1-12 初の依頼は君に決めた
説明の多い回になってしまいました。
白い光が部屋の中へと差し込む、外からは早い時間ながらも人が動きだす音が聞こえてくる。
鳥の囀りが耳に心地良く響き、閉じようとする瞼を開かせようと顔にペチペチと……。
ペチペチ?うっすらと瞼を開けると、俺の顔を必死に叩きながら起こしてくるチビの姿が目に入った。
「チビ……、起きるから叩かないでくれ……」
「ギュン!」
チビは尚もペチペチと叩いてくる。ダメだ。早く起きよう。
俺は身体を起こして腕を目一杯伸ばす。気持ちのいい朝だ。こんな日はもう一眠りしたくなる……、ペチペチとまだ叩いてくるチビ。わかったわかった。起きればいいんだろう。
脚をベッドからおろして床へとつかせる。
「んっ――、はぁっ、よく寝た」
今度こそ目が冴えた。目の前には桶と、タオルというよりは布の様なものが置いてある。
これで顔を洗えってことかな。恐らく外にも井戸か何かがあるのだろうが、寝起きで直ぐにはやはり動く気がしない。
「ウォーターボール」
桶に丁度収まる位の水球を出して桶に落とす。
そこへ、先に起きていたレーミアが部屋に戻ってきた。
「京! いつまで寝てんだい! 食事の準備終わって待ってんだよ――、なんだい、起きてたのかい。それにしてもいつの間に井戸に行ったんだい? 外に出るとこなんて見てないけど」
「魔法で水を桶に入れただけだぞ」
「あんたいつの間に魔法を……。ってもう驚き慣れちゃったよ。あんただったら覚えてても不思議じゃない。はい! 早く顔洗っちゃって! せっかくの食事が冷めちゃうじゃないか」
レーミアはこちらを急かした後、そのまま部屋を出て食堂の方へと向かった。
俺も早くしようと、絞った布でパッと顔を洗う。さっきから、チビが何度も起こしてきたのは、食事が早く食べたかったからか?
チビの方を見ると、お腹すいたよーと、訴えかけるようにお腹を押さえている。まず間違いなさそうだ。
「よし。チビ、ご飯食べに行くか」
「ギュン♪」
おいチビ、もうよだれが垂れてるぞ。
食堂にチビと向かうと、レーミアとオヤジが待っていた。
「おい! 飯はあったけぇ時がうめぇんだ! 次からもっと早く出てこいよ! 俺もどうせなら、まずい飯よりうめぇ飯食ってもらいてぇからよ!」
朝早いにも関わらず「ガハハハ!」と元気な笑い声をあげるオヤジ。次からは出来立て直ぐに来るとするか。
「待たせたみたいで悪いな。早速いただこう」
「うんうん」
「ギュン!」
長方形の大きなテーブルで、俺とレーミアが向かい合う様に椅子に座り、チビが上座で少し大きな子供用の椅子にチョコンっと乗っかる。チビにだけ前かけが用意されていた。
食卓には、まだ暖かいパン、何かの肉の1ポンドステーキ。それに、キノコ汁、野菜サラダの様なものが置かれている。
「随分うまそうで、バランスの良さそうな食事だな。誰が作っているんだ?」
身体の事を気遣ってくれているような栄養バランス、宿屋にはオヤジ以外に従業員でもいたかな?と、疑問に思い尋ねる。
「何言ってやがる! 作ったのは俺だ!」
「なっ……、似合わない……。」
つい、思ったことがそのまま口から滑ってしまった。
「ガハハハ! これでもな、昔は宿屋を開くか、食堂を開くか迷った位に自信はあるんだ!」
「ここのおじさんの食事すごい美味しいのよ。だからアタシもここを贔屓にしてるんだし」
「そういうこった! いいから冷める前に食え!」
二人に促され、まずは肉から口に運んでいく。
「なんだこれ……、塩加減や焼き加減が絶妙で……、肉汁も噛めば噛むほど溢れてくる……!」
俺は手が止まらなくなっていた。パンと肉を直ぐに平らげる。
「このキノコ汁も身体がぽたぽたとあったまって……、それに香りもいい」
キノコ汁もおかわりを2杯程もらって、次は野菜サラダだ。
「シャキシャキだな。それに鮮度がいいのか、噛んだ時に、野菜本来の甘みや旨みが口いっぱいに広がっていく」
野菜サラダも一気に完食して食事を終える。隣では、レーミアも食事を終えていて、チビは肉の味に満足そうに、量が物足りなそうにしている。――チビ、よだれが溢れているぞ。
「そんだけうまそうに食ってくれりゃ、作った方も気持ちがいいぜ! チビも足りないならまだ食うか?」
オヤジから出された肉に、チビは目を輝かせている。
チビがガツガツと食べている横で、俺はレーミアと、今日の予定について話しをすることにした。
「レーミア。冒険者ギルドに行って、どんな依頼を受けるんだ?」
口元をナプキンで吹いてから、レーミアはこちらを向いた。
「話しで聞いたのと、あんたのギルドカードを見ての判断なら討伐依頼だね」
「討伐っていうと何を狩るんだ?」
「取敢えずは、ランクEで指定されている魔物の討伐だね。報酬は低いが、冒険者なり立てだと、ギルドに認められてランクを上げてかないと、ランクの高い魔物の討伐依頼は受けれないのさ」
「どうやったらランクは上がるんだ?」
「まずは数をこなすことだね。ギルドがそれを見て判断して、次のランクの依頼を受けても問題無しとなれば以来完了の報告時にギルドカードを求められるから、それで更新を済ませるとランクは上がるのさ。ちなみに、あたしはランクBだよ」
「レーミアも若いのに、結構ランク高いんだな」
「あたしなんてまだまださ。それにね、Bから上のランクにいくのに壁があるって言われててね、それを超えて初めて、一人前の冒険者を名乗れるのさ」
「よし、取敢えずは行動あるのみでランク上げだな」
「そうね」
「ギュン!」
チビも食事を終えて、がんばろう!と言うように右手を上げている。顔中を汚しながら。
宿から出て、俺たちは冒険者ギルドに着いた。
中は相変わらず賑やかで、活気にあふれている。
俺はレーミアとチビを入口傍にある椅子で待たせ、受付へと向かい、見知った顔を発見した。
「シアラさん、依頼を受けにきましたよ」
「まぁ、京様ようこそ。本日はどの依頼をお受けになられますか?」
「今のランクで受けられる討伐依頼を受けたいのだが」
シアラさんは俺の言葉を聞き、書類の束をパラパラっと確認し始めた。何枚かをリストアップされたのか、束から抜き出していく。
「ランクEですと、こちらの5種類の魔物の討伐がございますね」
そう言って見せてきた書類に目を通す。
討伐対象の魔物は【ゴブリン】【スライム】【ソードラビット】【サーチバット】【ファングワーム】。
それぞれの特徴が記載されていた。
ゴブリン――人より小さく凶暴性があり、武器を用いて攻撃してくる。繁殖力に富んでおり、女性をさらうことがある。モンスターランクE。
スライム――粘液で構成された魔物。中心にコアと呼ばれるものがあり、それが粘液に知覚の機能をもたらしていると考えられている。攻撃方法は体当たり。モンスターランクE。
ソードラビット――頭に剣の様な角を生やしている莵の魔物。角を突きつけるように突進してくる。直線的な動きが多い。モンスターランクE
サーチバット――相手の能力を見る能力を持ったコウモリの魔物。噛み付いてくる攻撃をしてくる。暗闇でも正確な攻撃をしてくるので注意。モンスターランクE
ファングワーム――鋭い牙を持つ芋虫の魔物。動きは遅く噛み付く意外の攻撃はしてこない。ただし、牙は岩をも噛み砕くので油断は禁物。モンスターランクE
「なるほどね、シアラさん、全部受けます。」
「かしこまりました。こちらは自由討伐対象となっておりますので期限などはございません。報酬は一匹に付き一律100エフラとなっております」
「了解した。それじゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ。ご無事に仕事を終えられること祈っておりますわ♪」
受付を離れ、レーミアとチビの元へ戻る。
「待たせたな。依頼が決まったから早速狩りにいこうか」
「何受けたんだい?」
俺は自由討伐の5種類を全て受けたということを伝えた。
「無難なところだね。じゃあ西の森に行くとするかい」
「ギュン♪」
チビもやる気満々というように、尻尾で攻撃に素振りをしてみせる。
俺たちは西の森へと向かった。




