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3-07.オープンザドア

 俺は、クソ男になった自分を改善すべく、俺の奥方様に相談しに行った。


 俺の奥方様、フィエエルタはかく語りき。


「やっと相談に来たか。


 なんか正気じゃない感じになっていたね。のうみそが色欲に染まって周りが見えてなかったね。……正直さ、ヨソの奥さんに入れ込むとかクソだよね。


 ……ん、そうか。反省したなら許す。……ふむ。ククちゃんが叱ってくれたか。さすがククちゃん。可愛いだけじゃないね。


 それで旦那様。……いい? 今、対応が必要なのはハーレン様。


 ……あのねコバタ。……気付いているのに鈍感ぶるとかさ、もういいから。


 引っ掛けちゃったの分かってたのに、あからさまにハーレン様から距離取ってたよね。あんなことされたらさ、コジレるに決まってるじゃない。


 コバタはさ、恋心が『なし崩しで簡単に消せるものではない』と分かっているでしょ。なのにハーレン様にそういう微妙な態度で接していた。


 諦め切れるだけの強い拒絶もない。かといって受け入れもしないとかいう態度。


 加えて、そんな状態からアルメピテ奥様と関係を始め、感づかれてしまった。ハーレン様からすればナニソレとしか言いようのない行動を取ってしまっている。


 …………ハァ。なぜ、わたしは夫にこんな説明をせねばならんのですか。


 旦那様。ほら、右手を出して。……ん、ヨシ。


 ……コバタがさ、わたしの手を握って安心するって言うように、わたしだってそうなんだって、分かってね。……こうすると、安心するんだよ。


 そ・し・て。


 ……ハーレン様がさ、何か必死に訴え掛けてきたら、それは『コバタにも真剣に受け取ってほしいから』そうしてるんだって、理解してあげてね。


 そんな風に、ウチの旦那様を好きになる娘なら、わたしは受け入れる。


 いい? ハーレン様もウチの子にするからね。わたしはウチの家族が増えるのなら歓迎する。ウチは王族だろうが大貴族だろうが収容できるから。楽勝だよ。


 旦那様は『例の件』の対応で一日中忙しく駆け回ってるメルちゃんやクィーさん、ララさんとは違って時間はある方でしょ。


 旦那様は、しっかり家の内部をまとめる地盤固めをしなさい。わたしが動いてどうにかなることは、わたしがやるから」




 続いて俺は、アーシェへも話を通しに行った。


 アーシェルティはこう言った。


「……コバタ。私はあなたに出会ってすぐ、多くの迷惑をかけました。


 きっとアルメ姉様についても、問題の対処に当たったものだとは分かります。


 ……ただね。あのね。……まさか許容範囲だとは思っていなかった。もうちょっと何というか、私がこういうこと言っちゃいけないかもだけど……。


 ……節操を持った方が良いように思うわ。私が今回動揺しているのはそれ。


 フィエエルタが会議で言っていましたね。『我々は家族を形成する』と。


 私はその案に強く賛成しています。イビツとも言える私たちの集団、これをどうにか形にしてくれる妙案だと思います。


 ただ、アルメ姉様は『ソーセス家の女』です。これはきっと、絶対に動かないことなんです。あの姉様がこの家を、家族を捨てるとは思えない。


 なら……そちらはもう、程々になさいな。情が移るほど良くない関係になることは間違いありません。


 ひとつ聞きます。コバタ、正直にね。……ハレンのことは好き? ……そう。


 じゃあ、ちゃんとそれを伝えなさい。あの子も私と同じで、臆病なの」




 結論は出た。


 ……まぁ、それはそうだ。アルメ奥様は『俺を好いて身を委ねてはくれても、決して心までは委ねてはくれない』人だ。一途に愛する相手がいるんだから。


 アーシェは俺に『節操がない』と言った。まさにそうだ。……俺を愛してくれる人なら、そこに労力を注ぐ意味はある。そういう人をもう7人抱えている。


 …………。


 ククノが言っていた。俺が『"巡り合わせの運び"に影響を受けて』いると。


 きっとそれは、とても幸運なことなのだけれど、そうして得た出会いから生まれる関係を維持していくという事は並大抵ではない。


 『維持していくため対価』は安くない。気楽にホイホイと受け入れ続けていたら火の車、今がまさにそうだ。


 維持する対価、それを俺自身が充分に生み出せなければ先はない。……それを内心分かっていたから、俺はハーレン様の気持ちを見て見ぬふりしてしまった。


 でも、それじゃあ傷付く女の子を増やすだけの結果になるだけだ。これから相手と巡り合う度に傷付けるなんてことになれば、それこそ幸せな未来はない。




 ハーレン様はあれから実家には戻らず、出仕先の住居にも帰らなかった。


 そしてこの夜。悪いことに『こちらからの対処』だけではなく『あちらからも』戦端が開かれた。

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