1-5 検査結果は異常な①
チートの片鱗を少し発揮します
「いらっしゃいませ。ご用件はなんでしょうか?」
受付の綺麗なお姉さんが聞いてくる。
「お姉さんの名前を……、じゃない。ギルドに登録したいんだが」
クスッと笑うと笑顔で答えてくれる。
「私の名前はシアラですよ。駆け出しくん♪ 登録ですね?こちらの申請用紙に記入事項を書いてからまた来てください」
一瞬、周りの男たちから殺気のようなものを感じたが、この笑顔をもらうためなら、なんてことはない……。って、おれは何を考えているんだ。後ろから、レーミアのニヤニヤした視線を感じたが、気のせいということにしておこう。
なぜか、レリーが少しむくれている。
取敢えず、申請用紙に記入することにした。
名前 京
年齢 24
使用武器 素手…?
魔法属性 空白
魔力量 空白
「魔法属性? 魔力量? なんだこれは」
受付に再度尋ねる。
「こちらは空白で構いませんよ。検査の後に自動で記入されますので。申請用紙は預かりますね」
申請用紙を渡して、検査開始まで少し待つように言われる。
「魔法か……。そういえば、ゴブリンを倒してからステータスを見ていなかったな」
ふと思い、頭の中に浮かべる。
京 24歳 人間
職業 【格闘家lv22】【調教師lv13】【勇者lv1】【神lv1】
装備
身体 布の服
――なんだこの職業は……。
成長早いというか、早すぎるのはまだ譲ろう。勇者という職業に関しても、まだ百歩譲ろう。なんだこの……。【神】っていうのは……。
職業の取得条件を検証してみないことには始まらないか……。
なんにせよ、このあとの検査が第一だな。
そう思い、考える事をやめた。
「京さん。検査の準備が出来ましたよ。奥にある部屋へどうぞ」
シアラさんから声をかけられ、奥の部屋へと向かう。
「お前さんが今回の検査対象者か?」
ホビットの様な、小さいお爺さんがそこにはいた。
「あぁ、間違いない。何をすればいいんだ?」
「まずは、そこにある水晶に両手を当ててみてくれぃ」
言われた通り両手を水晶に当てる。
「それで、水晶に対して念じて見るのじゃ。それの出た色で属性の適正がわかるんじゃ」
水晶に対して念じる……。なんとなくでしかわからないが、身体から水晶に何かを吸い取られてる気がする。
ほんの少しして、水晶が輝き始めた。
単純に起こった結果を言おう。光るには光った。それは間違いない。だが色が……。
「なーにが起こっとるんじゃ! なんじゃ! この変化は!」
それは虹色に光っているが、虹には本来入らない色。白と黒も混ざっている。
信じられない光景なのか、お爺さんは空いた口がふさがらない状態になっている。
「綺麗な色だな」
俺の一言に対して、お爺さんが呟くように告げてくる。
「信じられん話じゃが……、お前さんは魔法属性の適応が……。全て備わっとる」
すごいことの様に言ってるので、おそらく凄いのだろう。その程度の感想しか、何も知らない俺には出てこない。
「だとしたら、どうなるんだ?」
神妙な面持ちで、お爺さんは告げてくる。
「長いこと、ギルドマスターとして色々な奴を検査してきたが、こんな事例みたことないわい」
このお爺さんはギルドマスターなのか。
「何か問題でもあるのか?」
顎髭を触りながら考え事をしているようだ。
「問題と言えば問題じゃが、問題ないと言えば問題ではない。お主が、何やら特別な存在すぎる。というだけじゃ。」
「そうか。特に問題でもないなら、次の検査を早く済ませてしまいたいのだが、良いか?連れを待たせているもんでな。」
「まずはそうじゃな。次の検査に移るかのぅ。」
部屋の奥の方にある、周りに大きめの水晶が10個程置かれた、何かの装置の前に呼ばれる。
「次はこっちの装置に両手をついて念じてくれ」
「今度はどんな検査なんだ?」
「行うのは魔力量の検査じゃ。街で使われとる魔力を蓄える装置に魔力を流し込んでもらうのじゃ。魔力の有効活用も兼ねての検査じゃの。ふぉっふぉっ」
「ふむ。取敢えず、さっきと同じように念じれば良いんだな?」
「そうじゃ。限界を感じたら装置が勝手に止まるからの。魔力が枯渇すると命に関わるからのぅ」
両手を装置に乗せ、先程と同じように念じる。装置周辺にあったクリスタルの様なものが、どんどん発光していく。――最後、さりげなく死ぬって言わなかったか?
長くなりすぎたので分けます
次の話にそのままくっつくので違和感を感じるかもしれませんがご容赦ください