1-9 覚えた魔法は天を揺るがす
馬を走らせてしばらくたったころ、森の中で樹が全く生えていない場所を見つけ出し、フィリスが馬を静止させる。
「ここは、アタイが魔法の鍛錬をする時使う場所さ」
「何故ここらへんだけ樹が生えていないんだ?」と
「まぁ、直ぐにわかるさ」
馬を少し離れた場所に繋ぎ、フィリスは樹が生えてない場所の真ん中に立つ。
「危ないから少し離れてな」
樹の生えている場所と生えていない場所の境目位まで下がり様子を見る。
俺が離れたのを確認すると、フィリスの周りに靄の様なものが溢れてくる。
手を前へかざし何やら詠唱し始める。
「地と闇の精よ、力を貸与え、その力我に示せ【ポイズンボール】」
手の平から、スイカ位の大きさの紫色の珠の様なものが出てきて、一直線に放たれる。
遠く離れた樹に当たると、その樹は一瞬にして枯れ果て、消滅した。
「これが地と闇のデュアル魔法【毒】属性のランクEスキル【ポイズンボール】さ」
「魔法を初めて見るが……、すごいもんだな。これはどうやれば使えるんだ?」
「大事なのはイメージさ。あとは、それに注ぎ込む魔力量に応じて大きさを変える。だから、一番簡単な丸いイメージを頭に浮かべる【なんとかボール】っていうのが、ランクEの基礎スキルになってる」
「ということは、それぞれの属性の名前に【ボール】がついたものが基礎って訳だな?」
「そういうことだ。見るよりやってみろ。その方が覚えるのも早い」
フィリスのいた場所と入れ替わり、京もイメージをわかせて詠唱を紡ぐ。
「火の精よ、力を貸与え、その力を我に示せ【ファイヤーボール】」
詠唱を唱え終わると、大気が揺れ始める。
手の平には、先ほどのフィリスの魔法を遥かに凌ぐ大きさの球体が出来ていく。
次第に、球体の大きさは人を超え、馬を超え、木を超え、どんどん大きくなっていく。
「なっ!! 京!! 少しは制御ってもんができないのかい!」
大慌てで声を荒げて、フィリスは怒鳴る。
「そんなもんまだ出来るわけないだろうが!」
こちらも大声で怒鳴る。やれっていったのはフィリスだ。怒鳴りたくもなる。
「――まだでかくなるってのかい……。京! 手を空に向けな!」
そう言われやるが早い。
俺は直ぐに手を天に向ける。
球体の大きさは、既に小さな山等を凌ぐ大きさになってる。
「どうやったらこれは打てるんだ!」
焦りからか、魔法の熱からか、額に汗をかきながらフィリスに聞く。
「自分から離れるイメージ、解放をイメージすれば直ぐに離れる! これ以上でかくなる前に早く打ちな!」
俺は解放のイメージをして、その小さな擬似太陽の様になった【ランクE】のスキルを空へと放つ。
その太陽の様な【ファイヤーボール】は、天高く飛び去り、大気を揺るがしながら、その姿を消していく。
「はぁ……」
どっと疲れがたまったフィリスは、深いため息を吐き、馬によしかかる。
汗だくになりながら、安堵の表情を浮かべる京だが、疲れは感じてないのか、フィリスの傍まですぐに駆け寄る。
「俺は、もう少し説明をもらってから魔法を使ったほうが良さそうだな」
ハキハキと喋る京に対して、本日一番の鋭い目つきでフィリスは睨みつける。
「京……。あんた魔力量は異常だけど、制御ってもんがイメージで少しは出来ないもんかね。あんなもの人の近くで打ったら何人死ぬかわかったもんじゃない」
「済まなかった」
ばつが悪そうに苦笑いを浮かべながら答える。
「ところで、あんたの帽子、なんか動いてないかい?」
「帽子?」
京の頭の上でもぞっと何かが動いた
「ギュン!!」
少し涎を垂らして、目をこする仕草がとても可愛らしい子竜がそこにはいた。頼むから髪の毛によだれ垂らすなよ。
「チビ。お前ずっと寝てたのか?」
「ギュギュ~♪」
寝ちゃってた~テヘッ♪という音が、どこからか聞こえてきそうなチビの表情。ほんと可愛いなお前。
「な……。ドラゴンの幼生かい?」
驚きからなのか、チビを差した指がプルプル震えている。
「チビっていうんだ」
「ギュっ!」
胸を張るチビ。
「可愛いー!」
フィリスはガバっとチビを抱き寄せた。
「グギュー……」
どうやら、かなり強い力で抱き寄せてるらしい。チビめ、なんて羨ましい。
「意外と可愛い一面もあるんだな」
そう言って、にやけた表情でフィリスを見る。
「ハッ! ゴホン……」
顔を真っ赤にして、チビを離した後に咳払いをし、俺の方に向き直る。
「京。お前の制御の腕は壊滅的だ。だから、しばらくアタイが面倒みてやる。感謝しな」
「とか言ってチビに会いたいだけだろ?」
「ギュウー……」
チビは何やら怯えているようだ。
それから数時間。日が傾くまで魔法の制御の練習を済まし、帰り路につく。
「京。最初わざとやってたのかい。上達のスピードがいくらなんでも早すぎるよ」
何やら、恨めしそうにこちらを見ては、チビに視線がチラチラいっている。
「わざとやるわけないだろう。ただ慣れっていうのか? イメージがすぐに出来たんだ」
先ほど、天を揺るがす程の大魔法【ファイヤーボール】を使っていた京は、既に全属性のボールを習得し、制御に関しても数ミリ単位で調節ができる程上達していたのだった。
そういえば、ステータスの確認してなかったな。ちょっと見てみるか。
頭の中にステータスが現れる。
京 24歳 人間
職業 【格闘家lv22】【調教師lv20】【魔法使いlv30】【遊び人lv10】【勇者lv1】【神lv3】
装備
身体 布の服
調教師は馬に乗ったときか? それにしても、魔法使いが増えてるしlv上がりすぎだな……。遊び人も一体どこで……、神ってのも訳わからないし、何が基準で上がったんだ?
「どうした? 難しい顔をして」
「いや、なんでもない。考え事をしてただけだ」
「グギュ?」
チビもどうしたの? っていうように首をかしげる。
「取敢えず今日は疲れた。宿に戻ってゆっくり休むとしよう」
沈む夕日を背に、イスタリアの街へと帰っていった。
書いていて気づいたのですが戦闘シーンが全然ありませんね
成長させすぎて戦闘シーン行く頃にはなにやら詰みそうな予感が…
まずは魔法を覚えた京 どのようにシナリオは進んでいくんでしょうね
作者にもさっぱりわかりませんw




