騎士姫との契約
風邪をこじらせました。
冬の体調管理はきびしいです・・・
本編ではいよいよバトルの下ごしらえが出来始めました。
市場に行ってから3日がたった。
遂にオレたち3人の個人服が完成した。実に3人とも多種多様って感じだ。
照の服は一言でいうならオシャレな運動服って感じだ。青色の長ズボン、青と白のコントラストのTシャッツにちょっと暗い青のジャケット。
照曰く青が好きだそうだ。青一色ともいっていい服装だが不思議と単調な感じがしない。きっと同じ青でも色の濃さとかで感じ方が違うんだろうな。
ちなみにアクセサリーの類は首飾りがある。なんでもナズナさんにもらったとか。高級そうな宝石がくっついたシロモノである。
プレゼント……オレにとっては死語である。陰口を言う気にすらならない。
凍也は驚きの和服だ。白色の長着に黒色の袴。そこに漆黒と言うしかない羽織を着ていた。さらには帯まで緩めているそうだが、絞めていて、この前買った日本刀を2本と脇差しを帯刀である。
まさにTHE日本! な感じだが、周りの人からは奇異の目で見られていた。いやまぁ当然だが。
だが本人は全く気にして無さそうだった。凍也曰く、家ではいつもコレだったらしい。
さすが柳生。まさに日本の武士の鏡。でもまるで半分コスプレみたいなんでしばらくアイツを見ると笑いそうである(あの目で睨まれるのはカンベンなんで絶対にしないが)。
さて最後にオレである。オレは自慢じゃないがファッションセンスが0なので適当に選んでみた。
まず、下は黒色のジーンズである。ヨーロッパに近いこの世界ならすぐにあると思ったが、どうやらこの世界ではあまり流行ってないらしい。
上は白に赤のロゴが入ったTシャツ。文字が書いているがこの世界の文字は読めない。言葉が通じるのはやはり異世界召還した者の特権とかだろうか?
ちょっと防寒対策として黒を基調とした赤のラインが入ったカーディガンを着てみた。
我ながら良いデザインだと思うが、ジーンズはあまり周りの人(貴族)にはウケが良くないみたいだ。
いつかジーンズをこの世界で流行らしてみせる、と意義込むオレだった。
まぁオレたちの服装も決まったし、いままで以上に修行に励んで見せた。フランたちに勝てないのは相変わらずだが。
凍也は前の市場の一件以来、もとの世界に帰れる方法に悩んでいるみたいだった。
逆に照は吹っ切れるような顔をしていたが、内心ではやはり思うところはあるんだと思う。
オレは興味なんてどっちかっていうと買って来た銃の修理やビニール袋の活用について悩んでいる位だ。
そんなときだった。急に王様が俺たちの呼び出しをしたのだった。
「急に呼び出して済まない。今回の件で君たちに是非とも伝えたかったのでな。」
王様は開口一番で謝罪の言葉を伝えた。オレたちはいつも通りの王様に安心したが、それ以上に王様が呼び出させた理由が気になった。
「さっさと用件を言え。」
凍也が相変わらずの身分を考えない言葉をささっとだす。しかし王様は眉1つ動かさない。
臨機応変なのか、王様の威厳が弱いのか、オレには分からない。
「端的に言うと、王宮の宝物庫から『宝具』が出てきたのだ。」
宝具・・・それは俺たち英雄が使役する精霊の種類の1つ。
武具や道具などに精霊の力が取り憑き、強大な魔力を持つ道具。それが見つかったというのだ。
「どこにあるんだ、王様!」
「案ずるな。ここにある。」
そうやって出してきたモノは剣だった。鞘に仕舞われているが、細長い剣だということが分かる。まさに今にも折れそうと言うくらいに。
だが、注目すべきはそこでは無かった。装飾は金色で美しいと言わざるを得ないほど剣は金色で彩られていた。これでは武器というより骨董品だ。これはいったい……
「……サーベルか。」
凍也が平坦と、しかし凍也には珍しく苦々しく呟いていた。
えーっとサーベルって確か、西洋の剣の一種だよな。ええと、三銃士に出てくる剣士が使う細長い剣だったハズ。
「見た目は細いが力は絶大だ。さらには英雄しかこれは鞘から抜くことすら出来ないのじゃ!」
「マジで!じゃぁ俺は抜けるんですか?」
「当たり前じゃ。
しかしいくら英雄といえど精霊には契約出来る、出来ないが存在して、それを決めるのは精霊のほうじゃ。」
よ~し!オレは覚悟を決めサーベルを抜く事にした。
凍也は触ることすらイヤそうだった。サーベルは苦手なんだろうか?
照はずーっとサーベルに釘付けだったが、あっさりと一番手を譲ってくれた。
その内、貴族や王族(アリアもいる!)が集まってきた。ココで無様な姿を見せられねぇ! オレは勢いよく引き抜いた。
そのとき変化がおきた。抜かれた刀身はまるで電球のように光り輝いた。と思うと金色に輝いた刀身はオレをふっとばした。
その後まるで布キレみたいに、俺は10メートルぐらい先の場所まで飛んで大の字に倒れた。
一同は半分呆然、半分笑いを堪えるのに必死、少数は大丈夫ですかと駆け寄ってきた。
前にもこんな事あったなぁ。絶対こういうときって素直に笑われたほうが辛くないよね、と思ったオレだった。
凍也は頑なに引き抜くのを拒んだ。
「オレみたいに吹っ飛ばされるのが恐いのかよ?」
「安い挑発だな。俺はもし契約できてもあのサーベルを握りたくないってことだ。」
「ぐっ。つーかなんでだよ。豪華そうじゃん。アレ。」
「豪華そうだからだよ。武器に装飾は必要最低限で良い。なぜなら人殺し道具にカタチでけのキレイ事なんていらないからな。」
こいつは道具はあくまでも道具としかみていないんだな、このとき心底思ったモンだ。
その後は照が引き抜く事になった。
「いきます!!」
と勢い良く引き抜いて見せた。するとオレのときと同じ変化が起きた。刀身が金色に輝いたのだ。
また吹っ飛ばすのか、と思ったら金色の光は段々と小さくなり、剣をぼんやりと覆うだけになった。
すると剣が喋った。
「貴方の清く正しき心。しかと感じました。ここに貴方との契約を交わします。」
「はっ!?」
と照が驚く暇も無く、剣が霧のようになにかに包まれ始めた。
ここの解説はアリアがしてくれた。
「あの霧のようなモノは視覚化された魔力です。契約をした精霊は英雄の魔力を使い、実体化するのです。人間精霊の場合は生前の全盛期の姿になります。」
「ってことはあの霧が消えたら精霊の本当の姿が出てくるってコト、アリア?」
「概ねその通りです。」
アリアとオレの会話が終わる頃には、サーベルの精霊は実体化を果たしていた。
オレは開いた口が塞がらない状態になった。照も驚いているって顔を作っている。
それは騎士だった。まぁサーベルってことは西洋系の戦士、つまりは騎士と考えられるから、そこは驚きでは無い。
驚いたのは女ってコト。金髪碧眼の清楚という言葉を体現したかのような美しさを持つ女性騎士ってことだった。
周りの人間がほとんど驚いてる。それはそうだ。ただ女性騎士というのならそんなに驚かれないが、それが人類史に残る偉業を成し遂げた人物というのだから驚くにも無理は無い。
騎士はそんな中で照をから視線を外さなかった。不意に騎士は口を開いた。
「マスターよ。ここに契約は完了しました。私は貴方の剣となり、貴方を守り続け、貴方が敵と定めるものを斬ります。貴方の清く正しい心に忠誠をここにします。」
「あ・・・えっと、その・・・」
「マスターよ。なにか命令ですか。」
2人でなにかと忠誠の契りとかしてますけど、悪いけど邪魔するぜぇ!
「おい、どうしてオレと契約しなかった!」
「貴方からは下劣な心を感じました。よって私のマスターには相応しく無いと結論づけました。」
「なっ、下劣な心……」
けっこう効いた。美人な人に下劣とかいわれるとキツイ。
よくみるとこの騎士は少女だった。美しくてついつい年を上乗せしてしまうが、良くみると多少のあどけなさが残っている。少女の年のときに偉業を成し遂げたのだろうか? それはそれですごいことだが。
ふと照が切り出した。
「あ、あのさ」
「なんですか。マスター」
「そのマスターっていうのやめてくれない?あと敬語もやめて。僕には照っていう名前があるんだ。」
騎士は目を数回瞬きしたあと、とてもきれいな微笑を浮かべて
「ごめんなさい。主従関係しか分からなかったモノで。ではショウ。」
「あ、はい。」
「これよいですか?」
下劣とか言われたオレには絶対向けてくれないな。と言うぐらいの笑顔を見せた。
案の定、照は赤面している。オレはしょんぼりしていてなにも言う気になれなかった。もちろん美少女騎士に『下劣な心』と言われたからだ。
すると恥ずかしさから立ち直ったのか、照が喋り出した。
「貴方の名前は?」
「そうですね……精霊は人間精霊の場合、殆どが生前の記憶をなくしているのです。
だから……分かりません。ごめんなさい。」
「いいんです! そんなに落ち込まないでください。じゃぁ……貴方の呼び名を教えて下さい。」
少女の騎士は驚いた様だったが、すぐに羨望ともとれる笑顔を見せながら呟いた。
「……ではシャルルで。一番記憶に触れる名前です。」
「ではシャルル。僕と一緒にこの国を守ってくれますか?」
「はい、喜んで。」
光が窓から差し込み、幻想的な場を創り出していた。まさに絵になる一場面というところだろう。
2人で和気藹々としているから邪魔しないようにとこっそり抜け出すと、ナズナさんがめっちゃしょんぼりしていた。
直道 照。女を泣かす最低の男である。と胸に刻み込み戻ったら、凍也が王様になにやら話していた。
それが終わると、王様は大声で場にいる貴族に伝えた。
「精霊との契約を果たした英雄を祝う宴を開く!! 至急準備にあたれ!」
大急ぎで貴族たちは走り出していった。どうやら今夜はうるさくなりそうだった。
予想通りに宴会はとても騒がしいモノだった。
音楽が鳴り響き(音楽には疎いため、わかりませぇ~ん。それも中世のクラシックなんてなおさら)、
貴族たちは踊り出し(俺たち日本の男子高校生はダンスなんて踊ったことが一度もなかった)、
豪勢な食事が並んだ(これは唯一楽しめた。が、マナーがなってないとアリアに注意された)。
がしかし、それぞれ自由に遊んでたというわけではなさそうだった。
アリアやナズナさんといった王女たちはギザな男の貴族に誘われ踊っていた。
でもアリアは頑なに拒んでいた。その表情は辛そうだったが、オレはギザなヤローと踊られるを見てるよりは良かったと心の奥で思っていた。
照はシャルルと修行していたから遅れてきたが、来た途端貴族の女性に踊りを誘われていた。
まぁしょうがない。このパーティーはアイツのために開かれたのだから。でもナズナさんに誘われたときは他の貴族はとてもびっくりしていた。そりゃ一国の王女だからな。
照は困ったように俺たちに顔向けてくるが、俺を含め誰1人として助け船を出すヤツはいなかった。
オレはずーっと「リア充死ね!」と思っていたね。
フランたち王子たちも王女たちとやってること変わらなかったが、フランはローズさんに、ジャックさんはエメラルダさんにくっついていたことが多かった。もしかしてマザコンか?
凍也は来てからは喰うだけで、他に関心が無さそうだった。まぁほかにやっていることはいろんな貴族と話していたことぐらいだが。
オレはパーティー前に王様と凍也が話していたことが気になって、凍也に話しかけてみた。
「凍也。」
「なんだ、お前か。」
いちいちカンに障るヤツである。
「なんだはねぇだろ。ていうか王様となに話してたんだよ?」
「たいしたことじゃないぞ。あのサーベルのことだよ。」
「精霊のか?なにを聞いてたんだよ?」
コイツの聞くことは大概、意味のあることだ。つき合いの短い俺でもそれぐらい分かる。
「あのサーベルの出自だ。あれは今から580年前ぐらいに呪文の失敗で召還されたものらしい。魔力が大きいからすぐに封印して、資料も隠したから発見が遅れたんだとよ。
で、580年前っていうと日本では室町時代、ヨーロッパでは百年戦争の末期だ。あの武器が俺たちの世界からのモノだとすると、あれは百年戦争時代に使われた剣という可能性が高い。」
「はぁ~。百年戦争時代とやらに偉業をなしとげた人ってダレ?」
「偉業っていうほど偉業はないと思うんだが、当時のフランス国王の名はシャルル・・・」
「は!? じゃあ、あの人国王だったのか。偉い謙虚だったなぁ。」
「シャルル7世だ。当時国王がこの名を多用していたから平民でもこの名を使っていたから分からねぇよ。」
「じゃあ、分かんないじゃん。」
「だからいったろ。たいしたことじゃない。」
それっきり会話が途切れたが、あの精霊の出自はこれからも謎として出てきそうだった。
パーティーが終わりに近づいたころ王様がこういった。
「さて、英雄諸君。契約も1人とはいえ果たしたことだし、任務に出向いて貰おう!」
またまた破天荒な王様の一言でオレたちは正式に城の外へ飛び出ることになった。
そこでこの世界でも『信仰』の壁があるということにオレたちは気付くことになる。
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