3-48.偵察姉妹分析 -Analysis of scouts-
俺がトゥイと朝帰りをしたことに、双子姉妹は嫉妬と非難の視線を向けてきた。
……まぁ、当然だろう。彼女らは昨日も仕事だったのだし、キスをしてドキドキしていた相手が、トゥイに付けられた大量の朱印を残して帰還したのだ。
赤く肌に残った跡は『癒しの帯』を使えば消せるのだが、トゥイの心情的な部分を考えて、俺はあえて残したままにしていた。
だって、トゥイ視点から見て『自分の付けたキスマークを相手に治療される』って結構キズ付くんじゃないか。
なお、トゥイからはこう言われた。
「私への気遣いは要らなかったんですけどね。
……そういうとこ、優しいですけど。
……そういうとこのせいで、"弄んでる感"が出てしまっているのでは?」
「そうは言うけど、トゥイだってさ……!
拠点に着くまで、そうは言ってくれなかったじゃない……!
消していいなら言ってよ……」
「んんん。……実は心遣いが嬉しかったので、黙っていました。ふふ。
あと、娘っ子ふたりに優越感を感じてみたかったんです。
だって、『デートは私より先に、あっちのふたりがしている』でしょう?」
「……トゥイ、意外とドロドロ感情あるんかい」
俺は『癒しの帯』でキスマークを消そうとしたが、双子からの抗議があった。
「お兄様、隠し立ては無用ですよ」
「お兄ちゃんは、私らの嫉妬に対処する義務があるよね?」
そうして俺は、ティフェとディドアに寝室に連れ込まれ、服を剥ぎ取られた。下着だけは何とか許して貰えた。
「……はち、きゅー、じゅー、じゅういち…………」
「七、八、九……ほら、お兄様、こっちの脚を上げて……十、十一」
そして……全身に残ったトゥイからのキスマークを、双子ふたりの細い指でなぞられながら数えられるとか言う、異常な事態となったのだった。
「あの、えーと。ティフェ、ディドア。ごめんなさい。
何で数えるの?」
「お兄ちゃんの罪を数えているんだよ……ティフェ、こっち15ね」
「こちらは13ですね。
全身に……28箇所の吸い跡ですよ?!
跡が残らなかったものを含めれば……どれだけの数を……!」
「お兄ちゃん。私らの純情、踏みにじったねー?
私としては、ふたり合わせて56箇所以上、お兄ちゃんに跡を残したいかな。
それに加えて、こうなったら私らの純潔も散らして頂く他ない」
「やめてディドア! 合計すると84箇所以上になる……。
俺の身体がまだら模様になっちゃうから……ッ!
それに『純潔を散らす』とか気軽に言っちゃダメ!
それはもう少し段階を踏んだ後であってもいいんだ。
まだふたりとも若いんだからね、焦らないでいいんだ。
今しかない青春にもう少し、ふたりには普通の経験を……」
「では、お兄様。
ディドアの案が無理というなら、私からも対案を出しましょう。
我々は、傷付いた『乙女尊厳』を回復せねばならないのですから。
そうですね、やや過大な要求やもしれませんが……。
『まだ奥方様としか、したことが無いこと』を願います。更には『乙女としての純潔を奪わぬ範囲の内容であること』を要求します。
……我々は後から来た身の上です。奥方様が絶対というのも重々承知の上。
一番手は望みません。ならば、二番手となるものを下さい」
「……まだ、フィエとしかやったことが無いこと……?
それでいて純潔を失わない……。
…………あ」
「なにか頭に浮かんだんだね、お兄ちゃん?」
「い、いや……これはダメだ。
パッと思いついたけど、君たちにはまだ早い。今はその時期じゃない」
「なんなのです?
言って御覧なさいませ、お兄様」
「俺は、ティフェとディドアにはマトモな恋愛経験をさせたいんだ。
これは少し……危険が伴うし、準備もいる。
そして、一応アブノーマルなんだ。決して普通の内容じゃない。
創作ならともかく、リアルで軽々にやっていいことでもないんだ。
……それに『純潔こそ奪わぬ』にしても……これをしてしまった後は『純潔』と呼んでいいか分からなくなる」
「お兄様、それで? 回答は? 内容の回答が為されていません。
『マトモな恋愛経験』とは申されますが、既にお兄様にはお手付きとなった相手が家中に7名……いえ8名います。
私たちが好きになったお相手からしてこうなんです……これを『マトモ』と?
さらに言えば、マトモかどうかなど個々人の認識によって変わるのです。
さぁ、言って御覧なさい。お兄様。
私たちふたりで、可否を判断しますから」
「…………。
……多分、嫌がられるだろうし、やることはないよな……。
…………。
オシリだ。……本来は出口専用である部分を、出入口とする」
「え、いやぁ……」
ティフェが小さく声を上げる。
ディドアは、俺の股間の方を注目しながら言う。
「……確かに、それやって本当にいいもんですかね?
お兄ちゃんの鋭牙が、お尻の穴に……?」
ふたりとも、どうやら現実的な分析をしてくれている。……そうだ、普通に考えて『想定外の用途』に使ってはいけない。危険だから。
「…………。
でも、『それを受け入れることも、お兄様に尽くすこと』と考えれば……むしろ私は望むところかもしれません」
ティフェは最初、嫌がる声を発したというのに何故か思考を修正してきた。
確かにティフェって『相手に尽くしている自分が好き』という意味合いのことを言ってはいたけど、これはちょっと違うんじゃない?!
「んー。ちょっと怖くはあるけど『お兄ちゃんがしてくれる』んだよね。
なら、イヤって感じはしないかな。好きな人がしてくれることなら」
ディドア……ッ! 行為の内容がコレでなければ、それは嬉しい発言なんだけどさ。……でも内容がコレだよ?! そこは寛容になっちゃダメでしょ!
俺は双子間で結託される前に異論を挟むことにした。
「やはりダメだ。俺はふたりが大事なんだ。
性急に行動してしまうと、『大切な筋肉を傷付けてしまう可能性』がある。
適切に洗浄を行なってからでないと、『病気の元となる可能性』がある。
それに本来、『時間をかけて慣らしていく必要がある』んだよ。
あとは『慣れるまでは、単に苦痛となってしまう可能性』があるんだ。
様々なリスクがあるんだ」
俺はふたりに、肛門による交わりで起こり得るリスクについて説明した。
……しかし、これは失策だった。彼女らは『対策の分からない未知の行為』にボトルネックを感じていただけだったのだ。
彼女らは『危険地に最初に飛び込む斥候』の心意気を持っていた。職業病だ。
そして、『俺から得た事前情報を精査し、対策を吟味する』ことを始めた。
「ふむ。そういった知見があるのですね、お兄様。
『性急に行なうとリスクがある』なら、そうしなければいいだけですね。
『充分な洗浄』は、極秘斥候任務時の『ニオイ消し』の要領で良い。
『慣れるまで苦痛の可能性』はむしろ、お兄様がしてくれるなら……」
「私もその点、問題あるようには感じないねー。
あとさティフェ、『時間をかけて慣らしていく必要がある』のは私らにとってむしろメリットになり得るんじゃないかな。
……お兄ちゃんを長時間、もしくは回を重ねて占有できる。
それに『まだ、奥方様にしかやってない』んでしょ?
……家中メンバーにおいて、当面の精神的優位を確保できるのでは?
それに『それをやっても、純潔は損なわれない』のだから問題ないね」
そうして、ティフェとディドアは完全に結託した。
……俺はこれより、完全な鬼畜となる。……なってしまう。
可愛らしい双子姉妹。両者からは『お兄様』『お兄ちゃん』と呼ばれている。
要求された行為は、創作ならともかくリアルでは意見が分かれるものだ。
……もし、ふたりが『不快を感じ、中断する』ならまだマシだ。
もしかして。もしかして。
ふたりが『快感を覚えてしまい、継続を希望する』のならば。
俺には死後の安寧はない。神の裁きを受け、地獄に落ちることだろう。
<きっと、地獄の裁判官も羨ましがるからな。判決は厳しくなるよな>
……黙れ邪心。
<可愛い双子姉妹から、義兄扱いを受けて、完全合意の上、シリアナ開発>
……黙れ邪心。
<ふたりがさ、それで快感覚えるようになっちゃったらさ、ステキやん?>
……黙れ邪心。
<……まぁ『うまくいくとは限らない』からさ、気負わなくていいさ。
決して急ぐなよ。ちゃんとふたりには『丁寧に優しく』してあげることだ。
イキナリ『気持ち良く』なんて無理だろ。せめて心を楽にさせてやるんだ。
コトの成否はともかく、あの娘たちのQOLが下がらないように注意しろ。
もしもあの娘らの身体に不調が出てしまったら、それは誰も得しないだろ。
アフターフォローも忘れるんじゃないぞ。心のケアだ。優しくしろ。
あの娘らのトラウマ体験には絶対するなよ。終わった後こそ、肝心だ>
……わかったよ邪心。アドバイスありがと。俺……頑張るね。
そうして、俺と双子姉妹は夜までに準備を終え、寝室に集合した。
ふたりは、だぼっとした上着だけを着ている。……俺のシャツだ。……チクショウ、始まる前からかわいさMAXとは。
湯浴み後まもなく、少しシットリしたままの、ふたりの髪からの芳香。……こんなにも可愛いふたりを、俺は……この指で汚すことになるのか。
ふたりの純真さは、きっと失われることだろう……。
今宵、清潔夜具の上で行なわれるのは、異常なことなのだ。
俺による暗中模索で、本当に何とかなるものなのだろうか。
ともあれ賽は投げられた。一天地六。どんなサイの目が出るかは、わからない。
(略)
…………。
『お兄様。まだ初日ですから、これからも続きを』。ティフェにそう言われた。
『お兄ちゃんが、優しく気にかけてくれて嬉しい』。ディドアはそう言った。
どうやら、俺の指は。……俺の両手両指は。
俺が思っている以上に、繊細に機能しているようだ。
俺は事前準備として爪を切り、丸く削り、指の角質も全て削った。
間違っても病ませるわけにはいかない。洗浄は念入りに行なった。
施術中も、ふたりに語り掛けたり、励ましたり、色々と気遣った。
そうして得られた結果が、ふたりからの言葉だった。
どうやら、あのふたり……あの双子姉妹は。
…………。
えーと、その。
…………。
そろそろ、戦争が本格化するんだし、こんな日々が続くわけないよね。
…………。
なんて言うかさ、『特定箇所が特定部位に入っていないからセーフ』っていうのはかなり、詭弁だと思うんだ。
むしろ、今の状況はとんでもなく、普通よりインモラルなのではないか。
<大丈夫、大丈夫。いい仕事していたよ(y)
指だって丁寧に前処理されていた、落ち着いて安全な動きも出来ていた。
まさか今日だけで、あんなにもズッポリ成果が出るとは思ってなかったよ。
それに双子ちゃんたちの手も、初々しくて繊細な指使いだったよね>
……黙れ邪心。お前は最近ちょっとお喋り過ぎなんだよ。
…………純潔って、なんだろうね。きっと、単なる言葉。
………………こんなにも爛れた純潔ってあるんだろうか。
…………まぁ、ふたりの笑顔は純なまま汚れていないし。
……楽しくて気持ちよかったんだから、悩む必要はない。
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