1-1 成長力
光に包まれ、意識を取り戻した時には、夢の中で見ていた、あの草原の中にいた。
「なんだここは……。というか、なんでこんなところにいるんだ?」
色々頭で整理してみる。
俺は、ゲームを始めようとして、キャラクターを作り、ゲームを開始したはず。
そして今、俺がいる場所はパソコンの前では無く、夢の中でいたような草原。
格好も気づけば、ゲームで初期装備として使われてそうな、最弱の装備をしている。
ふと考えていると、頭の中に画面が現れた。
ステータス
京 24歳 人間
職業
装備
身体 布の服
どうやら、職業にまだついてない状態。
装備は何もないと表示されないようだ。
ステータスも数値で表されたりしないのか?
疑問点が増えてゆく。
「そういえば、ここにはゲームを始めてから来たのか。ボーナスポイントで成長力がどうとか言ってたな」
柔軟性が高いのか、お気楽なのか、自分が違う世界に来たことについては、気にしていないようだ。
「考えてもしょうがない。わかるまで保留にして、取敢えずなにかしてみないとな。」
自分にそう言い聞かせる。
「RPGの定番で、まずは町探しに行くか」
街の方角もわからないしどうしたもんか……。
早くもまた悩む京。ただ適当な人間というだけじゃないだろうか。
そこへ空から黒い影が。
「ぐがああああああ!」
夢の中の龍。
それを思い出させる咆哮が聞こえた。
京は直様その声のする方へと振り返る。
「なっ……」
言葉を失うような存在が目の前にはいた。
「ぐがああああああ!」
「五月蝿い!」
バチッ!と、ツッコミが目の前にいた小さな子竜にかまされた。
「ギュウ……」
涙目になりながら、子竜は京を睨む。
「焦って損したな……。それにしても、子供とはいえ竜がそんな弱っちくていいのか?」
やっぱり変なゲームだと思う京。そもそも、ここがまだ完全にゲームの世界だとは信じきれてはいない。
しかし、今のツッコミを入れた時に感じた手の感触は、紛れもない本物だ。
頭の中に、先ほどのステータス画面のようなものが出てきた。
ステータス
京 24歳 人間
職業 【格闘家lv2】【調教師lv2】
装備
身体 布の服
「職業がなんかついてるな。それにしても、まだ倒してもいないのに2つも職業が出てきて、lvも2って……」
変だな。そう思っていた京の前に、先ほどの子竜がパタパタ飛んでいる。
「ギュンっ!」
何やら、某ゲームの【仲間になりたそうにこちらを見ている……】あれが連想された。
「お前言葉わかるのか?」
コクッと頷く子竜。
「俺に付いてくるか?」
「グギュ♪」
嬉しそうに身体をこすりつけてくる子竜
「名前はやっぱりあったほうがいいよなぁ。」
子竜はワクワクしたような目線を向けてくる。
子竜の姿を見ると、赤い鱗に小さな身体で、翼もまだ身体に比例して小さい。
「お前の名前は【チビ】だな!」
「ギュン♪」
気に入ったのか、チビは京にすりよる。
「よくわかんないうちに仲間は増えたけど、取敢えず町を探さないとな。チビは街の方角わかるか?」
「グギュッ!」
自信満々に胸を貼っているような素振りを見せて空を飛ぶと、東の方角へゆっくり飛んでいる。
おそらく、ついてこい!ということだろう。
京は意識していないかもしれないが、重要な事を見逃している。
職業の成長や、仲間にしてしまったのもそうだが、一度のツッコミという、ただ叩いただけで、竜にダメージが通る訳ないのだ。
仮にも、竜というのは子供であろうと、硬い鱗に覆われており、鉄などよりは遥かに硬いものなのだ。
そして、某ゲーム通りにいくと、倒してから起き上がり、仲間になろうとする。
まとめると、子竜を一撃で素手で倒し、仲間にすることに成功したということになる。
スタート時のボーナスポイントによるステータス。
数値には表されていなくとも、間違いなく何か身体に作用されているはずなのだ。
本人は未だ何もわからず、呑気にチビに案内してもらい、街へ向かおうとしている。
それが、どれほどのことかも知らずに。
次回、異世界での初めての街です。
チビの詳細についてはおいおい。