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3-12.救出作戦・立案、追加要員


 翌早朝。打ち合わせが開始される。


 俺は一晩休んで体調は万全だ。……なんだろ、すごく体調がいいというか、力に満ち溢れている感じがする。モチベーションがあがったのだろうか?


 昨夜の会議の席で調子が悪かったアーシェも復調したようだ。キリッとした顔で口を開いた。


「さて、一晩明かしてしまったからには、早い解決を目指しましょう。


 もっとも必要なのはハレンの安全。その安全確保にコバタが当たる方向で私は考えています。先ほど先着した者で打ち合わせて方針決定してあります。


 最も容易に思い付くのが、敵の誘い出し。その隙の脱出です。


 ですがこれは今回のケースにおいて有効とは思えません。守りを固めた方が有利と見るなら、それを崩すのは早期には難しい。


 『敵が運び込んだであろう食料』を焼き討ちして、兵糧攻めや混乱を狙ったとしても、それはハレンの安全を大きく脅かすだけ。


 あからさまな異常が起こったら人質は殺されるだけです。


 つまり、敵の誘い出しは無理。今回採用できません」


 アーシェはまずボツ案について説明。ララさんがそれを受けて言葉を発する。


「つまり今回は、ほぼ正攻法で行く。攻守両方を同時にやる感じになるね。


 まずコバタくんが潜入してハーレンを守り通す。可能なら連れて逃げる。


 私たちは外から攻撃して敵を削ったりして脱出のための隙を作る」


 メルがララさんの言葉を補強する。


「実際にはコバタ様単独での潜入・人質防衛とはなりません。私含め、練度の高い潜入要員が同行します。


 まず私。そしてクィーセリア様。そしてウチの腕利きを手配しました。この3名が同行・サポートします。


 外部からはライラトゥリア様。アーシェルティ様。レルリラ。フィエエルタ奥方様。こちらにも2名腕利きを手配しました。


 計10名での救出作戦となります。人質の安全が最優先。数的不利を背負ってでも、何より相手に事前に察知されてはならない。少数精鋭での作戦行動です。


 ククノーロ様は今回、不参加とさせて頂きます。ラパルペルア・ロドンの姫君と敵に察知される可能性があるのは、今後の不安を増やすだけです。


 ……今回、全体の殲滅よりハーレンケンセ様の安全確保・奪還が主目的となります。遠巻きに戦衆より人員は配置しますが、網を抜ける可能性もなくはない。


 なお、既にこちらに精鋭3名は到着待機済みです。出て来なさい」


 ……? うわ、何かいつの間にかいる。ニンジャ?!


 双子の女の子と、顎鬚付の渋いオッサン一人。……え、俺とフィエとレルリラさんしか驚いてねぇ。他の人分かってたのかよ。


 俺が周囲の反応を見渡そうとすると、ララさんと目が合った。


「コバタくん、なんかすごく驚いてるとこ申し訳ないけど……。


 私やククノ、アーシェはこの部屋一番乗りだったからさ。後から来たその人たちに隠れてみて貰ったんだ。本当に消えたから私もビックリしたよ」


 ……この人達が格好つけて出てきたわけじゃなくて、ララさんの仕込みかよ。


「お初にお目にかかります。ティッフェルンブでございます。双子の姉です」


「お初にお目にかかります。ディドアフォラツでございます。双子の妹です」


 双子の女の子。とはいえ何か異なる。基本的な顔立ちや体格はそっくり。


 ふたりとも薄く紫がかった黒髪。背はフィエと同じくらい。……というか年頃もあまり変わらないように見える。黒や茶などで構成された目立たない色合いの……忍び衣装っぽいものを着ている。やっぱニンジャじゃないの。


 ティッフェルンブさんは澄まし顔。目つきは何というか……余裕? 優雅な人がする少し奢った感じの目つきだ。茶色の瞳。内巻きのショートヘア。声は少し高め。


 ディドアフォラツさんは多少目にクマがあり目つきが少し悪い。琥珀色の瞳はちょっと艶っぽい感じがして綺麗だ。外ハネのショートヘア。声は少し濁り低め。


 似たようでいて、印象が結構違う。……双子の人ってソックリに合わせる人達もいれば、相手に似ないようにするタイプもいる。彼女たちは後者のようだ。


 次に渋いオッサンが挨拶を始める。彼は俺に目線を向けてニッと笑った。


「またお会いできて光栄にございます。……あ、こちらの声ではないですな。


 改めまして、またお会いできて光栄にございます。ガリュンテイと申します」


 総白髪に口ひげ顎髭の渋いオッサンは、かなり声を変えられる人のようだ。低く響く渋い声から、接しやすそうな給仕さんの声に変わる。


 ……会ってるわこの人。歓迎会で最初に世話してくれた人だ。今、ニンジャっぽい衣装来ているから別人レベルで印象違ったわ。


「ガリュンテイさん、あの歓迎会のときはお世話頂きありがとうございました。……影ながら主人を守る系の人だったんですね」


 俺の言葉にガリュンテイさんは渋い顔になった。……あ。失言したわ俺。


「任務に出ていたとはいえ……ハーレンケンセお嬢様が悪漢の手に落ちるとは……守れなかった。私は守れなかったんです……!」


 ブワっと涙が溢れ出る。オッサンに泣かれると本当に困る。……ただ、涙はすぐに止まった。涙腺も調整できる人のようだ。ビックリ人間か……?




 潜入部隊にガリュンテイさん、外部からの攻撃部隊にティッフェルンブさん、ディドアフォラツさんの双子を加えて、行動開始となった。


 ある意味、即席部隊と言える。少し不安を感じもするが、腕利きというからには大丈夫だろう。……そもそも先ほど、気配もなく限られた空間に潜んだのだから。


 ララさん、ククノ、アーシェはネタバレ済みだから考慮外。俺とフィエとレルリラさんは気付かなかった。メルは彼らを呼んでいるのだから当然知っている。


 ナチュラルに気付いたのはクィーセだけか。……あるいは驚いた表情を隠しただけかも知れないけど。

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