表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/154

3-17.ハッピーになる尋問タイム


 事件解決の日。夕刻。


 今日はソーセス邸ではなく、メルの実家の方にお邪魔している。外泊することについてもアルメ奥様にお知らせしてきた。


 メルの実家の家屋は立派だった。ただ、今日用事があるのは住居側ではない。もっと頑丈で外に出られなさそうな建物の方にお邪魔している。


 なぜかと言うと、監禁と尋問を行なうためだ。今、他の部屋で敵部隊のリーダーと思われる男が、メルの実家の人に尋問を受けている。……かわいそう。


 変態、『千滅のキーアベルツ』は俺たちによって尋問されることとなった。……いろいろな意味で危険な男。


 アーシェは、厳重に拘束された相手を冷たく見つめて言った。


「キーアベルツ。これから尋問を行ないます。


 我々には優れた『癒しの帯』使用者がいます。自決は無理です」


「あなた、素敵なおっぱいしてましたね。おっぱいぷるんぷるん。……そして乳首、好みのタイプでした。ファンです、あなたのファンになりました」


「……は?」


「幻覚かもしれません。ですが、走馬灯であなたの全裸を見たんです。


 ああ、そちらの可愛らしいお嬢さん、そちらのステキなお姉さん、褐色肌の美しいオネーちゃん、そちらのちっこいメイドさんも……。


 アレ、ステキな奥さんもいたんだけど……。どこ? 隠さないでよ。


 全員お綺麗でした。眼福でした。そのサイズ感、肌質、乳首……最高ゥッ!


 ロマンがお……いっぱいでした」


 俺はハーレンを助けるため『下弓張月』を使ってみんなの分身を出した。


 卓越した実力者相手に動揺を誘うためやったことなのだが、この変態はシッカリそれを脳内保存したようだ。……もしかして、写真記憶という奴か。


 フィエは、能力を使ってしまった俺と、自分の分身の裸を見られてしまった変態の両方を冷たい眼で見て、言った。


「コイツ、きっと喋りませんね。殺しましょう。


 本人もおそらく、それを望んで今の発言をしたと思います」


 それをハーレンが止めに入った。


「待って下さい。フィエエルタ様。


 この方はおそらく、これから起こり得る脅威に知見があります。


 ……キーアベルツさん、話して頂けませんか」


 キーアベルツはハーレンの言葉を聞き、しばらく考え込んだ後、口を開いた。


「騎士見習のお嬢さん。あなたの乳首も見たかった。それが心残りです。


 ですがオレは、強引なことをして乳首が見たいわけじゃないんです。


 何というかですね、ホレられてチョット恥じらいながら見せてほしかったです」


「…………殺すべきでは……ないんですよね。多分。


 我にはもう、ちょっと分からないです」


 困惑。そんな感じの俺たちにメルが進言する。


「手足を落としましょう。まずはそれからですね」


「ちょっと待てメル。そういうのナシ」


 ……その日は結局そんな感じ。キーアベルツは何も話そうとはしなかった。




 夜半近く、何もまともなことを喋ってくれないキーアベルツの対応を練ろうと別室に集まったものの、みなヘトヘトだ。


 ……メルの言葉。それだけで終わった。


「アレは喋りませんし、いずれ逃げます。監視を付けていますが無駄になります。


 なぜなら、ここにいる全員の目を掻い潜り、隣の砦まで行ったからです。


 特にティッフェルンブ、ディドアフォラツ。二人は探索に特化して訓練を行なっている。若いながらも精鋭です。それすら潜り抜けた。


 無理です。アレを殺さない選択をした時点で。……ここであっても長くは留め置けません。殺処分する方針を出されるならお早めにお願いします。


 場合によっては明日の朝を待たずに消えているでしょう。


 尋問時の態度で分かりました。アレはこちらを量っていた。だからこそ無暗に敵対はしてこない。


 『身内を害する』という逆鱗に触れねば、こちらは甘ちゃんと見切られました。とはいえ、尋問の中で分かるように警告はしておきましたが。


 皆さま、今日はもう寝ましょう。疲れました」


 全員が諦めたような顔になる。……確かに、キーアベルツが砦から脱出したのを誰も察知できていなかった。


 正直、俺がふと思い付かなかったら逃げ切られていただろう。


 レルリラさんに運んで貰って屋上まで行った。そしてすぐにレルリラさんは戻って、クィーセと下層からの捜索をして貰った。


 運が良かった。相手は変態。そして女性を傷付けたがらないと分かっていたから有効な対処が出来ただけだ。


 ……ハーレンに話したという『キーアベルツの懸念』は共有されていた。アーシェやクィーセ、メル辺りは思い当たる節を感じていた。


 勿論、鵜呑みにするわけにもいかない。精査しなければならない。


 そのために、キーアベルツにもっと詳細を聞きたかったのだが……正直、ハーレンに話した以上のことは漏らす気がなさそうだ。


 キーアベルツはその後しばらく監禁されながら、療養している。……確かにメルの実家の内側は、容易に外からの攻撃を受けない場所でもある。


 その夜は皆が疲れており、そのまま眠りに就いた。




 そして俺は……あの熱烈なキスの続きをしにいく決意を固めた。


<純情騎士子のハーレンがあんな激しいキスしてくれたんだからな。


 焦らすような真似はもうやめて、一気に行けるところまで行っちまえ>


 ……これは俺の邪心であって、神の声ではないと思う。どんな邪神だよ。

【ブックマーク・評価・感想など頂けると助かります】


筆者のやる気につながります。是非ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ