3-33.1-11-1のゾロ目構図
フィエは奥方様として、ハーレン、ティフェさん、ディドアさん、トゥイに確認を取った。
「あなた達4人を『ウチの子』として迎い入れることを、わたしは提示します。
今後、一蓮托生の身となって支え合うこと。
皆で老後になるまで生き残り、同じ墓に入ること。
そして何より、幸せを勝ち取って楽しく暮らしていくことだね。全部重要だけど、特にこれ重要。楽しくなけりゃ意味がない。
これらを受け入れますか。ウチの子としてやっていく気はある?」
まずはハーレンが一歩進み出て、口を開く。
「受け入れる。我はもう、ソーセス家から自立してコバタ家に入る。
もはや迷うことはない。……ここは、我を受け入れてくれる。
生きる場所を見付けたし、老後に死んだ後の墓まであるのだ。過分なほどだ」
ハーレンはスッキリした表情で、潔く答えた。……その様子を見たティフェさんとディドアさんがそれぞれ口を開く。
「私及び、妹のディドアを受け入れて頂いたことに深く御礼申し上げます。
身を尽くすこと、心を尽くすことをここにお約束いたします」
「私及び、姉のティフェを受け入れて頂き、感謝の念に堪えません。
ときに刃となり、ときに盾となりて尽くす覚悟にございます」
ふたりが言葉を終えると、フィエが一言入れた。
「ティフェちゃん、ディドアちゃん。
ふたりはまるで奉公しに来たように言うけど、ウチは基本平等だからね。家族!
ただし……わたしはコバタの! 旦那様の奥方様であるという点は絶対だよ」
フィエは『婚約指輪』を示しながら自分の立ち位置をアピールする。俺はその点に何も異論はないし、皆も同様のようだ。
最後にトゥイが口を開く。……正直なところ俺は、トゥイが本当にこの一家に入ることに意味を感じてくれるのか疑問だった。
ハーレンや双子姉妹は、俺たちがやっている内容をそれなりに把握している。しかしトゥイに限っては、メルが半分だまし討ちで連れてきたように感じてしまう。
「この度は皆様の一家に加えて頂き、その庇護を頂けると奥方様より聞き及びました。正直に申し上げまして、その点を重視しての縁組みとなります。
互助の関係を持つからには、こちらからも相応の利益を。
そして私自身の『一家への帰属の意識を持っての行動』をお約束いたします。
わが身の信用にかけて、家族の一員となることをお約束いたします」
トゥイは無表情のままだった。……だが、それがかえって発言の信用性を上げているように感じられた。愛想笑いでもされたら逆に胡散臭かっただろう。
……この言葉を信用しないというのは、俺にはできなかった。
そうして、俺たち『コバタ家』は俺含め12人となった。
そしてそこにもう一人。……ドアを開けて入ってきたのはアルメ奥様だった。
「お母様?!」
ハーレンは驚いた様子だが、他メンバーは特に驚きもない様子だ。
「アルメピテ様には今後、コバタ家外部からの支援をいただく予定です。
主たるところはご本人のコネクションの活用です。有力者との取次ぎや、ソーセス様を通しての便宜を図っていただきます」
トゥイが無表情のまま答えた。フィエもそれに頷きながら話す。
「アルメピテ奥様にはわたしからも当家の奥方様として協力を要請しました。
わたしたちの活動をより有効にするために、口を憚らずに言えば『利用させて頂く』所存です。
ソーセス様とメルちゃんの実家は結びつきが強い。……やはりそっちからの情報は欲しいですから」
フィエの淡々とした言葉に、アルメ奥様は微笑んで答えた。
「はい。喜んで協力しましょう。
我が娘、我が妹が入る御家のことですし……コバタ様にも、返さねばならない恩があります。フィエエルタ奥方様にもまた、許して頂いた恩があります。
……そして、共存共栄、協力関係というものはこれから必要になります。
ソーセス家としても、信頼のおける外部協力は欲しいのです。ウイアーン帝国に根を張って、それを支えることを是としています。
この件は既に相談を行ない、夫からも了承を受けています。これより、各家の安全を保つことを重視した采配を行なうべく行動いたします」
アルメ奥様は、後半はソーセス家を支える立場として話した。……やはり、彼女にとっての土台となる場所はソーセス家であり、俺たちコバタ家ではない。
俺は納得するとともに、ほんのりと寂しくも感じた。アルメ奥様は『ソーセス家で最期まで生き、そこに身を埋める人』だ。
こちらを見たアルメ奥様は、俺の表情の意味を察したのか、少し申し訳なさそうに微笑んだ。
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