犯人
遠くの方から声が聞こえて来た。私の所に来て下さいよ。私の所に来て下さいよ。どうしてみられませんか。
声が声高に響き続ける。止む気配もない。
ここに居るのです。どうか早く探しに来てください。
彼はある者に追われてしまい、自分でどこにかくれたかわからなくなってしまったので、それで仕方なく、声を出し探してもらうように声をあげたのである。
忘れてしまったのです。自分でもどこに隠れたか忘れてしまいました。ここに居るのです。お願いです、探し出して頂かなければどこに居るか分りません。抜けだすことが絶対できないのです。みつけだしてください。どうか。
返事の声が返ってくる。
無理だ。お前に見抜かれているから探し出すことが出来ない。君を探し出したら私は嫌疑に立たされることになってしまう。すまないが君を探し出せない。
実は私にも罪がある。私も彼を援けたのだ。君だけのせいではない。もし私がなかったら君だけに嫌疑がかかってしまう。だが私が居るとまだ解決しないままでお流れになるであろう。
本当か。どこにそんなことを信じる証拠がある。そう言いながらも恐る恐る歩み寄っていた。突然ドアが開けられる。
と私の殺しかけた男とスピーカーが目に付き男は死にそうになりながら狭い四角の部屋に地べたに寝ころんでいた、彼は信じられないという風にうろたえ、あとずさり、自分で死のうとしたとき、誰かが彼を制した。
彼は夢ではないかとうたぐった。
トイレに蹲っていた男に向って銃が遠くからうたれた。銃弾の罪を打ち消すように轟音が鳴響いた。その銃弾の罪を打ち消すようにまた銃弾が撃ち込まれた。それがひっきりなしに続けられた。
彼は最後に誓ったのだ。どうか許してください。私は安易に警察に行きません。そのかわりひっそり暮すつもりです。このまま生きていくつもりです、と言って後ろの彼を殺したのだ。




