1-4 冒険者ギルド
そこは、酒場のような活気のある場所。
椅子に座りながら雑談をしている者。掲示板の様なところで悩んでいる者。受付に列を作り、順番待ちをする者。
中には、声を荒げて喧嘩をしている者等。
「凄い活気だな。ここにいる連中は皆冒険者なのか?」
「殆どそうだね。あとは依頼をするのに受付に並んでる人と、冒険者ギルドの職員達ってなところか」
レーミアと会話していると、一人の少年が寄って来た。
「マザー!」
少年はレーミアに抱きついた。
「マザー? レーミアは母親だったのか?」
見た目は、若い女の傭兵の様なレーミア。多少口の荒っぽさはあるが、よく見ると体は鍛えられていて引き締まっており、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいる。スタイルもよく、顔立ちも整っていて、美女と言える女性だ。旦那の一人居てもおかしくないだろう。
「何言ってるのさ。あたしはまだ子供も旦那もいないよ。このギルドにいる若いのを指導したり、面倒みてやったりしてる内にそういう呼び名が付いちまっただけさ。」
そう言いながら少年の頭を撫でている。母親にしか見えん。
「レリー! 依頼はどうしたんだい? 今日は街の外の巡回の依頼だったはずだろう?」
レリーと呼ばれた少年。中性的な顔立ちに、小柄な小動物のような見た目は、母性本能くすぐる様な見た目だ。俺の目から見ても可愛いと思う。
「マザー、あのね、ゴブリンの巣が発見されたって報告があったから、巡回依頼が途中でキャンセルになったんだ。それで違う依頼が無いかギルドに戻ってきて見てたの」
「ゴブリンの巣だって!? 一体そんなのがどこに出来てたんだい!?」
驚いた表情を浮かべ、レーミアはレリーの両肩を掴み声荒げて尋ねた。
「マザー怖いよぅ……」
ハッ。と、我に返ったようで、レリーの頭を撫でて謝っている。あんな剣幕で聞けば誰だって驚く。
「レリー、驚かせてごめんね……。それで、巣はどこに出来たんだい?」
「えっとね、森に入って直ぐのところに50匹位の巣が出来てたらしくて、Cランク依頼で昼前に追加されたみたいだよ」
レリーは直ぐに持ち直したみたいだ。流石マザー。
本来、ゴブリンの討伐ランクはEだ。それが巣という集団になってしまうと、ランクは一気に上がってしまう。今回は50匹ほどの巣でCランクだが、これが100や200となるとランクは更に上がり、BやAの依頼となる。それだけゴブリンの巣というのは危険なものなのだ。
「街に近い場所に巣ができるなんて珍しいことだね……。それで、その依頼があった割には誰もその巣を殲滅には行ってないのかい?」
「ううん。巣が発見されたのが朝なんだけど、依頼が発行されたのが昼前で、討伐に向かった人たちもいるんだけど、巣はあってもゴブリン達がいなかったみたいで、依頼がキャンセルになってたんだ」
そう答えるレリーをみながら、レーミアは何か思いついたのか、俺の方へと向き直し、質問をしてきた。
「そういえば京。あなたの前にゴブリン達の大群が現れなかったかい?」
「いたぞ。丁度、今言ってた50匹位の数が出てきたから、チビと一緒に倒した」
淡々と答える俺を見て驚愕の表情を浮かべ、レーミアは再度尋ねてくる。
「少数に襲われて気を失ったあんたをチビちゃんがずっと守ってた。とかじゃなかったのかい!? だったら、あんたはなんで気絶して倒れてたんだい! そもそも、あんた武器なんて持ってなかったじゃないか!」
鼻息を荒くしながら、レーミアは俺に質問攻めをしてくる。
「俺は倒し終わってから急に苦しくなって、それで倒れて……。そういえば、なんで倒れたんだ?」
呆れた表情を浮かべながら、レーミアは深いため息をつく。
隣で話を聞いていたレリーは、目を輝かせながら急に俺の手を掴んだ。手繋がれてばかりだな。
「お兄ちゃん凄いんだね! どうやって倒したの!?」
周りに居た女性達からハァ……。っと、レリーを見つめながら熱の篭ったため息が聞こえたのは気のせいだろう。きっとそうだ。
「素手で殴り倒したのと、チビが火を吹いて倒したな」
「「えっ!?」」
驚くのも無理は無い。
子竜の火はまだしも、Cランクの討伐依頼となるような数を素手で倒したのだ。
どれだけ常識からかけ離れている行動を取っているのか、京は気づいていない。
「えっと……。チビちゃんが大体倒して、京が少し倒したのよね?」
希望的観測を含む表情を浮かべ、京へと尋ねる。
「いや、大体俺だ。途中、チビの火に巻き込まれそうになったから、チビはあまり手を出してない。」
「「……。」」
再度の沈黙が、場に流れる。
「取敢えず、ギルドカード発行してしまいましょうか! それのために来たんだものね!」
「お兄ちゃんまだギルドに登録してない人なの!?」
レリーは、驚きと感激のし過ぎで、両手を胸の前で組み、羨望の眼差しを送っている。
「ハァン……。もう……、ダメ……。」
パタッ
近くにいた女性達が数人、レリーを見つめながら顔を紅潮させ、色艶のある声を出して倒れた様に見えた。多分病気なのだろう。きっとそうだ。そう思うことにしよう。
「話もいいんだが、取敢えず登録を済まさせて欲しい。受付に言えば良いんだな?」
「えぇ。受付の人に登録の申請用紙をもらって、そこに必要事項を記入して、あとは簡単な検査ね」
「検査は何をするんだ?」
「詳しいことは受付に聞いて頂戴。そっちのほうが早いわ」
「ん……、わかった。行ってくる。チビも大人しくしてるんだぞ」
「ギュン♪」
京は受付へと向かった。
新キャラを出したりなんだったりしてたらいつの間にか受付行く前に結構な文章の長さに・・・w
女性に対する兵器の様なレリー君の登場でした
もっと文章能力が欲しい…