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須木奈篇 病み男と鼻血女〜弐〜

毎日21時更新します…

グループホーム略してグルホ。


一般的には高齢者の、となるかもだけど。

ほっぺたは障害者の方の入居施設なのね。


人通り多めの歩道沿いにある六階建てのビル。

階段上がったトコの正面玄関を入って突き当りが私達職員の激セマ事務所です。


受付があってデスクは四つ、玄関モニターが一台。

そのモニターには看護師さんに連れられた佐部さんが映し出されてた。


「今日退院(エント)即入居の佐部さんだね。二十五歳のイケメン。うむ、職業は吸血鬼か!」


フェイスシート見ながらベテラン生活支援員鈴木さんレポが入る。

スキンヘッドのガリガリ独身おやじ。


「吸血鬼に生保スか?」


同じく生活支援員田中さんの鋭いチェックが入る。

小柄で茶髪な眼鏡女子。

私より四つもお若い。


「イヤ田中くん。彼は生活保護はおろか障害年金すら受給していないようだ」

「資産あるみたいです。身内いませんけど」

「や〜ん、何かカッコ良く見えてきたッス〜! アプローチしてみよっかな〜」


私より四つも若い田中さんがはしゃぎ出す。

齢十九にして婚活女子ってマジらしい。


「瀬見くん、さっさと部屋に案内してしまえ!」


荒ぶる鈴木。

イヤ、田中さんは無理だからなお前。

己のスペック考えろ……て思いつつ。

言える立場じゃないか、とか一人ブーメラン。


「……やっぱ私が担当しないとですか鈴木さん。自信ないんですけど」


黙って両肩をポンポンしてきた。

すかさず婚活眼鏡さんからの重い一撃。


「白木さんにセクハラ報告するッス。ハゲ」

「それは堪忍してくれないか田中くん。誤解です」


スキンヘッドに玉のよーな汗が光る鈴木。

お二人のやり取りをシカトしつつ緊張の面持ちで玄関に向かう私。


看護師さんから佐部さんを引き継ぎする。

あー、イヤホンしてるなぁ……


『荷物くらい自分で持ちなよ佐部さん。ここはホテルじゃないんだぞっ』とは言えず。

大きめのスポーツバッグひとつ持って佐部さんとエレベーターに乗り込む。


「ドアが閉まります♪」


女性アナウンスの声が流れると四階まで無音状態。

ついさっき弱音吐いちゃったからかな。

異様に気まずゥ!


「えと……ほっぺたは身体・知的・精神の三障害対応の入居施設なんですけど。精神科病院の法人グループだから入居者さんはすべて精神の方なんで大丈夫!」


何が大丈夫なんだ私。


「…………頓服(とんぷく)


一瞬にしてエレベーター内が凍り付く。

正確に言うと私が、だ。


「え? 頓服って具合悪い時に飲むヤツ?」


イヤホンしたままその場に体育座りキメる佐部さん。


「あ。イヤ私薬わからん、幻聴出てんのかな。ちょっ、佐部さーん?」


ピシッと。

膝の間に顔がはまってて、そういう生き物なのかと見紛(みまご)う程の出来。


改めて、綺麗な男だなーと思った。



「退院即入居で疲れたんだろう。少し休めば回復すると思う!」


四〇三号室まで佐部さんを移動介助した鈴木さん。


「明日白木さん来るから報告ッスね。お疲れシタ!」


バッグから素早く頓服薬を探し出し、服薬対応した田中さん。


『ムリムリムリもうムリだコレ全ッ然わからんんん』


佐部さんをエレベーターに一人残して。

小学生が職員室に『この子具合悪そうでーす』と報告するが如く、事務所に駆け込んだ私。


怖いよ……この仕事。

それではまた…

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