿が、冒険者の使いづらい宿な筈がない。
「じゃあオヤジ。俺の手持ちで、今いる人間も考えると7泊がいいとこだ。今後稼いで、まだ泊まれる期間が伸びるかどうかわからないが、それでも信用してくれるならオヤジの条件飲もう」
「ガハハ! わけぇやつがそんな小さい事言ってどうする! 一年ぐらい泊まっても余裕なぐらい稼いで贔屓にしてくれりゃいいさ!」
そういいながら、オヤジは紹介状みたいなものを書いている。なんていいオヤジだ。
「これを持って、酒場の奥にあるスラム街に住んでる【フィリス】っつう奴の家に行きな! 道がわからなきゃそのへんにいる奴に聞けば直ぐに教えてくれるさ!」
「ありがとな、オヤジ。じゃあ、ちょっと行ってくるから。レーミア達が起きたら、そのまま伝えといてくれ」
そうこう話してるとチビもいつの間にか近くにいた。
「グギュ!」
おいてかないで! って言うように頭の上にポンッと乗っかる。甘えん坊なやつだ。可愛い。
「可愛いペット連れてるな! 気を付けて行ってきな!」
豪快に笑いながら見送って来たオヤジに感謝して宿から出発し、フィリスという人物の家を探しに街へと歩き出した。
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