蒼介篇 シリトとハラキリ丸〜漆〜
毎日21時更新します…
資金調達部門や研究開発部門。
その後も戦争の為であろうキナ臭い内容の報告が続く。
すると突然。
会場のライティングによる演出やBGMが終了。
暫しの暗転後、ホールの通常照明に切り替わる。
ステージには明らかに『堅気じゃない』連中が三十名程登場していた。
ノギクが実に事務的な口調で進行を進める。
「続きまして特殊戦闘部門。蒼狼隊紅玉組組長代理尾形さん。報告お願いします」
誰もスーツは着ていない。
一人、三十代と思しき相撲取りのような体型の男が前に出て来た。
顔面蒼白の滝汗。
コイツでさえこれまで出会った事がない程に、強い。
隣を確認すると……親指の爪を噛みながら笑ってた。
少し安堵するオレ。
「は…………えー。先日東京におきまして、その」
男が声を詰まらせる。
「組長の石切宗吾が〝同族殺し〟と戦闘を行い……殉死致しました」
水を打ったように静まり返る場内。
会長はステージ下で椅子に座って見ているらしい。
マイクを通して声だけが響き渡る。
「はい、えー、お疲れ様でした。紅玉組は何人編成だっけ。ノギク」
「二十九名です」
「よし、じゃ全員切腹な」
周りの空気が一変した!
大会の参加者全員が。
血眼になってステージを食い入るように見つめている。
「ハ〜ラキリッ、ハ〜ラキリッ」
コールがぽつり。
それは徐々に熱を帯びていき、やがて会場は熱狂的なハラキリコールで埋め尽くされる。
獣達の唸り声のよう。
「うおぉおぉぉおぉおぉぉおおおッ…………」
ステージ上では二十九人全員に短刀が渡されて皆、思い思いに腹を斬っていく。
この異様な光景を更に際立たせているのが。
全く同じ顔をした若い男女。
身の丈もある大マサカリで介錯して回っている。
お揃いのデニムジーンズに女子は白のブラウス、男子はチェックのシャツが各々真っ赤に染まっていく。
女子の方が短髪を振り乱しながら、金切り声で会長目掛けて叫んでる。
「同族殺しは金剛組組長、轟姉弟に仕留めさしてや会長ォオォーッ」
男子、弟の方は黙々と首を斬っていく。
「石切さーん、愛してたのにィイィーッ」
この師弟。
信じられない程に強い。
姉は単純な強化系だがパワーは加藤さん並み。
そして、弟。
コイツは姉に合わせて大マサカリを使ってるけどコレはブラフだ!
実際は幻術使いで姉とのコンボで敵を倒すと思われる。
蒼狼隊は十二組編成。
まだ後十人もこんなモンスターがいるのか…………
「先、出てろ」
ハッとした。
林道さんが戦闘体勢に入ってる。
オレは首をブンブン振って止めようとしたけど。
鬼の血が滾るのを感じる。
あれだけの血を見せつけられたんだ。
もう理性では止めるのはムリ!
仕方ない……
「失礼します!」
殺される覚悟で林道さんの股間に手を差し込むオレ。
そしてズボンの上から〝観音様〟をまさぐった。
ビクビクッと反応する小柄な彼女。
受け入れられた!
バンパイアは不要な戦闘を避ける為、オナニーに及ぶ事がある。
これは戦時下とかで普通に見られた光景らしい。
今、周りにもアチコチで自慰行為や中には性行為に及んでる連中もいる。
もちろんオレはこんな現場初めてだけど。
本来なら林道さんは止まらなかった筈だ。
でも東京でのハラキリ丸暗殺計画の重要性を理解してたから、オレに身を任せてくれたんだと思う。
なので頑張ってキッチリと逝ってもらった。
事が終わると軽くオレの頭を小突く彼女。
「あんがと」
ステージ上ではハラキリショーが終了。
場内の雰囲気も心なしか気だるい感じになっている。
ま、なるけど。
ここでノギクが口を開く。
「来月、世界中の始祖十五名による始祖会議が行われる訳ですが」
「確か十年に一度だったかな。全員集まらないところが笑えますね」
ハラキリ丸が答える。
対談形式?
「今回は議題のひとつに会長が人間社会とイザコザを起こそうとしている、という内容が含まれるようです」
「ハッハハー、呑気な長老のガキ共ですね。自分らも的になってるとは考えもしない」
会場に巻き起こる大拍手。
「その前に同族殺しに加担していたシリト一派との話し合い。これが東京で行われます」
「はい。まずは話し合い。シリト派の皆さんには、我々の傘下に入っていただいてですね。共に世界征服を目指そうではないかと」
「あちら側が要求を蹴った場合は?」
それまで被っていた、正に羊の皮をチラと脱いで見せる狼の王。
「まずは座敷わらしのシリトを殺す。その後に」
唸る、人類史上最大の帝国を築き上げた男。
「生意気な同族殺しの小僧を殺る」
それではまた…




