2-48.色ボケ苦悶の会/給仕探偵メルちゃん
会議再開。
アーシェがお茶を淹れ、メルが配る。先ほどのメルのカミングアウトに警戒した行動でもあるが、そもそもアーシェ自身お茶を振舞うのは好きな人間だ。
一度休みを挟んだためか、ちょっとリラックスした雰囲気になった。ただそれが悪く作用してしまい、雑談的な内容が増えてしまった。
議題はジエルテ神の情報共有に入っていたが、どうにもまとまりがない。あまり大した話も出来ず、会議が停滞しかけたとき、メルが発言を始めた。
「給仕の身から失礼いたします。今、会議が思うように進まないのは、重要な点を整理できていないからではないでしょうか。
ここにいる8人のうち、『5人』が直接ジエルテ神と会っています。言ってみれば当事者であるため、客観的な視点を持てていないように感じました。
まずは、ジエルテ神について一度。情報を整理しましょう。
これまでにジエルテ神に会ったのは
コバタ様とフィエエルタ様、ライラトゥリア様。……吟遊詩人として。
コバタ様。……神として、そして指輪。
ライラトゥリア様とアーシェルティ様。……神として、薬と飾り櫛。
フィエエルタ様とクィーセリア様。……神として、リュート。
まず、こういった点が読み取れます。これは現時点でのことです。
『ジエルテ神は"吟遊詩人としての姿を見せた相手"がいるところに現れている』
『ジエルテ神は"会った相手に貸すか与えるか"をしている』
『ジエルテ神は"神として"2度会うことはしていない』
また、このうち2件には共通する部分があります。
『ジエルテ神は"女性二人が妊娠に関する疑問"の話題を出した』ときに現れています。そして『その原因は自分にある』と告げるのです。
では、これは何の意図を持つか。
まずは、不妊の原因が『ジエルテ神、つまりは自分にある』と強調したかった。もしくは、前述の行動をして『目線を逸らしたかった』と推察いたします。
私は『目線を逸らしたかった』というのが有力と感じました。
なぜなら、対面した人間に共通する特徴として、アーシェルティ様は『怒りを感じて』おり、ライラトゥリア様には『特別な授けもの』をしている。
クィーセリア様は『不安定な状態』であり、奥方様は『挑発的な言動』をされている。そしてご主人様に対しても『威圧的な言動』で思考を封じている。
ここから言えること。それは『突っ込まれた質問されると困る』から『強く興味を引かれることを提示する』ことでそれを誤魔化した。
つまりジエルテ神は『言葉を誤魔化すのが得意ではない』。あるいは『露骨なウソまでは吐けない』のではないかと推察いたします。
私は皆様の話を聞いていて、過去に出会った一人の男を思い出しました。彼は人によって態度を変えて応対し『目線を逸らす』ことに執心していました。
彼は誇大妄想を抱えていました。自らを『ウイアーン初代皇帝』であると名乗っていました。とんでもないデタラメ、大嘘吐きでした。
ですが、彼には美点がありました。『小さなウソは吐かない』のです。
初代皇帝についての歴史的事実を尋ねてアラを探そうとしても『憶えていない』とか『知らない』と言いました。……小さなデタラメは、決して言おうとはしませんでした。
なぜそうしたのか? 『大きなウソを、破綻させないため』です。……ウソというものは積み重ねれば破綻しますし、支離滅裂になってしまいます。
誇大妄想狂であれば『ウソを吐いている箇所』は明白なのですが『ジエルテ神』となると、どこにウソがあるかを見抜くのは難しい。
神とはいえジエルテ神の取っている態度はあまりに一貫性がありません。『威圧的』『威を感じさせない低姿勢』『挑発的』。……何か裏があります。
つまり、ジエルテ神は『何か大きなウソ』を吐いているのではないでしょうか」
メルは推理をして見せることで、この停滞した会議を何とかしてくれようとしたのだろう。……だが、推理に必要な情報が足りていなかった。
俺はククノの方をチラリと見る。……ククノはまだカミングアウトしていない情報がある。ジエルテ神から授かったという『腕輪』のことを話していない。
ククノはしれっと答えた。
「ほうぅ、なかなか見事な推理じゃの。感心したぞ。
なるほど、ジエルテは『大嘘吐き』か。有り得る事じゃな」
……それは、俺に向けての言葉でもあるようだ。『腕輪のことはカミングアウトするつもりはない』と暗に言っているも同然だ。マイフレンド、なんで俺以外には隠すんだろう?
そして、メルは更に一つの疑問を提示した。
「そしてもう一点。不可解な現象を私は感じています。
ご主人様、よろしいでしょうか?」
いきなり問いかけられたが、メルが何を言っているのか分からない。
「ん、何だ? ハッキリ言ってくれないと分からない」
「…………! さすがです、ご主人様。
皆様! 恥を忍んで申し上げます! 私の✕✕には、ご主人様に入れて頂いた『オモチャ』が入っています。現在も震えております!」
メルは、別の意味でのカミングアウトを始めた。ああ、一週間くらい前に開発したアレか。……最後にメルに仕込んだのは確か昨日のことだ。いろいろあったので忘れていた。
相手がMであるとはいえ、さすがに長時間仕込み過ぎた気がする。ちょっと可哀想だと思って俺は言った。
「そうか、そんなのあったな。もう出していいぞ、メル」
「……! 分かりました。さすがです。ご主人様」
メルは、衆人環視の状態でスカートを捲り上げて、それを取り出した。当然だが、エロ下着も見えてしまった。メルの顔は羞恥に染まっている。取り出されたローターは、ねっとりとテカりながら机の上で震えている。
この頃、ウチのメンバー内で恐れられていて、先ほどもキリッとした顔で『探偵メルちゃん』やってたのに、こんな情けない姿を晒すことになるとか……。
……ご褒美か。Mのメイドなメルにとってはご褒美なんだろうかコレ。
「なんなのですか、コレは?」
アーシェが怪訝な顔で俺に視線を向けて質問する。俺は自分の口から説明するのが恥ずかしかったので、メルに説明を投げることにした。
「メル。それはまだ俺とメルしか知らない。みんなに言うの忘れてた。
アーシェや他のみんなにも分かるように説明しろ」
「はい! さすがです、ご主人様。
ご説明させて頂きます……!」
メルは、赤裸々にその物体について説明を始めた。
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