1-11 魔法の属性と魔力量の比較
少し長めに文章を作ってみました。
お話のみの回です。
宿に戻った俺は、オヤジさんの親バカ話に付き合わされることになる。
「ガハハ! どうだった! 俺の娘は美人だったろう!」
血の繋がりを感じないくらい美人だったよ。世話になったから、そんなことは口に出せるはずがないが。
「あぁ。かなりの美人だった。百年後に口説かせてもらうよ」
「あ? なんで百年後なんだ? それはそうと、口説くなら俺を倒してからにしやがれ!」
完全に親バカだな。百年後にオヤジ死んでるだろうに。先にそこ突っ込めよ。
「オヤジ、やめておけ。けが人が出るぞ」
「なんだ! 俺に勝てるつもりか! ガハハ! ひよっこが言うようになったじゃねぇか!」
「けが人は俺だ」
――。しまった。滑った。某ゴム人間マンガネタはわかるやつにしかわからないか。
「――お前変な奴だな」
「オヤジの親バカ振り見てると勝てる気がしない。死んでも襲ってきそうだ」
「娘を守るためならアンデッドだろうとリッチだろうとなってやるさ! ガハハ!」
本物の親バカ発言きたなこれ……。まぁ、あれだけ美人な娘なら気持ちもわからなくはない。
「あぁ。オヤジには勝てそうにないよ。」
両手をあげて降参の意志表示をする。
「なんだと! 俺の娘を見てその程度の感情しかわかねぇってのか! 男なら命かけてみろってんだ!」
やばい。オヤジの面倒臭いスイッチに触れたらしい。顔真っ赤にして本気で怒り出す手前みたいだ。すごい面倒臭い。とっとと部屋で休みたいんだがどうにか出来ないもんか……。
「いや、こんなにも娘を愛してるオヤジと争っても娘が悲しむだけだろう。そんな悲しむ顔を見たくないから、オヤジに勝負も挑めないし勝てもしないってことだ」
「……! ガハハハ! お前気に入ったぜ! 明日の朝飯は期待してろ! とびっきりのご馳走用意しておいてやる!」
――父と娘の相思相愛ベタ褒め作戦成功だ。あのまま絡んでも厄介になるだけだしな。機嫌直してくれてよかった。
「俺は休むから、明日の食事楽しみにしておくことにするよ。オヤジ、今日はありがとな」
「おう! ゆっくり休めよ!」
俺は部屋へと戻った。
「ん。もう大丈夫なのか?」
部屋に入った俺に、レーミアとレリーがベッドから起きて話をしてるのが映った。二人は俺が部屋に入るのを見ると、こちらに振り返り「あぁ、もう大丈夫さ」「うん。なんともないよ」と返答してきた。
「急に倒れるから焦ったぞ。驚くにしても限度があるだろう」
淡々とそう述べると、レーミアは苦笑いしたような顔になった。
「その限度を超えるものを見せられりゃねぇ……。起きてからもレリーとその事で話してたんだけどね、未だに信じられないよ。ただの見間違えだったんじゃないか、ってね」
「でもマザー。お兄ちゃんが帰ってきたんだし、確かめればわかることじゃない。僕は見間違えじゃないって信じてるよ!」
どうやら二人とも、ギルドカードに記載された内容について話し合ってたらしい。レーミアは嘘だと信じたい。レリーは事実だったと信じたい。そこで二人は、俺が帰ってくるのを待って、もう一度確認しようとしてたらしい。
「確認したかったのはこれか?」
そう言って、ギルドカードを取り出してレーミアとレリーに渡す。
確認を終えたのか、レーミアはやはり信じられないとばかりに表情を曇らせ頭を抱えている。一方で、レリーは「ほら! やっぱり見間違えじゃなかったんだ!」と、喜びに溢れた笑顔で歓喜している。
「レーミア。俺のギルドカードに書かれている内容というのは、そんなにも通常からかけ離れているのか?」
未だ困惑しているレーミアに俺は尋ねる。
「通常からかけ離れいるなんてもんじゃない……。常軌を逸しているよ。あんたもマスターからミカエル様や、サンタン様の話しは聞いただろう?」
「あぁ。今この世界で魔力量1位、2位の二人のことなら聞いたぞ」
「それじゃあ、あんたは今自分が何程の力を持っているのかわかっているのかい?」
「いや、比較対象がその二人だけしか聞いてないからな。基準がどれくらいなのかは知らない」
はぁ……。っと、深い溜息を吐いてレーミアが説明を始める。
どうやら魔力属性に関しては、一人に付き一つの属性が一般的で、2つの属性を操る、デュアルマジシャンと呼ばれる人で、宮廷魔術師への誘いが来る程。3つの属性を操る、トリプルマジシャンと呼ばれる者達は、少なからず歴史に名を連ねられたりする程。サンタンというものはこれらしい。この先は、歴史上2人しか確認されていないが、フォースマジシャンというのが存在していたらしい。現在はトリプルまでしかいない、と。
魔力量に関してだが、これは大体が先天的に持ち合わせているもので、後天的にも伸ばす方法はあるらしいが、長い年月を要するということだ。魔力量の例を上げると、一般人で大体10~100、魔法を主に使う者で50000~100000、宮廷魔術師で100000~500000、国の代表クラスの魔術師で2000000~4000000位だそうだ。
ミカエルやサンタンが一つの国の戦力に匹敵する魔力量と考えると、俺は世界の戦力を集めて漸く対等する魔力量らしい。説明を受け、比較対象がわかれば俺でもわかる。これは異常だと。
この説明を受けたあとだと、言わない方がいいこともある。俺は測定不能で、現状計測可能限界の数値を言われただけなのだと。
「レーミア、説明ありがとう。自分のことを少し理解できた気がする」
「少しは、こっちの驚いた理由も理解してくれたかい?」
レーミアの言葉に頷き、少し申し訳ない気持ちになる。
「そういえば、京は色々と常識を知らないみたいだから、一応忠告しておいてあげるよ」
何か俺しでかしたか?そういった考えが頭を過ぎるが、今はレーミアの言葉を聞いておくことにする。
「強いものというのはそれだけで、憧れや期待されることが多い。だが、それ以外にも嫉妬や妬みが多いのも事実だ。気をつけたほうがいい」
「ご尤もな意見だな」
「あんたに手を出そうとするものの方があたしは心配だけどね……」
呟く様にレーミアが何かを言ったが、俺は聞こえていないことにしておく。
レリーが何かを喋りたそうにこちらを見ている。何か言いたい。だけど言いづらい。しかし、言おうと口を開くところまでいく。だがやはり言葉が出てこない。そんな動作を繰り返していたレリーに、俺の方から訪ねてみることにした。
「レリーどうした? 何か言いたいことでもあるのか?」
レリーは何かの覚悟を決めたように、俺の目を見据えて答えた。
「お兄ちゃん! 僕を弟子にしてください!」
俺は……。目が点になった。いくら常識ハズレな魔力を持っていようとも、俺は冒険者になり立てであり、人にものを教える程の何かは持っていない。隣ではレリーの突然の発言に、レーミアも驚いているようだ。
俺も、少し考えて冷静になり、レリーに告げる。
「ダメだ」
「なんで!?」
見るからにガッカリしているレリーに対して、諭す様な口調で言い聞かせる。
「俺はまだ、人に教える程何ができるわけでもない。恐らく、俺よりもレリーの方が出来ることが沢山あるだろう。実際、ただ魔力量が多いだけの人間だしな」
「でも!」
「レリー、我が儘言うんじゃないの。京が困っているでしょう。あなたは、もっと身近な目標を見つけてがんばりなさい」
「ムー……」
レーミアの言葉を聞き、レリーがむくれた様な表情になる。
「じゃあお兄ちゃん! 友達なってよ!」
またしても、虚をつかれたような表情になってしまう。だが、さっきまでとは違い、笑顔を浮かべながらレリーを見て、右手を差し出す。
「あぁ。レリー、宜しくな。」
レリーもまた、笑顔になり右手を握り返してくる。
「ウン! 京兄よろしく!」
「京兄?」
「友達になったら、兄ちゃんより名前も入れて呼んだ方がいいでしょ?」
レリーは唇を尖らせて人差し指で抑え、首をかしげるようにして俺を見る。なんか一瞬、襲ってしまいたい衝動に駆られた。俺はそんな世界を開く気は無いが、レリーは見れば見るほど女の子に見えてしまう。女装したら完璧に間違える自信が、俺にはある。
「レリーが呼びたいように呼べばいいさ」
冷静を装って言葉を返す。顔のあたりが熱く感じるのは気のせいだろう。
「ウン! 僕、もうそろそろ家に帰らなきゃ! 家族が心配してるだろうしね! またね京兄! マザー!」
「あぁ、気を付けて帰れよ」
「レリー、またね」
レリーは部屋を出て自宅へと帰っていった。
「レリーはこの街で生まれ育ったのか?」
「えぇ、あの子はこの街の孤児院で拾われて育ったのさ。その恩返しに、危険な職業である冒険者になって、孤児院にお金を入れてるんだよ」
「まだ若いのに立派だな。――さて、俺は別の部屋を借りて寝るとするか。」
「なんだい、ベッドが二つあるんだ。この部屋で寝ればいいじゃないか」
確かに、部屋にはレーミアとレリーを寝かせる為、二人部屋を借りたのでベッドが二つある。
「おい、レーミア。俺だって男なんだ。少しは警戒したらどうなんだ?」
「あんたはあたしに手を出したりしないさ。それくらいわかるよ」
「なんの確信か知らんが、寝てる時急に襲いかかるかもしれんぞ?」
「その気があったら、気絶して宿に運んだ時にしてるさ。変に気も使わなくていいよ。あたしは自分の身は自分で守れる女さ」
「信用されてるってことにしておくか。それじゃあ、お言葉に甘えて寝るとするかな」
「そうしときな。あんたも色々疲れただろ?」
「あぁ、それと明日ギルドに付き合ってくれないか? まだ聞きたいことも多いし、金も稼がなきゃならんから、先輩の手をかしてくれ」
少しふざけた様な笑みを浮かべ、レーミアを先輩と呼びお願いをしてみる。
「変に先輩なんて呼ばないで、レーミアでいいよ。お願い位聞いてやるからもう寝な」
レーミアは、こういった対応に慣れているように笑いながら答えてくれた。
「ありがとう。それじゃ、また明日な」
「おやすみ」
部屋の明かりを消して、俺は眠りについた。チビがパタパタっと飛んできて俺の布団の上で丸まった。――完全に忘れていた……。
取敢えず、明日からギルドで初めての依頼を受ける。楽しみだ。
俺は暗闇へと、意識を落としていった。




