王族紹介
投稿第2話です。キャラがたくさん出てきますが大半はあんまり登場予定は無いのであしからず。
ここは、騎士王王国の王室。そこに一人佇む男の姿があった。年は髭や髪の白さで50を越えていそうだが、彼の目は未だ現役の騎士を思わせる迫力があった。
そんな彼はかれこれ、1時間近く、眉を大層ひそめて悩んでいる。
彼の名はコンラート・サンダルフォン・ド・ラ・ランスロット。英雄を召還する巫女と術を持つ現存する45の古代の王国に数えられる由緒正しき王国、騎士王王国の現国王なのである。
そんな彼は多忙で悩みが尽きない職だが、中でも今回の件は別格だった。
第三王女のアリア・サンダルフォン・ド・ラ・ランスロットの英雄召還の儀が今日、別荘の協会で開かれているのだ。
精神力を多大に消費するため、王とはいえ精神の負担になるまいと席につかなかった。他の王族たちもそれぞれの職務、任務に忙しいため同席はしなかった。
もともとアリアは家族と一歩離れた距離を保っていたし、アリア自信もそのことに関しては気にしては居なさそうだった。ならばせめて、と100人ほどの騎士や魔術師をつき合わさせた。
「アリアは気を悪くしたじゃろうな。」
と寂しく苦笑してしまう。
だが、悩んでいるのは別に召還の儀に行けなかった事ではない。
そもそもアリアは国の歴史から見ても初代と1,2を争うほど光魔法に長けている。天賦の才というだけでは足りないほどである。
コンラートが気にしているのは、召還された英雄の方である。
今回の敵は強い。そう国王として、一介の戦士として、そう直感できるのだ。今回の魔族の慎重さ、軍備の補強度、魔力の強さ、どれをとってもいままでとは比べ者にはなるまい。魔族は敵を喰らえば、喰らうほど強くなれるため、その力は年を重ねると同時に無制限に上がっていく。
少なくとも国王が肌で体感し、経験した21年前の戦乱を越える戦が巻き起こるのは必須であろう。その戦乱でさえ、思い出すだけで国王である自分が震えてしまう。魔族に対する恐怖と自分に対する怒りの震えで・・・
思い起こされる記憶を自力で消し、再びコンラートは考え込んだ。英雄の実力は個人個人で違う。同じ英雄同士でも強者と弱者は存在する。それはどうしようもないこと。
それにより強い英雄を選ぶことなどできないのだから、それを考えても何も変わらないことは分かっている。しかし、それでも願うことしかできない。より強き精神と何物にも屈しない剣をもつ真の英雄が来ることを。
あぁ! とコンラートは頭を文字通りに抱えた。どうしてだ! なぜ今回に限って強い魔族は侵攻するのだ。
そしてなによりなぜ、アリアが第三王女なのか。ため息をつこうとすると、ドアをノックされ若い騎士が入ってきた。
「国王!アリア王女様とそのご一行がお帰りになりました!」
「アリアをここに!英雄殿もここに連れてきなさい。」
「すでにここにいらっしゃるんですが・・・」
と言葉をなぜか濁す。コンラートは眉をひそめた。騎士が国王に向かって言葉を濁すなど早々無いことなのだ。
若い騎士は自身も困惑、と言った表情を作りながら「こちらです。」と姿勢を整えながら客人を呼んだ。アリアが
「お父様、お久しぶりです。」
と少し目を泳がしながら言ってくる。そして3人が続いて入ってきた。一瞬なぜ、と考えたがアリアと若い騎士の表情が物語っていた。
そう、入ってきた3人全員が(・・・・・)英雄ということに・・・
「なっにぃぃ~!! 英雄って普通1人なの!?」
説明を聞いてオレは叫んだ。
「なるほど。だから周りの騎士や魔術師は騒いでいたんだな。」
と1人納得するのは、凍也。
「そうですか……じゃあ誰が本当の英雄なんですか?」
と質問するのは照。
「私が呼んで、皆さんが来たのですから、全員が英雄で良いと思います。それと、真二さん、驚きすぎです。唾を飛ばさないでください。」
と言うのはオレたちを異世界に召還した『巫女』のアリア。
今オレたちは王様から驚かれ、いま別室で待機中だ。
ガラスで庭(?)を一望できる部屋らしいのだが、オレの感覚で言うと窓から見える景色は森だし、オレたちがいる場所は部屋というよりドームだった。
そんな中で優雅に紅茶を飲むアリアが言うには、国と巫女を救う英雄が3人も来るのは、極めて異例だそうだ。
「私も至らぬ所があったんだと思います。だから皆さんに余計なマネを・・・」
「いやいや、大丈夫だから。オレたち全然OKだからさ。」
とオレが言うと、
「そうだな。別にあんたが悲しんでも俺たちは帰れないしな。」
と全然フォローになっていない事を言うのは分かるとおり、
「てっめぇー、凍也!ますます落ち込ませてどうすんだよ!」
「別にフォローする気なんてさらさらないんだがな。」
と返してくる。
むかついて思わず距離を詰めようとすると、
「まぁまぁ、落ち着きましょう。」
照が手を振りながら仲裁をいれた。それで一時の間、頭を冷やしたオレと凍也は顔を反対側にしながら座った。アリアは
「いえ2人とも、私は大丈夫ですから。」
と笑顔で言ってきた。
まさにアリアは『絶世』の美人だった。会ったときは、美しすぎて形容するのを忘れていたが彼女は黒っていう色が溶けたような、それでいてふわりとした漆黒の長髪で、目は黒水晶のような透き通った黒色だった。
黒って言うとなんか悪の黒魔女みたいだが、アリアは全然違っていた。
一言で言うと清楚だ。清潔という意味ではなく、汚すことの出来ない孤高の存在という感じだ。多分全身の服を黒で統一したらもっと髪や目の色が映えるじゃねぇか?
しかし、アリアは肌の色だけは世の女性ならば誰もが欲しがるであろう透き通る白い肌をしていた。
まさにこれぞ美少女、なアリアだったが勘違いしてはいけない。彼女はとても『悲しんでいる』のだ。なぜそう思ったかは自分でも分からないが、とにかく彼女はそれを隠している。それは男として取り除かなきゃいけねぇ。まずは悲しんでる理由を見付ねぇと・・・
「真二さん、聞いています?」
といきなり考えた女の子が出てきたのでびっくりして椅子から落ちてしまった。
「大丈夫ですか?」
と駆け寄ってくるアリアだったが、オレはその手を振り払い、「いや、大丈夫、大丈夫」と自分を落ち着かせるように言った。
すっげぇハズイ。オレが一言も喋れないでいると、助け船をくれたのは、照だった。
「これから王族の紹介をするそうなんです。行きましょう。」
と自分から歩いてゆく。そのあとに少し含み笑いをしたいけすかないヤツとアリアが続いていく。
オレも後に続くが、頭の中を駆けめぐったのは、オレは異世界に来てもダメダメ野郎なのか? という自問だった。
王宮は広くてきれいな部屋ばかりだったが、王室は別格だった。至るところに金銀といったもので作られたであろう装飾を施されている。光を反射して眩しいばかりだが、そんな所でも存在感を出し続けている男がいた。
この男こそが国王コンラート様だそうなんだ。
「こんにちは、英雄よ。まずは自己紹介といくか。そちらの方はアリアから聞いているから名乗らなくて良い。私は聞いているかもしれないがこの国を任せられている者、コンラート・サンダルフォン・ド・ラ・ランスロットだ。」
王様はにこやかな微笑を見せつつ、こう切り出した。感じからして良さそうな人のオーラを醸し出している。普通王様って言ったらもっと威厳があると思ったけど案外拍子抜けだな、と思っていると横から
「これが英雄? 全員ガキじゃない? 特に真ん中のガキはそこら辺の貧民街からでも連れてきたの? アホさが滲み出てるじゃない。」
とめちゃめちゃ口の悪い女が見るからに嫌悪した目でこちらを見てきた。早口悪口に一番バカにされているオレは少しの間、怒らずに女を呆然と見た。
髪は短髪なのだが髪の色が紫色に近い闇色? というべきなんだろうか。そんな感じの色と同じ色の瞳をぎらつかせ、アリアと同じ透き通るような肌をしている。ただしこちらは化粧をしているようだった。 改めてアリアの天然の透き通る肌に関心してアリアの方へ顔を向けると、
「もう、姉さん!そういう文句はやめてください!」
とアリアは頬を膨らませて言った。かわいい! ……じゃなくてだな。姉さん?
「お姉さん!?」
まじでか!? と思い顔をさっきあった方向へ回転させるとお姉さんは
「だれがお姉さんだ! お前に言われる筋合いはない!」
と叫ばれてしまったが、オレの脳内は混乱中だった。
うへぇ! ありえねぇだろ! だって髪や瞳の色だって違うし、胸の大きさだってアリアの方がおおき…
「・・・。」
お姉さんになんにも言ってないのにめっちゃ睨まれたので思考が一時停止しました。
王様が仕切り直しに口を出してくれた。
「仕方ないことじゃよ。アスチルよ。そうかっかするな。すぐ切れるのがお前の悪い癖じゃ。
すまんな。真二くん。この子はアスチルベ・シモノフ・ド・ペリトラ・ラ・ランスロットと言うのじゃ。王族第一王女であり、風と水の魔法を使う。特に風魔法は大の得意で疾風の鷲の二つ名を持つほどなんじゃ!」
と最後は子の成長を喜ぶ父親みたいになったが、そこは忘れておこう。
そっか第一王女か。でも疑問は消えない。
「どうして髪や目の色が違うのですか?」
照が聞いてくれたが、そういうことなのだ。なぜそこまで特徴が違うのか。巫女になると髪の色とか変化するのだろうか?
すると王様はへ? そんなこと? みたいな顔をして
「それはちがうじゃろうて。母親が違うのだからな。」
と言った。
は? 母親が違う? それって離婚したってこと? などと思っていると、凍也が説明を追加してくれた。
「こういう王族は子孫をより多く残すため、正妻のほかに妾とかも用意して複数の妻を持つことも珍しくないんだ。」
……思考回路がショートいたしました。照はなるほど~、っていう顔で頷いてるけど頷くなよ。
まって~!それってハーレムじゃん! いいの!? そりゃ男の夢であるハーレムだけど王様はそういうのも実行できるんだ。ヤッベ、王様っていいかも。
王様の職業にガチで憧れ始めた頃、ほかの王族の説明が始まった。
次女であり、土魔法と光魔法の一つ『聖域』を操るナズナさん。
王女の名字が違ったのは自分の土地を持っているからで、ナズナさんはもっていないので名字は王様やアリアと一緒らしい。二つ名は土の聖域だそうだ。そのまんまだ。
長男はジャックさん。彼も自分の領地をもっているので、名字は別にあるのだが長いので省略させてもらう(っていうか忘れた)。
珍しい金属魔法っていうヤツを使うらしい。自分がもっている物に金属の性質を与えたり、金属を別の金属に変えたりできるらしい。魔法を知らないオレにとってはスゴイかどうかわからないが、いつか見せてもらおう。ちなみに二つ名は練金戦士というらしい。
次男はフラン。コイツは良いヤツだ。照に似ているけれど、少し悪いヤツで気が合う。アリアと同じ母親から生まれたらしく、短いが黒を溶かしたような黒髪と漆黒の瞳はアリアそっくりだ。
フランは自分の実力だけで領地を手に入れた人物で卿という称号を持つ名誉ある騎士らしい。また得意なのは水魔法だけでなく、これまた光魔法の一種の反射攻撃をつかうことができる。 これまたそのまんまな二つ名、反射騎士とも言うらしい。
そんで王様の奥さんたちが遅れてやってきたのはそのほかの家族の説明が終わってからだった。
「申し訳ありませんでした。コンラート様。準備にとまどっておりました。」
と来てから一番に自分の夫に謝ったのは初老にさしかかるかぐらいの女の人だった。
それに続いてそれより若い女の人が
「いいえ、私の責任です。私が雑務の件をエメラルダさんに協力させたのが悪かったのです。」
と深々と謝った。
それを見て王様はやれやれと首を振り、
「なぜ客人の前で私は謝られなければならないのだ。それに夫である私に敬語を使うなといったであろう。」
と王様はちょっと拗ねた子供みたいに鼻をならした。
「「すいません。」」
と二人で、尚も敬語で謝る女性たち。多分、というかあの人たちが王様の奥さんなのだろう。
いかんせん、年が離れすぎている用にも見えるが気のせいだろう。
そう思う事にしてまっすぐ二人の女性を見つめた。初老の人はあの長女やナズナさん、ジャックさんの母親だろう。
3人とおなじ闇色の髪と瞳をしている。だが歳のためか若干、髪に艶がなさそうに見える。でもきれいであることに変わりはなかった。
年若い女の人はアリアやフランのお母さんだって一発で分かる、誰もが目を奪われる黒髪をしていた。瞳の色も一瞬の濁りもない漆黒の色をしていた。まさに両手に花な状態の王様だったが、王様はさして気にする風もなく、
「左が正妻のエメラルダ。右が妾のローズだ。」
と腰に手を当てながら言った。
けられてしまえ! と思ったがどちらの女性もほんのり頬を染めていた。まるで好きな人に告白されたヒロインみたいである。
王様呪われろ~~!! とマジで反射的に思ったが、オレの視線なぞ気にせず王様は言い放った。
「さぁて3人型には精霊を召還してもらいますぞ。」
精霊。それこそオレら英雄がもつ力だったのである。
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