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3-37.強烈なゼロ


 トゥイは寝間着姿で、俺の寝室に来た。


 エッチなことになる……と一瞬思ったが、微妙にトゥイの目つきがおかしい。酒の匂いもした。


「おう、コバタにぃひゃん。一緒に、寝る。寝るよ」


 どうやら自室で個人的に晩酌していたらしい。微妙にろれつが回っていない。……でも、トゥイって酒強くなかったっけ? メルの親父さんと飲み明かしてケロっとしていたはずなのに。


 微妙にふらふら、戸口のあたりで立っているトゥイを俺は招き入れた。……まぁトゥイに好意は持って貰えているようだから俺的に問題ないけど。


 部屋に入ったトゥイは俺に、勢いに任せたように抱き付いてきた。……ぬぬぬ、可愛いけどちょっと解せない。何でこんなになるまで酒を飲んでいる?


「どうしたの、トゥイ?


 うん、強いお酒飲んだのは分かる。……そんなにお酒飲むタイプだったっけ」


 トゥイは、ちょっとだけ俺の顔を見上げて、それからまた俺の胸板に顔を埋めてグイグイとベッドの方に押そうとする。


 かわいい。とってもかわいい。……でも解せぬ。解せないのだ。


 トゥイの雰囲気的にどことなく、陽気な酒の飲み方ではないと感じた。


 ……うーん、なんていうか『俺とエッチすることへの照れ隠し』とも感じない。単に何か不安を抱えて心細くなっているような、そんな雰囲気だ。


 俺はトゥイを胸に抱えてゆっくり後退していき、そっとベッドに寝転がった。


「ホントどーしたの? トゥイ。


 なんか不安になることでもあった? 話聞くよ、聞かせて」


 俺としては、酔っ払い状態なトゥイには心配さを感じてしまう。……女の子はほろ酔い程度ならエロく見えたりもするが、深く酒に酔っている状態は生命維持的に不安だ。


「うぅ、う、う。


 ゼロ……、ジェロにゃのがやっぱり、ちょっと、不安にゃの」


 トゥイは酔うと猫系になるのか? まだ言っている意味がよく分からない。


「うん。……なにが今、ゼロなの?」


「……個人預金。にぃしゃんを信じてじぇんぶ賭けたけど。


 自分のベッドでにぇてたら、にゃんか不安に、にゃってきちゃったの。


 しょれで、おしゃけをにょんでたの」


 ……なるほど。『コバタ家に全額投資する』と潔く共同預金にしたものの、やはり不安になってきてしまったということなのだろう。


「大丈夫、大丈夫。


 メルがちゃんと預かってくれているし、俺が当主として『トゥイからの投資分』はしっかり保証させるから。


 取られちゃったわけじゃないよ。大丈夫、大丈夫」


 俺はトゥイを抱き締めて、頭や背中を優しく撫でる。まぁ気持ちは分かる……こういう不安って、急に来たりするからなぁ。


「兄ひゃん、じぇったい、放しゃにゃいでね」


「うん、大丈夫。ちゃんとトゥイのことは守るよ」


「……信じるのって。


 信用しきっちゃうのって。


 にゃれにゃいことだから、こわい」


 トゥイは更にギュッと俺を抱き締めてくる。俺は軽く抱き返したまま、しばらくされるがままにする。


 なんとなく……トゥイの不安さが、少しずつ落ち着いていくのが分かる。しがみ付くようだったトゥイの腕の力が、少しずつ弛んでいったから。


 俺はトゥイの顔をこちらに向けさせ、その額に軽くキスをする。


「トゥイ。俺はここにいる。


 トゥイの不安が和らぐように、明日の朝までだって、側にいるからね。


 ……あ、おしっことか大丈夫? 心配ならついて行って待ってるから。


 とにかく俺は、担保でも人質でもなんでもいいから、トゥイの近くにいるよ」


「……おしっこ、行く」


「うん。……じゃあ、下に降りた時にお水も飲もうね。


 ちょっと寒いし、羽織れるもの着てこうね。……うん。大丈夫。いい子いい子」


 前にメルに作って貰った俺用のどてらを、トゥイの肩にかける。


 俺はしばらく、トゥイに付き添って不安を和らげるよう尽くすことにした。水を飲ませたり、小用を済ませる際に付き添った。


 そして、その甲斐あってかトゥイは不安を解消したようだ。冷ための水を飲ませたからか、良いも少し冷めて猫語ではなくなった。


「ありがと、コバタ兄さん。


 だいぶ、落ち着いた。……それじゃ、寝るね。


 おやすみ……」


 そう言ってトゥイは俺が羽織らせたどてら姿で、自分の部屋へと戻って行った。


「ああ、おやすみ……」


 ……俺は、トゥイの不安を解消できて良かったと思うと同時に、ナントモ言えない寂しさを感じていた。


 もうちょっと、その、なんというか。


 ……いや、女の子の不安を解消できたんだ。……ウン、俺エライ、頑張った。




 少しだけ虚しい気持ちで自室に戻り、ベッドに横たわ……ん? ……なんだ、この柔らかさは? なんかとてもステキな感じの柔らかさだ。


 そして何者かによって、俺はいきなりベッドマットに抑え込まれる。


「ティフェ、お兄ちゃんの腕、そっち抑えて」


「ええ、抑えました。……観念なさいまし、お兄様」


 ……え、ナニコレ。下剋上とか反逆?! 虐げた覚えなんてないのにナンデ?!

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