異世界召喚
始めまして、セイバーです。初投稿です。
拙い文章ですが、少しでもおもしろいと思ってもらえたなら、幸いです。
なぜこんな所にいるのだろう・・・
たった30秒間で最早なんど繰り返したかわからない自問をするオレ――――――神谷真二は自分の置かれている状況を理解できなかった、否、できなかったのではなくしたくなかったと言うべきか。
なぜならまるで王宮のような立派な石造りの建物の中にオレはいて、まるで本物の騎士のような甲冑を纏った騎士やロープを着込んだ人たちが騒いでいる。そこまでならなんかの変質宗教団体のコスプレ集団でまにあったかもしれないが、オレたちが立っている床には10年以上のゲーム歴を持つオレから見れば「魔法陣」に見える模様。何よりこの模様、光っておりますよ。
さらには
「ようこそ、お待ちしておりました。イロアス殿。」
などと見てるだけで目が痛くなるような美少女がとっても良い笑顔で深々とお辞儀をしていた。少々目をまるくしていたが、そんたこたぁどうでもよろしい。
なんでこんなことになったのか。オレは横にいるオレと同じ境遇の二人に目もくれずに、記憶を再生し全力で思いだそうとしていた――――――――
神谷 真二 16歳 高校1年生 成績は中の中、運動は下の下、恋愛はスーパーダメの彼女いない歴=人生のリアル灰色高校生活を送る普通の男子高校生だった。強いて言えば普通の人よりゲームをしていてちょっぴりゲーム脳なだけだ。ちなみに好きなジャンルはファンタジー。このジャンルなら小説でも読める。夢は特になし。親、兄弟、教師からそろって「ヌケているからしっかりなさい。」といわれるのがたまにキズ。
そんなオレは今日、学校主催の肝試しに行っていた。なんでも新しく変わった校長がこれまた大層な祭り好きで学園祭の終わりの夜に3年生最後の思い出という名目として、肝試しをやるといって教師たちを半ば強制的に実行させたという。学園祭が終わったばかりで疲れた生徒にとってもそんなのははなはだ迷惑にしかならないというのに――――
「まぁまぁそんなツカれた顔すんなよぉぉ。これはこれで楽しいではありませんか、陛下。」
――――いた。少なくとも一人、学園祭で走り回ってクタクタの中で元気なヤツが。
「文化系でそんな元気にまだ走り回っていられるヤツはおまえだけだぞ。拓。」
噂部 拓。 オレの中でも特に仲良しの友達だ。オレと同じくらいのゲーム脳でエロ本を一緒に買ったこともある、どっちかていうと悪友か。
そんな拓は自分の言ったセリフに大ウケしてる。どこがおもしろいのか、コイツの笑いの沸点は低いらしい。
「暗いカオすんなよなぁ。今回はよぉ、スッゲェ噂があるんだよ。」
と、でかい図体をズッと近づけてきた。拓は文化系なのに身長が182センチもある巨漢だ。
おまけに運動神経もよくて、運動部からの勧誘も1度や2度ではない。まぁ本人はめんどくせぇの一言で断り続けてるが…
「で、何がスゲーって?」
オレはめんどくさくなってサッサと聞いてしまおうとした。
「だからさぁ~スッゲェっだてんだよ! なんでかっていうと…」
……しまった。
コイツは文章力も低けりゃ、言語力も低かったんだ。なんでコイツ文化部なんだ? 今度、俺からも運動部を勧めてみるか。
と言うわけでサッサとどころか、長々と聞いてしまったが要約するとこういう事らしい。
今回の肝試しの場所は古い寺院なんだが、この建物は1000年以上昔に建てられ、それ以来増築、改築なんでもありの改造を家中にしまくったらしい。おかげで曰く付きの建物になっちまったそうなんが、未だにそれぞれの時代の部屋が残っていて、その部屋にはいわゆるオカルト気味の怖い噂が広まっているらしい。
いかにも嘘らしい話しだが信憑性はあるらしく、実際この土地で行方不明者は公開されているものだけでも50人はいるそうだ。
「・・・でなぁ! そいつが消えてから、持ち物の赤い手袋が持ち主を捜すために、寺院中を浮いて動きまくるんだよぉ。あかぁい血のようなものを滴らせてナァ!!」
太い腕をバッと上に挙げてみせる。なんか知らんがコイツはやたらとオーバーリアクションだったりする。
ふざけてる時はいいが、いつもこうだと話しが進まんことがある。まぁ簡単に言うとコイツは噂が大好きなのだ。特にこういう怖い噂が。だからなんとなくだが、気分が良いんだろうなぁとは思っていたが…
「いくぜェェ!おまえら!絶対見てっやっからなぁ、幽霊をよぉ!!いやっはァァァ!!」
……ここまでテンション高いとは思っていなかったケド。
まぁとにかくオレはこの寺院になんの気苦労も無く入ったわけだ。この先に起こる事も知らずに。
さすがに1000年歴史ありということで中はひどかった。最後に改造したのが対戦直前の昭和前期だったらしいから、あちこちでガタがきていた。だがこっちの方が肝試しには合ってると思い、別段怖がらずに奥へと行った。
100年前の大正、明治の西洋風の部屋(レンガ風で2階にあったもんだから今にも落ちそうで、ちょっと恐かった・・・)、2,300年前の江戸時代の庶民らしき部屋、600年前の室町時代の僧の修行部屋、800年前の鎌倉時代の武家屋敷風の部屋。
そして最後に来たのが拓曰く、『最も行方不明者になった人が最期にいた場所』であり、現存する唯一の改造されていない貴族風の部屋にオレは着いた。一番奥というのもあってか人がたくさんいた。
これじゃ肝試しにならんと思うが、生憎拓は一人で探索してるようだった。
そこでなぜか以外と広い貴族部屋で目にとまるものがあった。それはタンスだった。平安時代にタンスなんてないよなとも思ったが、なぜかこのタンスが気にかかったのである。別に歴史に詳しいわけでもないのに。
と、そこに俺と同じようにタンスの所へ2人ほどやってきた。
一人は茶髪の優男風の男だった。きちっとボタンをつけたり、皺一つない制服をみると優等生っぽい。 さらにこの人の目、すっごく純真な目をしている、きっと真面目なんだろなぁと思わせる感じを漂わせるこの人とは逆にもう一人は正反対だった。
オレより外しているボタン、各種の多分アクセサリー、ぼさぼさの髪の毛って言ってもオレもぼさぼさなんすけどね。
それよりコイツのこの目。まるで『俺はこの世界の全てが気に喰わねぇんだよ!』とでもいいたげな目である。いや、ね、オレの想像なんだけど、そんな感じの目してるの!ほんとに。
視線を無理に下げながらタンスを開けてみた。すると、一枚のきれいな鏡があった。一瞬目を奪われるほどの輝きを持つと思ったら、その鏡は今度は目をつぶさんとの勢いで眩しく輝き始めた。思わず目を背けると、隣の2人も手で目を顔を覆っていたが、それよりもオレは驚いた。
誰一人、鏡の光に気付いていない!
少なくとも、眩しく感じている者はいないようだった。オレはびっくりしながらも、鏡の方へ顔を向けるとやはり鏡は燦然と輝き続けていた。
少しずつ、しかし着実に光に慣れていく目を確認しながら鏡を見ていると、不意に声が聞こえてきた。
「あぁ、英雄、イロアスよ! 我が声が届くなら我らの希望となりてここに呼び出されたし!」
そんな声が聞こえたと思った瞬間、光が膨張しオレたちを包み込んだ。
――――――――と思ったら気付いたらここにいた。そうやっと冒頭に戻ってきたわけだ。
回想終了。わかったこと、気付いたことは最初からなんにも変わっていないがなんか落ち着いてき、
「あの、大丈夫ですか。少し落ち着いてみてください。」
てなかったぽい。絶世という言葉ではまるで足りないくらいの美少女がこちらをのぞき込んで心配半分、戸惑い半分という目で見つめている。その顔を1秒間見たままフリーズしたあと、
「すいません!」
と慌てて離れた。
深呼吸して今の状況を聞こうと口を開こうとした瞬間、
「大丈夫です。あなたの言いたいことはわかっています。なぜこんな所にいるかでしょう?」
と少女が言ったため、口が開かなかった。
いやホントは「ここはドコですか?」とか聞きたかったんだけど、まぁ外れちゃいないからいいか。
少女は申し訳なさそうに顔を一度伏せてから、意を決したように顔を上げ、こう言った。
「私の名はアリア・サンダルフォン・ド・ラ・ランスロット。この騎士王王国の第三王女です。あなたたちはこの国を救ってもらうため、私により召喚されたのです。」
オレはそっか第三王女様かぁ。そっか召喚されたのかぁ。と納得、
「って納得できるかぁ!!」
と叫んだ。自称王女さんがびっくりされたようだが、そんなことは関係無い!
「ってかここはドコなの? 騎士王王国なんて初めて聞いたけど。」
「当たり前です。ここはオケノアス。果てなき大地という意味ですが、巨大な大陸と周辺の島々により構成される世界です。あなたたちがいた世界とそもそも違います。」
がくっと膝を曲げ、上を見上げてそっか、てことは
「ここは過去でも平行世界でもなく異世界というわけか。」
と、俺の隣にいたあの目つきの悪い男が口を開いていた。そう異世界。ファンタジーでは定番中の定番で王道中の王道であるフィールドである。
っていうかコイツ、こんな異常事態なのに平然とあたりを見回し、眉一つ動かさずに状況を把握していやがる。どんな神経してんだ?
ふと、横を反対側を見るとぼーっと未だ状況をいまいち掴めてなさそうな感じの男がいた。優男風の方だ。こっちの方が正常だが、めんどくさそうなので放っておく。
「で、女、イロアスってのはどういう意味だ。」
と、目つきの悪い男は言い放った。
えぇぇぇ~。その人王女様じゃないの!?
とさっきタメ口聞いてたオレがツッコめることじゃねぇけど、と思う中、騎士たちがキレていた。
「王女様になんて聞き方!!訂正しろ!」
そんな感じの怒号が聞こえてきた。それに、平然と、眉一つ動かさず男は
「俺はこの国どころかこの世界の人間ですらない。それを右も左も分からぬこの世界に呼び出した女にどうして敬語なんて使わなきゃならねぇんだ?」
といった。怒号は消えずとも、小さくなった。
たぶんコイツの言葉が正論だと思ったんじゃない。コイツの有無を言わせぬ気迫に押されたんだ。なんてヤツだ。ホントに高校生か、こいつ? と思ううちに男は
王女に再び向き直っていた。
「で、どういう意味なんだ?」
「英雄という意味です。この世界に呼び出したのには理由があるのです。その理由はこの場でお話ししますが、その前にあなたたちのお名前を聞かせていただけませんか?」
そっか。名前。言ってなかったなぁそういえば。そっかぁ、じゃあオレの名は、
「僕の名前は直道 照です。よろしく。」
とオレより早くさっきまでぼーっとしてたヤツが最高のスマイルであいさつしていた。さらに握手まで求めていやがる。王女は気のせいか一瞬俯いてから、笑顔で顔を挙げ握手を返した。
ちくしょ~と言うのもなぜだとおもうのでわざとぶっきらぼうに
「神谷真二だ」
としか言えなかった。
例の目つきの悪いアイツは半秒ほど考える姿勢をして、
「柳生 凍也。」
と言った。へぇ~アイツ、柳生凍也っていうn
「って柳生!? あの剣術の!?」
と言ってしまった。
アイツ改め凍也は
「それ以外にあんのか。あぁ! 今関係ねぇだろ! 気に喰わねぇな!テメェ」
と目で言われた(気がした)のでそれ以上は追求できなかった。
「で、話を戻しますけど、なぜ僕らをよびだしんたんですか?」
と優男風改め、直道は優しげに質問を切り出した。王女様、今ごろだけど改め、アリアさんは長い答をを返した。
――――――遙か昔、この世界に魔族という種族が突如としてやってきたと言います。
魔族はその圧倒的な闇魔法、長い寿命、国の軍隊の兵隊量を超える圧倒的数量。そしてなにより、別種族を食べたときに、食べた生き物の力えを自分のものにできるという特性を使い、より我々を食べさらに力を蓄えてきました。
そんな魔族たちの目的は魔族全体を統べる王『魔神』になること。そのため物資や労働力、それに力を蓄えるため、我々人間を攻撃してきました。
また、自分だけは生き残ろうと、国同士の戦乱、果ては内乱までおきてしまい、世界は絶望にさいなまれました。
しかし神はわれらを見捨てなかったと伝えられます。なぜならその時期に生まれた王族の子は魔族が持つ闇魔法と対になる光魔法を手に入れたからです。
そして英雄を召喚する儀式を神から授かったという魔術師が当時の国中に広げたため、国一番の光魔法使いを『巫女』と呼び、英雄と共にそれぞれの国で魔族との大戦争が起きます。その後一時期は退けましたが、魔族たちは休んでは侵攻、というのを何千年と続けました。
そして、再び魔族はこちらに攻撃を仕掛けようとしています。最後に魔族が進行してきたのが21年前。魔族に「諦める」という言葉はありませんから彼らは滅びるまで何度でも戦いを繰り返すでしょう。 そのため打倒魔族を掲げ、あなたたちに国を守り抜く英雄になってもらうためこの世界に呼び出されたのです。――――――――――――
いわゆる古風ファンタジーにも似ているこの状況をどう捉えるか。受けてみるか。いや、その前に聞かなきゃならん。ダメもとだが。
「帰れる方法とかはあるんですか。」
すると、これまた予想通りにアリアさんは顔を歪めて
「少なくともこの国には帰る呪文は存在しません。しかし、帰られる方法はあります。『魔帝』といわれる者は知っているといいますし・・・」
とそこで言葉が小さくなって聞き取れなくなってしまった。
要するに、定番ファンタジー通りに帰れない。帰りたかったら魔族のラスボス倒してこい、ってことだろう。受けたら、魔族に殺されて死、受けなかったら、その辺で帰れなくて仕事もつけず、のたれ死んで死。どうしようと悩んでいたら、照ってヤツがいきなり口を開いた。
「やらせてください。僕はあなたたちの力になりたい。」
ととてもイイ笑顔で発言してきた。
……まじですか。これには凍也も驚いてるっぽい。だって驚くでしょ、やらせてくださいとは。コイツもどんな神経してるのか。今ドキ珍しい『困っている人は放っておけない』ヤツなんだろうか。でもこのレベルで言えるかソレ。ちょっと感心した。オレは尊敬の眼差しを少しばかり送っていた。
そこに横から
「話にならねぇ。」
と呟いたのをきいて凍也のほうに目を向けると、
「俺は報酬を出したらやる。」
と言った。はい? と目が点になるアリアさんをみてめんどくさそうに凍也は
「この世界の共通金貨、またはこの国の金貨でもいい、俺を雇う、という形で俺に報酬を出したらやる。金額は俺が設定する。帰る方法を見つけたら、俺は勝手に帰って良し。っていう条件ならやってもいい。」
スゲェ、コイツ王族に向かって『雇ってくれたらやるよ』などと自分を過大評価して会社に売り込むビジネスマンみたいなこといいやがった。
やばい、最近の男子高校生はこんなヤツばっかか。まぁ現実的っちゃぁ、現実的なんだケドな。そんな言葉に反応して再びの怒号を挙げる騎士たち。今回は剣も掲げるやつらもいる。そんな連中とは正反対に、アリアさんは
「それくらいでないと、おかしいですわよね。全面的に悪いのは私なのだから。」
と満足気味に言い返した。それを見て、凍也も少しばかり笑ったぽいが、いかんせん、コイツ表情硬すぎ。表情筋をほぐせ。
アリアさんの笑顔は眩しすぎて逆にいかん。声も清楚だし。やはり、受けたほうがいいのでは。
オレはファンタジーに憧れていた訳だし来てしまった以上ここに住んじまえばと思うが、家族や友達のことが目に浮かぶ。
両親とは好きでも、嫌いでも無かったが一度でもさよならのあいさつくらいしたかった。兄妹もいたし。まだ拓と悪ふざけしたい。
どうすっかと思っていると、ふと照のヤツが
「今の巫女って誰なんですか。」
「今は私です。私は飛び抜けて光魔法が使えるので、他の魔法は使えないんです。」
とアリアさんは自嘲的な笑いを含んだ答えを返した。
その時、直感した。なぜかは分からないけど、この人は悲しんでる。巫女になったことも、俺たちを召喚したことも。わからない、けどこんな小さい、俺と同い年くらいの美少女が悲しんじゃいけねぇ!
そう思った。理屈なんて知らない。けどそう思ったんならしょうがねぇ!
「俺が魔帝とやらをぶっ倒して帰るまで、巫女さん、アンタを守ってやる!!」
と高らかに誓ってしまった。よくよく考えれば一番ムズイ誓いじゃね?という話なんだがアリアさんは
「アリア、でいいですよ。真二さん。」
と笑顔で答てくれた。まぁいいか、と早くもちょっと後悔気味だった誓いはアリアの笑顔で帳消しになった。
けどまだオレは知らない。知る由もない。
オレたち英雄にもたらされた力を。
この世界の国々に渦巻く闇を。
オレたちや周りの人たちが隠しもってる秘密を。
そしてオレたちを襲う大いなる敵を。
このオケノアスを舞台にオレたちの戦いが今始まろうとしていた。
どうでしたか。お気に召しましたら、ご感想よろしくお願いします。
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