1-3 東の街 イスタリア
目が覚めると、ベッドの上に寝かされていた。
「どこだここは……。俺は一体どうしたんだ……」
「やっと目覚めたかい?」
となりから不意に声をかけられ、身構える。
「誰だお前は。ここはどこだ。」
むっとした顔になり、俺の両頬を引っ張りながら、目の前の人物が口を開く。
「助けてやった恩人に随分な挨拶だ……ね!」
「ぶあぁああぁあぁ!」
頬の痛みに耐えかね、言葉にならない悲鳴をあげ、少し涙目になる。
「あんたは森に入って直ぐのところで倒れてたのさ。それをアタシが助けてやったんだよ」
「ギュッ!」
チビもそこにはいた。
わかった?っていうような顔を浮かべ、小さな手や足を使いペチペチしてくる。
「それよりあんた、ゴブリンにでも襲われたのかい? まぁ、倒されたあとみたいだったから、この子がやったのだろうけど……」
そういうと、おもむろに袋を渡してきた。
「其処ら中にドロップしたものが落ちててさ、あんまりに多いから換金しちゃったんだけどね。あんたの宿代もそこから出てるからさ。納得しなよ」
見てみると、貨幣のようなものが袋には詰まっていた。
「助けてくれたことにはお礼を言わせてもらう。ありがとう。それと、まだ名前を聞いてなかったな。」
「名前を聞くときはまず自分から言うもんさ。まぁ、そんなのアタシは気にしないけどね。アタシは【レーミア】あんたの名前は?」
「俺の名前は【京】だ。そしてそっちの竜は【チビ】、よろしくな」
「ギュッ♪」
ウンウン。と、頷いてチビの頭を撫でるレーミア。
「ところで、あんた何処から来たんだい? 見たところ冒険者じゃなさそうだけど……」
あれ? 俺、何処から来たんだ? 思考を巡らしてみるが何も浮かばない。
「俺は何処から来たんだ?」
そう漏らすと、レーミアが心配そうな顔で、こちらを見つめてくる。
「あんた記憶喪失かい? まぁ、なにか怖い目にでも合って倒れてたんだから、それもあるかもしれないけど……。ギルドカードは持ってないのかい?」
「ギルドカード? なんだそれ?」
疑問を浮かべた表情で、レーミアに尋ねる。
「はぁ……。一体どこまで記憶無くしてるんだい? ギルドカードと言えば身分証明のようなものじゃないか」
「身分証明か……。それは直ぐに発行できるのか?」
「そんなの、冒険者ギルドの受付に言って発行してもらうだけさ。記入事項を書いて、簡単な検査をして……。って、受付に聞いた方が早いね。行くよ!」
「いきなりか!? 俺起きたばっかりなんだが……」
「男ならそんな小さい事気にしてんじゃないよ! 行くよ! っと、その前に……。チビちゃん、これ付けな。」
チビにポイッと渡されたのは首輪だった。
「街中に歩くのに、使役された魔物と、そうでないものを区分けするために付けるのさ。街に入るときはアタシが一緒だったからどうにかなったけど。本来付けなきゃいけないもんさ」
チビは首を前に差し出している。本当に頭の良い竜だ。
「これでよし……っと。それじゃあ、冒険者ギルド行くよ!」
宿から出て街を進んでいく。
レーミアが言うにここは、東の街【イスタリア】と言うらしい。
街はそこそこの規模のようだ。人や馬車が常に往来していて、活気にあふれている。
「何から何まですまんな。助かる。だから、俺の手を引っ張るのをやめてくれないか? ちゃんとついていくから」
流石に大の大人が手を引かれて歩くわけにはいくまい。彼女でも嫁でもないんだ。
「照れちゃってるのかい? あんたが道に迷わないように引っ張ってやってるんだ。大人しくついてくる!」
俺の言葉を無視して、どんどん前を進んでいく。お節介焼きなタイプだな、こいつ。
そんな中を進んでいくと、辺りと比べ、一際大きな建物が見えてきた。
「ここが冒険者ギルドだよ」
冒険者ギルドに俺たちは足を踏み入れた。