3-44.【キーアベルツ】狂人のフリをした狂人
内部の直接確認。任務完了。
内部人員は、事前調査の通り。新規加入した人員3名。
トゥイーズセッケル、ティッフェルンブ、ディドアフォラツ。
これら3名の背景調査から、事前に予測された範囲で話は進んだ。
今後の計画に支障なし。
下見調査の所見からして、相手偵察組の探知能力は『非常に高』だが、経験が足りていない。露見せぬままに終えられた。
……んまぁねぇ、あのニィちゃんとのロマン真っ盛りだからね。注意力がちょっと散漫になっちゃってもしょうがないね。若い女の子だもん。
対象建造物への接近は機を見て遂行した。4人が揃っている状況で、一度に対面調査を行なう必要があった。複数回の訪問はワナを張られるリスクが高い。
……まぁねぇ、本来オレはロマン真っ盛りな中にワザワザ行く趣味はねーし。他人のロマン見せつけられるとかね、ちょっとそういうの心が痛くなっちゃうし。
哨戒レベルのわずかな低減。拠点は隠れ家であるのに、焼き菓子の匂いを放ってしまうという油断は、相手の危機レベルの上げ方を見るのにも良かった。
……まぁ、偵察組は警戒レベルをしっかり上げていた。ロマンある生活にオジサンが入ってきたら、ちょっと怒っちゃうよね。妹ちゃん達には悪いことしたなぁ。
飲料、軽食に毒物のないことは予見できた。焼き菓子のニオイから危険なものは混入されていないことを察知した。茶飲料も湯気から精査したが問題ナシ。
……ま、予見しない来訪だったしニィちゃんから『敵対するな』って釘を刺されていたしなぁ。冬で良かった。もしもアイスティーだったら毒の感知遅れるし。
相手方と対話から、向こうの今後の行動予測は出来た。此方よりは兵数が多いものの、彼らも寡戦となる以上は兵を遊ばせてはおけず、分散し情報収集か。
……あの嬢ちゃん、若いけどこっちの思惑を見て取っていたな。才能あるヤツが叩き上げながら成長するとああなるよね。オレもそう。
……嬢ちゃんは非戦闘員だ。魔法は使えるが、利用に慣れていないのは調査済。偵察組も戦闘は最低限。ニィちゃんは……うーん、分かり辛いね。保留。
……嬢ちゃんに指定された先は、ウイアーン東部の破棄済み砦。法将マファクが率いるペリウス軍への警戒位置としては中の上。……別に行く必要ないかも。
俺にとっては、マファクが先か、ケルクキカを先にするか。そこが問題だ。
さすがに国難ともなればケルクキカは対処に駆り出されるだろう。表に出る。
よって、しばらくは様子見して両者の動きを見る段階だ。動いてから狩る。
…………しかしまぁ、オレとマファクとケルクキカか。狂った奴しかいねーじゃん。世の中をフラ付いていていい面子じゃねぇだろ。
……この『執行』に巻き込まれる皆さんがカワイソーだわな。異常者同士のドツキ合いに、一般ピープルが被害受けちゃうのはオレ的にはナシなんだけど。
しかし、執行せねば。
生かしておけば、必ずや人々に害をもたらす。
魔法とは素晴らしき力だ。ゆえに、異常者が扱うならば危険だ。
悪しき魔法使いは、滅せねばならない。
…………。
……まぁ、やっぱ嬢ちゃんに紹介されたところに素直に行っておこうか。だってしばらくケルクキカ出て来そうにねーし。
……そっか。ニィちゃんの女とは言え、カワイイお姉ちゃんがいる拠点にお邪魔できるわけだし、悪くないよね。楽しくお喋りすればテンション上がるしさ!
そうそう! きっと今日みたいにさ、歓待してくれるはずだよね。ロマンの望み過ぎはイケナイけど、そういう希望は持っちゃってもいいよね!
楽しみだなぁ。オレ予測だと、クールっぽい魔法使いのお姉さんいそう。あと一人は誰かな? ちょっとワクワクしちゃう!
白馬の王子様……いやいや、今はナイトだったな。勇敢なる騎士様として、美しきご婦人の助けになるよう行動してみるのも悪くないよね。
呼び方……おじちゃん、おじ様か。
…………いやー、いい呼び方だ。ホント。…………。
いや、異常はなかった。異常はなかった。気にするな。
さすがにこの年齢だと、おじちゃん呼びになっちゃうのは仕方ないよね。
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