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2-42.こばたけ、そしてハッピー・ファミリィ・プラン

 昼下がり、メルに手配された馬車に乗って帝都の中心近くまで来た。こんな帝都のど真ん中なのに、住宅街のようだ。


 メルは忙しく動き回っており、レルリラさんのキスの件は結局、聞けず終いだ。


 すっかり曇り空だ。雨が降る感じでもないが、寒い季節にこういう天気はありがたくない。余計寒々しく感じる。


 そこで待っていたフィエは、俺に対して不思議な要求をしてきた。


「コバタ家を作ります。


 以前、わたしの旦那様には『わたしの頼みごとをいっぱい聞く』と言質を取ってあります。同意して」


 フィエは張り切っている。よく分からないことを言ってはいるが、張り切っているのだけは分かる。


 あと、何の異論もないしむしろ嬉しいが、いきなり俺を『旦那様』と呼んできた。……どういう心境の変化だ?


「えとさ、フィエ。唐突だからまずは説明して。


 内容もよく分からないで同意するのも、それはそれで良くないし」


 フィエはエヘンと咳払いをして話し始めた。得意げでかわいい。


「コバタとわたしは、まだ婚約段階とはいえ実質夫婦。つまり家を構成している。


 ララさん、アーシェ様、クィーさん、ククちゃん、メルちゃん、そしてレルちゃんを家族の一員として『コバタ家』を発足させようと思っています」


 んんん? ナニソレ。フィエの口振りからして、名目が変わるってだけの話でもないような気がする。


「御家を作るってこと?


 建物を建てるのではなく、みんなが家族扱いになるってことでいいの?


 それと……レルちゃん? ってことは道化師のレルリラさん……ええと前にも説明しました通り、あのキスはですね、俺からした訳では無くてですね。おそらく試合の興奮で……」


 俺はつい言い訳を始めてしまった。悪い癖だ。


 だが、凄く後ろめたい出来事でもあるのだ。……だってフィエに『婚約指輪』渡してから間も無くの出来事だったし。


 だが、フィエは落ち着いた表情で俺の唇に指を当てた。俺は言い訳をやめ、黙った。……なんだ、フィエから風格のようなものを感じる。


「コバタ。わたしは奥方様だから夫のあなたに進言します。


 もう、コバタがやたらと女の子を引っ掛けちゃうのに、浮気だどうだとか言わない。子供がしばらく作れないなら、他の方法で家族を増やそう。


 わたしと仲良くできそうな女の子なら、認めます。楽しい家族を作ろう」


 …………言っている内容は分かるが、理解が及ばない。


「……ええと、俺、フィエが一番なんだけど」


「だ・か・ら、わたしが一番! 奥様! 奥方様! わかってる!


 わたしはもう、それをしっかり自覚できた。今まで不安な部分もあったけれど、コバタがいつでも『わたしが一番』と思ってくれているのはもう疑わない。


 ちゃんとこの指に、形を持った証がある。……まさか、ウソの贈り物だなんて言わないよね?」


「そんなことあるわけないの、フィエが一番分かってるでしょ!


 俺はフィエと! ……あと他のみんなと。


 お爺ちゃんお婆ちゃんになってお墓に入るまで連れ添う気だから」


 この一連の難事が去ったなら、幸せに末永く暮らして、みんなでのんびり老後生活を送りたい。それは俺の本音だった。


「よく言った。同じ墓に入ろう。


 それで、同じ墓に入る子を一人増やします。ウチの子にします。


 ……道化師のレルリラさん、レルちゃんもウチに引き入れます」


「……やっぱ、あの闘技場でのことがあったから?」


「まぁね。それと先ほど様子を見て、彼女は真剣に苦しんでいるように感じた。


 いきなりアレコレしろなんて言わないけど、近くに置いて気を楽にしてあげないといけない。……コバタ、わたしの旦那様。あなたが原因。


 まずは『迎え入れる意思を、旦那様から』伝えなさい。


 わたしの見た感じ、あのキスされたときのコバタって受け入れてた感があったんだよね。わたしも『また増えたか』と感じたし」


 フィエは図星を突いてくる。確かにまぁ……可愛いと思っていました。はい。


「……でもさ、その。


 メルが言うにはレルリラさんって、王家のお姫様らしいんだけど」


 それを言ったらククノも、それにララさんもそーかも知れないのだが、一応確認しておかなくてはならない。


「……ふーむ。そうなんだね。


 別にいいじゃない。奥方様はわたしなんだし。それくらい許容範囲だよ。余裕。


 わたしが『王家の血』に負けると、旦那様は思ってるわけ?」


「いえ、フィエが一番です。俺の嫁です」


 確かに、これだけは変わらない。おそらくは俺の人生が終わるまで。


 おそらくを付けたのは、あの世でも来世でもそうなるんじゃないかと思うからだ。

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