須木奈篇 リハビリ野郎とSS姉さん〜弐〜
毎日21時更新します…
「じゃあ、行きますか!」
佐部さんとほっぺたを十二時に出発。
地下鉄に乗り込む。
交通費は利用者さん持ちだ。
あれから二週間。
佐部さんは無事退院出来た。
そして今日、金曜日はスピードシューティングデビューの日!
自前の装備一式を持ち込んでる私。
忘れ物の有無が今頃になって気になってます。
さっき佐部さんに切符買ってもらって手渡された時、少し嬉しかった。
何かデートぽくね? 仕事とはいえ、ホラ。
空色ポロシャツユニフォームだとテンションちょいサゲだけど……約得約得。
「あらスッキー、今日は男連れ?」
ASSHOLEに到着してドアを開けた瞬間から佐部さんを物色し始めるフジコオーナー。
相変わらずのグラマラス皮ジャン。
「……いい男ね〜」
「レンジ行きましょか。佐部さん」
受付で不穏になられても困るので。
グラスをつけて、そそくさと準備を整えボックスイン。大人しく見ている彼。
「まずやってみますね」
自分でシューティングタイマーを操作する。
プーッ。
パパンパンパンパン!
ラウンドアバウトの的を5発で撃ち切る。
スコア3・12。
自分でも綺麗なランで思わず笑顔。
ヤダ、この仕事楽しい!
「とりあえず一発撃ってみますか?」
佐部さんをボックスに立たせて銃を渡す。
彼はしばらく不思議そうに銃を観察していたけど、おもむろにスライドを少し引いてチェンバーを覗いた。
「あら、実銃撃った事あるのね」
いつの間にか後ろに張り付いてたフジコさん。
この人、これでも日本の有名なシューターなのだ。
「マガジンに丸い弾詰めてある」
「マガジンにはガスも注入してあって、その圧で飛ばすのよ」
嬉しそうにしゃしゃって来る。
私が教えようと思ってんのにー。
「操作は本物と同じだな」
そう言って私の銃を私のホルスターにインすると、両腕をぷらんと下ろしてから。
稲妻のような早撃ち!
辺りは生ガスが漂う。
目が真ん丸になってる私。
「ウソ! 今、全弾当てたんじゃない?」
フジコさんが興奮してる。
全然見えんかった…………
「スッキー、タイマー!」
本場で実銃大会に参加してるフジコさんが狼狽える程、さっきのランのスピードは異常。
体感だと軽く1秒切ってた。
セミオートガスガンの性能限界値で撃ったの?
「プウッて鳴ったら撃って!」
「真ん中一番最後ね!」
「ハンズアップ!」
プーッ。
パン、パン、パン、パン、パン。
スコア4・75。
唖然とする私達。
「普ッ通うぅぅぅ……」
フジコさんがうんち出る感じで唸った。
◆
◇
◆
本院裏、遊歩道の桜がぽちぽちと色をつけ始めた。
信号を挟んだ噴水広場の遊歩道も同じく、それなりの桜並木が出来上ってる。
春の到来。
佐部さんは面会中。
「何だ」
「お、お久しぶり……です。蒼介っス! 今日はシリト様の伝言を持ったきたです」
相変わらずアワアワしてるな。
サングラスかけとる蒼介のクセに。
パーカー姿はいつも通り。
それにしてもこの二人、普段と違う服着ると死ぬ呪いにでもかけられてんのか、と思う。
スウェット&パーカー。
事務所で聞き耳立ててる私。
「え〜と、佐部さん。伝言、言いますね。『先般の貴殿の配慮に感謝の意を示すと共に、我が同族の殺害においても正当な果たし合いの結果であったと認め、仇討ちには及ばないとの決断に至った』との事です」
「仇討ち?」
「あ、ホラ。前トラックにぶん投げた……」
「あー」
「…………」
「何だ」
「あ、イヤ。日本でもあんたの名前知らない鬼はいないし、そのォ……聞きたい事があるんだ!」
「面倒」
「ああんたはヴラドの眷属だろ? 眷属が始祖を超えるのは不可能だ。なのに…………一体どうやって倒したんだんですか?」
「簡単」
「え? か、簡単? 始祖殺しが?」
「うん。昔の事はよく覚えてる」
この展開……
もしかしたら佐部さんの妄想話、始まるかもだ。
今日は日曜で職員は私一人。
お昼休憩を先延ばしにして、ゆっくりと話聞かせてもらおうかな。
スタンバる職員。
それではまた…




