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3-32.チョイスなナイス


 フィエはメルの『譲渡用紙』を見て言った。


「さて、メルちゃん。


 わたしの希望はティフェちゃんとディドアちゃんだけど、これは飽くまで『メルちゃんが受け取る』ものでしょう?


 正直、ガチガチに口を出しちゃうのは『違う』って思う。奥方様としても越権行為かなって。


 メルちゃんの判断は?」


「ティッフェルンブ、ディドアフォラツ両名の受け入れには賛成です。我々は何より情報を得なければ始まりません。


 我々は個人戦力、小規模部隊としての打撃力はありますが、言ってみればその程度です。大軍にはなれない。ならば情報力という強みは抑えておくべきです。


 クィーセリア様から提案のあった『前衛』ですが……私の実家から譲り受けるより『雇いの者』を付けた方が良いかもしれません。


 イザと言うとき『捨て駒覚悟』というなら、情が移る可能性がある相手よりも、期間を区切り金で雇った方がよろしいかと。


 ……ご主人様、ここだけはご納得下さいませ。この一家では『誰も死なずに済むことが重要視』されます。しかし『戦渦に飛び込んで、犠牲が出ないと見積もる』のは現実的と言えないのです。


 あとは『拠点』を幾つか得ましょう。これより先、ここソーセス様邸に留まり続けることは対応の幅を狭めます。


 『道具』に関しては、私の個人所有だけでかなり補えますし、後から仕入れることも難しくはない。


 余った残りは『資金』としてしまうのが良いと思われます」


 メルの意見にはまずアーシェが賛同した。


「異論なし。適切な振り分けです。


 特に拠点。ククノーロが指摘した『砂漠向こう』が攻撃するであろう街・ヘルカトナジオの近くには拠点を持っておきたい。


 街中は良くない。火をかけられるかもしれませんし、混乱に巻き込まれる。適度に近く、ある程度の隠蔽性があることが望ましい。


 資金は持っておくに越したことはない。……金でなびく相手と言うのも少し思うところはありますが、『見せ金も無しでは交渉の場にすら立てない』ケースも大いに有り得ます。


 ……このことに意見は?」


 フィエ、ララさん、クィーセ、ククノは意見無し。納得と肯定のサインだ。


 俺は気になっている点を聞くことにした。


「ハーレン、アルメ奥様、トゥイについての意見も欲しい。


 ハーレンは一家に受け入れ。だが娘だ。ソーセス様からの干渉はあるはずだ。


 アルメ奥様とは……俺から積極的に関わることはしない方がいいだろう。


 そしてトゥイ。……彼女にはこの事態の説明はまだだ。今の状況を知って、それでもついて来てくれるんだろうか」


 アーシェがそれに一部答える。


「ハレンは覚悟するでしょうし、そうとなればソーセス様、アルメ姉様とて認めざるを得ないでしょう。


 もともと家督継承をメーラケンスに譲っている以上、実家を出ることは確定していたのです。行き先が騎士団から『コバタ家』に変わっただけのことです。


 アルメ姉様も……今回の件は心に秘めつつ、消化してくれることと思います」


 次にメルが残りを答える。


「トゥイーズセッケルは、ついてきますよ。


 アレはご主人様を認めたのです。一匹狼でしたから、自分の判断を確固としています。……今の状況がどうあれ、アレにとっては『打開する事案』でしかない」


 アーシェとメルの説明に、俺は納得して話を進めることとした。そして、そこから先は拠点の策定となった。


 最低でも4箇所というのが各自の意見をまとめた数だ。


 一箇所は本拠点となる。各拠点に動きやすく、なおかつ安全性が高いホーム。


 二箇所目はヘルカトナジオの街へ対処するための拠点。『砂漠向こう』対策。


 三箇所目は法将マファクが進軍するであろう先の近郊。『対岸』対策用だ。


 最後に四箇所目。避難・脱出用の拠点だ。対処不能となったときの逃避用。




 これらを策定し終えた頃、ハーレンが帰還した。そしてティフェさんとディドアさんがこちらに到着した。レルリラさんも興行を終えて帰還する。


 アルメ奥様と話していたトゥイにもひと段落付けさせ、『新入りとなる予定の4人を含めて』の全員集合。


 男は俺一人。女性は11人。アンバランスな性別構成の12人。


 俺は思った。……あのさ、これ本来まとまるチームじゃなくないか。本当に大丈夫なのかコレ。本当にみんな仲良くできるのか?


 しかも、俺がこの一家の『旦那様』と言う立場……。頭がイタイ。


 俺はフィエとククノを近くに呼んだ。ふたりに手を握って貰う。……正直言うと今、抜身の剣の前に立つより、コワイ。


 俺の気持ちを察したララさんがポンポンと肩を叩いて元気付けてくれる。アーシェが優しく微笑みかけてくれる。クィーセは頼りになる笑みを浮かべてくれる。メルは他に遠慮して近くには来ないが、場を見渡して余裕の表情だ。


 レルリラさん、ハーレン、ティフェさんとディドアさん、トゥイ。


 この5人との関係は、まだまだ計りかねる部分も多い。


 世界はこれより更に荒れゆく。……だが、我が家とて、各々の感情や主義思想、バランスや優先順位や人間関係……そういったところの齟齬でどう荒れるか分かったものではない。


 国をまとめている人って、エライなぁ。……俺はたくさんの味方を得ても、それでもまだこういう人間関係のアレコレが恐ろしく思えてしまうのだから。

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