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3-19.ワーヨルユについて


 ハーレンに肘鉄を食らった日の昼。


 俺はハーレンを理解するために、メルに聞き込みを行なった。……ハーレンの護衛、ワーヨルユさんについてだ。


「そうですか。ハーレン様はそれに気を病まれているのですか。


 ……お優しい、といえば聞こえはいいですが。


 それは心得違いです、大きく間違っています」


 メルはキッパリと毅然とした声で答えてくれた。それに対して俺は、今は弱々しくしか話すことが出来ない。


「すまんメル。


 ……ちょっと気が重いから、ご主人様やってあげられない。


 でも命令しとく。……俺にメルの持論聞かせて」


「心得ました。……大丈夫です。別にいつでもは求めませんから」


 メルは優しい声で弱った俺を慰めてくれた。


 そして、メルが言うにはこういうことだ。


「ワーヨルユは護衛者としての義務を果たしませんでした。


 まず、護衛は『守れるかどうか』を自分で判断しなければなりません。


 これはその雇い主がどう言おうと、職務として判断すべきことなのです。ワーヨルユはお嬢様を引き留めるか、護衛の追加を要請すべきでした。


 しかし、それを行なわずに彼女はお嬢様に追従するしかできなかった。これは、外出の危険を軽視した職務放棄としか言えない行動なのです。


 そして。


 事件発覚の前に『お嬢様の居場所が不明』な時間が存在しました。正確に言えば『ソーセス様屋敷近隣にいる』と誤認識されていました。


 護衛対象が居場所不明など、絶対にあってはならないことです。


 『絶対に行なわなければならない報告』を怠ったために発生しました。ワーヨルユは近場にいたはずの護衛の同輩に声掛けすらしていなかった。


 まったく、何ということでしょう……。


 本来なら、ワーヨルユひとりでお嬢様を護衛などさせはしません。


 ……今回の作戦に同行したガリュンテイ、あれも本来は護衛です。中~遠距離からお嬢様の護衛を行なうことを任務としておりました。


 そして、ガリュンテイは最近の『殲滅活動』に駆り出していました。ハーレン様は最近ご実家におられ、警備の中にいたため、そうしたのです。


 『屋敷周辺の護衛』に加えガリュンテイがいては警備が過剰ですから。


 …………。


 護衛担当としてワーヨルユを選んだのには理由がないわけではありません。


 ワーヨルユはお嬢様と年齢が近い。つまり比較的、話を合わせやすい。……愚痴や悩みを吐かせるには、年が離れすぎているとやり辛い。


 武骨な護衛がつくのをお嬢様は『実力を軽んじられている』と感じなさる。そしてそれは、ナイーブになっている時には強い不快となって表れる。


 近場に条件を満たせる護衛要員がいなかったというのも選択を狭めた。


 ……まぁ、言い訳ですね。結局はこちらの判断ミス。


 ワーヨルユを単独で付けてしまった。命を失わせることになってしまった。


 お嬢様の心を痛める結果となってしまった、それは判断ミスなのです」




 メルは最終的に戦衆側の『判断ミス』と断じた。しかし、その言葉を聞いても俺には気持ちを変えることはできなかった。


「しかし、ひとり死なせたのには俺も責任を感じる。


 ハーレンだって、それをどう消化できるか……」


「……それは。


 半人前のワーヨルユでしたが、さすがに『ヒト扱い』をお願いします。彼女自身の責任は認めてあげなくてはいけません。


 『ワーヨルユが死んだのには、彼女自身の責任が大きい』のですから。


 いいですか。お嬢様やコバタ様の行動は『絶対に原因ではない』のです。


 護衛として職務に就き、お嬢様を守るための行動で給金を貰っていた。……お金をあげていたわけではない。彼女に『払っていた』んです。


 なら責任は発生する。……彼女はヒトです。責任を負える。


 ……まぁ、シツケる時とかはイヌ扱いはしましたけれど。


 どうであれ彼女は、職務中に死にました。遺族にもお金は出します。


 彼女は職務中に死んだ。今となってはそれだけのことです。


 それだけなんです」


 まぁ、うん。……まぁ、うん。…………そうではある、けど。


 …………そうだな、損なわれた命は戻りはしない。……結局は『今、生きている人間に都合の良いように』解釈するしかない。


 そもそも、世の中って別に。


 みんなが幸せに生を全うできる場所でもない。


 俺はそんな世界で、幸せを守ったり増やしたり。


 ……何とかするしかない。

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