市場で珍品探し
忙しくて書くのが遅くなってしまった・・・
それのバトルなし。我ながら何をしているのか。
オレが王族のみんなにボコられて一週間が経った。
ナズナさんやアリアは同じような逆境を繰り返せば、精霊は召還出来ると言うがオレは遠慮しといた。
だって考えて見ろよ? また元極強盗賊とか雷魔法遣いのお母さん方々がシゴいてくるんだぜ?
一部の特殊な性癖の人は大喜びでもオレは二度とゴメンだね。
つーワケで今はフランとジャックさんから剣術指南を受けている。最初は素振りだけでもダメだったが、今はなんとか剣を振れるようになっていた(凍也曰く『笑えるほど下手くそ』だそうだが)。
凍也自身も剣道やっているクセに受けていてすでに我流まで作っているらしい。
照も受けているが持ち前かどうかしらんが剣術の才能はあるようでメキメキ腕を伸ばしているとか。
やはりココでもオレは伸びないらしい。
元々オレが得意だったのは化学と物理学だった。以外かもしれないが運動ではリレーで小学生にも負けるオレにとって実験や物理研究は心の底から楽しいと言える物だった。
じゃあテストの点は良いかというと理科系でも点は低かった。オレが興味あったのは実験とその応用でしか無いため、テストのモルとか、濃度とかは苦手だった。
なぜだろう。なにかを証明したり、作りたいと思ったときはやる気がでるんだけどなぁ……
とオレがちょっと思いを馳せていると後ろからコツンと頭をたたかれた。
「休憩時間は終わりですよ。真二。」
照だった。ワリィと答えようと思ったときまた後ろから今度は木刀で頭をぶったたかれた。
オレは思わずたおれて声を荒げる。こんな荒療治しかけてくるやつはここには1人しかいねぇ!
「今の真剣だったら死んでたぞ。お前。」
静かに淡々と事実を言うのはやはり凍也だ。
「昔の漫画の鬼教官みたいなセリフいってんじゃねぇ!今のマジで痛かったぞ。」
「当たり前だ。強く打ったんだからな。」
こいつといるとなんかむかつく。俺はコイツを口で負かせる日が来るんだろうか。
ちなみに今コイツが持っている木刀はコイツがオーダーメイドして作らせたモノらしい。ここいらの世界は技術、文化、知識、社会制度などは魔法といったイレギュラーを除けば、多少の違いはあっても中世のヨーロッパの世界観だそうだ。もちろん中世ヨーロッパなどに刀などないから、凍也は少々苦労しているらしい。
そこにフランがやって来た。
「そうだなぁ。みんな、ちょっと長めの休憩をとって市場へ行かないか?」
「市場?」
と照が聞き返す。
「なんだ、それ?」
と俺が言うと、フランは得意そうに鼻をならす。
だがそれは凍也の言葉により、得意な鼻は折られてしまった。
「旅商人なんかが湖と言った水辺の近くでテントを張ったりして小規模の町を作るんだ。そこでは普通より遠くのものが大量に売られることが多いから遠出しなくても珍しいものが買えるって話だ。」
眠たげにいつもの目つきで淡々とは話す。
オレはその教科書でも読むようなスラスラ感に驚いた。
「・・・お、お前ってさ、世界史とか得意?」
「歴史全般は好きだったぞ。それで多少覚えている。」
それ多少のレベルなのか?
そこにオッホンとかわざとらしい咳払いが聞こえ、フランが奪われたものを奪還するような感じで話し出す。
「だから、凍也の言っていた、反りのある剣やお宝らしき武器が手にはいるかもしれないってことさ。君たちの服装も買えるといいしね。」
あ、そうか、今まで失念してたけど、オレたちって制服のままじゃん。
このまま中世ヨーロッパでは奇異と見られて仕方がないことだろう。
それにもしかしたらお宝のなかには精霊が入った宝具があるのかもしれないのだ。行って損はないだろう。
ということで王族に道案内と付き添い人として来てもらうという、考えたら超特上の待遇を受けてオレたちは市場へと向かった。
王都から東に4キロほど離れた場所に市場はあった。
確かに、この世界(もしかしたらこの国)では珍しい服や装飾品でいっぱいだった。
保護者的な感じで来たフランやジャックも目を輝かせてるっぽい。
まぁオレは大人だからな。そんなはしたないことはしない。オレはどっちかっていうとアリアやナズナさんが服を買って、その場で着替えてもらったりするかもしれないから……
いや! これはアレだ。着替え中の女子を守るためだ! 断じてふしだらなことは考えてなし! うん!
「さっきからニヤニヤしたり真面目な顔したり気持ち悪くて忙しいヤツだな。」
凍也が心から嫌悪の顔で睨んでいた。心なしか頬が引きつっていた。
オレはその目にビビるよりも、先に今自分が思っていたことで赤面した。あぁ~! ちょっとみんなのいない所にいきてぇ!
「・・・1人なっていいか?」
「どうしてですか?」
アリアが問うてくる。
「それはだな・・・」
「いいえ。みんなで一緒に見に行きましょう!」
と照が良い笑顔で行って来た。
ちっくしょぉ~。悪意が無いから断りづらいし、なにより想像してたことが背徳的なんで1人になりたいです、なんて言えねぇよ。
落ち込みながら、若干アリアたちを見ないようにしながら、オレはとぼとぼついていった。
そんなこんだで時間は過ぎていく。オレはジーパンっぽいものがあったので買ってみた。以外と高い。
オレはファッションセンスなんてモノは皆無なので、なるべく黒っぽいモノ(無難そうなので)を選んでみる。
照や凍也はそれぞれの好みに合う服を選んでいたようだがあまり気にしなかった。
覚えていることは、照は布地の厚そうなモノを買っていた。雪山にでも行くのかと思ったが、以外と汗を吸うヤツらしい。
凍也の場合は、王宮から金をたかって……ゲフンゲフン、給料として貰っているので特注品で頼んでいやがった。それも和服だ。種類は分からんが、177センチあると言っていた凍也と比べても大きめの袴を選んでいた。まぁ王宮に帰って着てみれば、分かるだろう。
ちなみに王族の人たちは誰1人として買わなかった。アリアやナズナさんが買わなかったことは残念だったが、よく考えりゃ彼女らは王族。服なんてこんな市場じゃつり合わない高級な服をそれこそ何十着と持っているのだ。そりゃ買うわけない。服のことは残念だが自分の分は買ったし、満足しよう。
さぁ、次は武器を買おう!
と意気込んでみたは良いけど、良く考えりゃオレって武器の善し悪しとか分かんねぇじゃん。
フランやジャックは奥の方へ走っちまうし、アリアやナズナさんは分からないようだから、ここはちょっとお預けか。
「あ~、こんなんだったらやっぱりアリアにかわいい服とか着て貰ったほうがよかったぜ。」
とぼやいていると、なにやら横が騒がしかった。
「さぁ~みていって!ここでしか見えない、世界中探しても珍しいモノが勢揃いだよ!」
どうやらここで見ても珍品と言えるモノがあるようだ。人混みをかき分けるのに苦労しながら、品物を見たとき、オレは目をみはった。
反りがある、目を疑うほどの美しさがある刀身。鈍い鉄の色が陽光を反射して光り輝いていた。
そう、まさしくそれらは刀だった。刀は長剣が二本、短いのは一本あり抜き身の状態であった。
銃刀法により日本ですら、写真ぐらいでしか見たこと無いのに、異国のそれも異世界で実物をみるとは……。
ぽけ~っと観察していると、横から凍也がやって来て、一瞬眼を見開いた。
だがそれもすぐにもとに戻ると、口元をにやりと動かし笑った。
コエ~よ。刀を見て不気味に笑う少年とか確実に殺人鬼じゃん。コイツに対抗できる殺人鬼っつたら切り裂きジャックとかぐらいしかいなくね?
とかどうでもいいこと思ってると、凍也はいままで通りの口調で、でもどこか上機嫌に口を開いた。
「おい、オッサン。ここにある反りのある剣2本と短いのも買う。あとそこにあるナイフ3本と3枚。
10メートルのワイヤー2本くれ。」
「おい、そんなに買うのか。売り手としては言いたかねぇが、そこの剣はやめとけ。」
「はぁ? ここに置いてるヤツは売り物じゃないのか? こっちは金払うんだからしっかり売れ。」
「だから売り手として言いたくないって言ったろうが。
この剣は普通の剣とは違う。普通の剣は体重をかけることによる力で物を切るが、この剣は……」
「速さによる技で切るってか。あいにくそんなに変わんねぇよ。コイツが反ってんのはより切断しやすくするためだけだからな。それに俺はずっとこういう剣で修行してきたよ。」
「本当か!?」
めちゃめちゃ驚いたっていう顔で商人のオッサンが聞いてくる。
「ああ。」
こっちはなんの表情の変化なしで淡々と凍也は答える。
「じゃあ、問題ないな。使える主のそばの方が武器もうれしいはずだぜ。」
やけに生き生きとオッサンは答え、刀を始めとした武器の説明をしてくれた。
刀はすべて土魔法の1つ、『固定化』がかかっていて、500年前からあるらしい。話によれば異世界から偶然にも召還されたんだとか。
ワイヤーの方にも『固定化』がかかっていて早々切れないらしい。
ナイフというのはとっても変わっているとオッサンが言っていたが、オレたちは知っていた。
というか日本人なら知らないヤツはそうそういない。それは手裏剣と苦無だった。まるで忍者の世界だな。
説明はもう少しあったがオレは聞いていなかった。なぜなら凍也が刀の説明から真剣な顔で考え込んでいたからだ。少し気になったがオレは考えてもしょうがないと吹っ切れた。
でもこの市場の帰りに凍也が考えていたことをオレは考えることになる。
市場の帰り、オレは最後に見た珍品専門の商人でとんでもないモノを見つけてしまった。
「どうですか? とっても珍しいでしょう? 他にない材質と質感! 世界を回ってもこんなのはないでしょう!」
と袋をなでなでしながら客の前で叫ぶ。
そりゃぁ、珍しいだろうぜ。
「荷物入れとして使うことも出来ます!」
おう、普通その用途以外使わないけどな。
「これに触っていると、天に召される気持ちです!」
じゃ、アンタはオレたちの世界に来たら、お天道様に召されちまうなぁ。
ごみ捨て場のなかで。
そう、商人が珍しがっている袋とは俺たちの世界のビニール製のゴミ袋だった。
あっちの世界の元住人としてアレを見るとかわいそすぎて見てらんない。ゴミ袋なでなでして、天に召されたら、オレなら地獄でもいいから天国行きたか無いぜ。
どうやら袋は6枚あり、3枚はゴミ袋、もう3枚はコンビニの袋だった。ロゴからみてアメリカっぽい。
そんな痛々しい商人にオレはふと思った質問をした。
「おい、その袋どうやって手に入れたんだ?」
「同じものを取ろうっていうの?じゃあ、無理ね。だってコレはもらい物だよ?」
「もらい物?どいうことだ?」
「これ以上、教えて欲しかったら、この袋全部買っていって。それならいいよ。」
ぐっ、これ売れてないのかよ。ってか、なんてやつだ。さすが商人。だがオレはどうしても質問の答えを知りたかった。
なんでかは分からないけど、とっさに凄く重要なことだと直感したからだ。オレは渋々金をだした。
「驚いた。ほんとに出すとは。」
「いいから教えろ。」
オレは袋を乱暴に掴みながら言った。
「そうかっかすんなよ。まぁこれで商談成立と。ええっと、ボクが一月前ぐらいに品物の仕入れをしたとき、旅人とあってな。
ふらふらだったけれど、なんか異世界からきたとか言っていたよ。最初は信じなかったよ。大魔法の伝説上のおとぎ話だったからね、異世界召還なんて。
でもどうやら話の信憑性から見て本当だと思ったんだ。商人やってると大抵の嘘はに見抜けるからね。」
「というと、そいつからもらったのか。」
「うん。そうだよ。でもその旅人は運が悪くて大病に冒されて死んじゃうんだ。あれは悲しかったなぁ。」
そこで商人は初めて、悲しみに目を背けた。
「そっか……他にそいつが持っていた物あるか?」
「やけにがっつくなぁ。異世界に興味があるのかい?でも残念ながらこんなのしかないよ。それに壊れているしね。」
って言って出したのは1つの武器だった。
いや、こいつの口ぶりからしてこいつはこれを武器とすら思ってない。それは拳銃だった。オートマチック式の自動拳銃。
少々壊れているのは確かだが、それはバネの部分だけで火薬も弾も見た目は大丈夫そうだった。
「へぇ、そうやって開けるのかい。」
弾倉の開け方も分からなかったぽい。
「そりゃ、分かるさ。同じ異世界から来たんだからな。」
異世界がこの世界でもかなり逸話に近いそうなので、冗談気分で言ってみた。
すると、
「そっか。そうだよな。」
と商人が言ってきた。思わずズッコけかけた。
「さっき、おとぎ話って言ってたじゃねぇか!?」
「こうも言ったはずだよ。この職業やってると大抵の嘘は見抜けると。」
オレは本気で言ってるのか嘘なのかわからんので、言葉が出せずにいた。
「あとそれ持ってて良いよ。けっこうアイツと仲良かったから捨てられずにいて困ってたんだ。」
え、とオレの口から自然と呟きがもれる。
「仲良かったヤツの形見みたいのを今日会ったばかりのガキに渡しちまうのかよ!」
「良いじゃないか。それにキミはその道具の使い方を知っているんだろう?だったらキミが持っていたほうが有効利用だし、道具も喜ぶよ。僕は道具を売れても、使うことはからっきしでね。」
実に商人らしくて実をとる考え方だ。でも……
「やっぱ遺品なんてもらえねぇよ。それがお前のダチならなおさらな。」
商人はキョトンと目を丸くした後、
「アハハハハ。キミ優しいねぇ。じゃ、こうしてくれ。
それをキミのもといた世界にその道具を返してくれ。彼はもとの世界に帰りたかったからね。あと彼の名とついでに僕の名前も覚えくれ。そしたら、もらってくれ。」
「ちょっと待った。道具のもとの世界に戻すのは分かったが、名前を覚えるなはなんでだ?」
「決まってるじゃないか。大役を果たしてくれる恩人のダチになりたいの。」
オレはなんでか分からないけど嬉しくなった。そいつとしっかり約束を果たすと言って、名前を教えあった。
そこから出てくると照たちが待ってくれていた。オレがさっきまでの話しをすると、みんなの反応はまちまちだった。その中で一番話しを聞いていたのは以外にも、凍也だった。
「・・・やっぱりか。」
と1人でなにやら納得した凍也。
「なにがやっぱりなんですか?」
と照が聞いてくる。
凍也は手招きをしてオレたち3人だけ集める。
「ここからは俺らしか関係ないからな。」
と言ってくる。
そのあと凍也の言った言葉は驚愕の渦にオレたちを引き込んだ。
「まず、俺の出した結論からいうと、巫女の出す魔法以外でも異世界を行き来することは出来る。」
「どういうことだよ!?」
たまらずオレが叫ぶ。アリアたちが嘘を言っているってのか!?
「まず刀と暗器だ。刀は異世界から持ち込まれたシロモノらしい。ってことは少なくとも道具なら自由に行き来出来る魔法があるってことだ。500年前は日本は戦国時代。時系列も合ってる。次は暗器。暗器は俺の記憶違いでなければ、伊賀の国の忍びの模様に非常に似ている。」
「伊賀ってドコだ?」
するとほかの2人にムムッて顔された。
「今の滋賀県あたりです。」
照が耳打ちしてくれた。滋賀県の場所もあやふやだがこれ以上聞いて、場の空気の温度を下げたくない。
話しを戻すぞ、と凍也が言った。
「この暗器は『固定化』の魔法がかかっていない。つまり500年前のシロモノではなくて、最近作られたモノだ。これらの事柄で立つ推測が伊賀の国の忍者集団が村単位でこの異世界に来て、それらの子孫が忍者家業をやってるという推測だ。まぁ証拠はないから推測の域を出ないがな。」
オレは感心してそれを聞いていた。照も同じようだ。
でも証拠がなきゃ話しにならないんじゃ、
「バカかお前。俺の推測をより強固にする話し。それがお前が話した旅人が出てくるんじゃねぇか。」
「バカってなんだよ!」
オレが叫ぶ。一応そこは反論せねばなるまい。
「まぁ落ち着いて。それでやはりあの旅人は巫女の光魔法以外でやって来たと?」
「まだ精霊も出てないのに、王宮から逃げ出さねぇだろう。それに帰る中で情報源にもなりうる巫女の傍から離れるとも思えない。
よってヤツは別の魔術師が発動した魔法により召還されたってところだろう。それなら伊賀の忍者の異世界移動も納得がいく。人を個人のみならず集団で異世界移動できる魔法を使える魔術師がこの世界には1人は少なくとも存在する。」
コイツの言うことはいちいち説得力があるなぁ。でも照も反論はしていた。
「でも、偶発的な事故ってのは考えられませんか。よくは知りませんが異次元の歪みとかは自然に起きるってありえますよね。例えば500年周期で起きて個人、及び集団で異次元移動させる、とか。」
ムムッ。これは思ってもなかった視点からの考え方。案の定、凍也も顔を曇らせている。
「これは、証拠不十分ってことで結論は延期ってことにしません?今考えても多分一生わかりません。」
と照が妥協案を提示してきた。
「そうだな。でもなんか秘密はあると思うんだがな。」
と凍也は渋々同意。
オレも賛成した。照が言ってた事もあるけど、オレは約束したからなぁ。魔帝倒すって。
だから多分他に魔術で帰れる日があっても、魔帝を倒していなかったら帰らないと思う。アリアとの約束だか……
ふと、なんでアリアの約束だからなんだろう?と思ったが、フランが帰るよう呼びに来たから考えるのをやめてしまった。
―――――――――そのときからオレは思っていたんだ。アリアのためなら命張れるって。
そう、一目見たときからオレはアリアに特別な感情を抱いていたんだ。でもそれに俺自身が気づくのはかなり先の話しだ。
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