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魔法少女、誕生 Part.06

先月投稿した『Part.05』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

自分の中で様々な葛藤をしながらも公園に到着した智史(さとし)はまず初めに園内でも多くの利用者が集うエリアへと向かった。


「(実季(みのる)のヤツ、何処に居るんだ?)」


ジョギングや愛犬との交流、ベンチに座って居眠りやスマートフォンゲームをしている利用者を横目に辺りを見渡す智史。

そして、保護者と思われる母親の手を取って帰宅を促す子供達が居る遊具スペースの付近まで来たのを最後にこのエリア内に実季の姿が無かった事を確認する。


「他を探してみるか。」


そう言うと智史は別のエリアへと移動する為この場所を後にするのだった。


その頃、当の実季はというと・・・。

クロードから手渡されたステッキを握り要望された掛け声を口にした直後、先端から発せられた光に飲み込まれ気付けば異世界の様な空間に居るのだった。

此処が一体、何処なのであろうかと思っていた矢先、身に着けている衣服が眩しく光り出すとシャボン玉の如く弾けながら消え始める。

その出来事にうろたえながらも頬を染めつつ瞼を固く閉ざすと直後に無数の光の結晶が音速のスピードでやって来ると実季の身体を着地点として纏わり付く様にして留まる。

自分の身に何が起こっているのか理解出来ずにいる中で、光の結晶同士が1つの塊となるとそれが洋服の形状となり先程までとは異なる出で立ちへと変貌するのだった。


「(何だったのかな・・・?)」


そんな疑問を抱きながらも瞼越しに感じていた眩しさが弱くなった事を察した実季はゆっくりと目を開き異世界の様な空間から再び公園へと戻れた事を確認する。

今度は自分の姿を客観的に見る事にすると上は白いブラウスに赤いリボンタイを付け肩から羽織る様に丈の短いケープを身に着けており下はハイウエストのミニスカートとニーソックス、靴はショートブーツを履き、頭には大きなとんがり帽子を被っていたのだった。


「何、この格好!?」


パーカーにショートパンツ、コンバースのハイカットスニーカーという格好であったのにも拘らず普段の自分ならば絶対しないであろう魔法少女を彷彿させる出で立ちに驚愕する実季。


「すごい!やっぱりこの人、『魔法少女』の素質が有る人だったんだ。やったぁ!」


その声に反応する様にして視線を向けるとそこには歓喜に満ちた表情を浮かべているクロードの姿が在った。

そんなクロードに実季は詰め寄りながらこの状況について問い質した。


「ねぇクロード。どうなってるの?私、何でこんな姿になってるの?」


自分の身に降りかかった出来事を不安視しながらも尋ねる実季を他所にクロードは平然としながら答える。


「ああ、実季さん。結論から言いましょう。あなたには魔法少女としての素質が有ったのです。」

「はぃ?」


当然と言えばそうなのだがより困惑する結果となってしまった実季。

だがそんな実季に構う事無くクロードは続ける。


「その証拠に今、手にしているステッキがあなたを魔法少女として選んだのです!」


クロードのその言葉に一瞬目を見開いた実季は右手に有るステッキに視線を向けた後、尋ねる。


「このステッキって、クロードがマジックショーで使う物じゃないの?」

「いいえ、違います。実を言うと僕はマジシャンではありません。」


自分に言い聞かせる様にして気付かないフリをしていた実季であったがクロードの口からマジシャンでない事実を告げられると「やっぱりな。」と心の中で呟いた。

そんな実季の反応を受けクロードは「どうやら僕の事をマジシャンだと本気で思っていた様だ。」と見当違いの解釈をした後、話を進めた。


「そのステッキは人間界に住む少女の内、魔法少女としての能力が有る者のみに使用する事が出来るステッキなのです。」


「それって・・・?」


この言葉を前置きし、実季はステッキに関して詳しく聞き出そうとしていたのだがタイミングが合わなかった為かクロード主体で話が進んでしまう。


「更に言えば僕はこの世界の人間ではありません。」

「えぇと。」

「この世界とは異なる魔法界からある指名を受けやって来たのです。」

「あの、ちょっと?」

「そう。何を隠そうその使命とは・・・。」

「ねぇ、クロード。一旦タンマ!」


クロードによって話が一方的に進行している事に耐え兼ねなくなった実季は一先ずこの状況に待ったをかける。


「どうしました実季さん、まだ話の途中なのですが?」


話している最中にも拘わらず何故、止められたのか分からず不思議そうな表情をするクロードに詰め寄り言わんとして事柄を聞き出す実季。


「私、さっきステッキの事について聞こうと思ったんだけど?」

「あぁ、そうでしたか?それならそうと言って下されば良かったのに。」


悪気は無いとはいえそんなクロードにやや不満気な表情を浮かべた後、実季は先の言葉に付け加える様にして続けた。


「それにさっきから何言ってるか全然分かんないし、それにこの格好、私としては恥ずかしいんだけど。」

「そうですか?実季さんは器量が良いので魔法少女としてのこのコスチュームも良く似合っているかと。」


思いがけず容姿を誉められた事で実季は「そうかなぁ・・・。」と照れた様子で言いつつも満更でも無い表情を浮かべる。

だが、今はそんな場合では無い事を思い出すと自分のチョロい性格を棚に上げクロードへとにじり寄る。


「そういう事を言ってるんじゃなくて、私は早く元の格好に戻りたいの!」

「そ、そうなんですか?ですが、どうして?」


あまりの迫力に圧倒されるクロードではあったが素朴な疑問としてその理由を尋ねる。

それを受け実季は少し不意を突かれた様な反応を示した後、その理由を述べるのだった。


「『どうして』って、こんな魔女っ子みたいな格好、私のキャラに無いし。それにもしも誰かに見られでもしたら・・・。」


頬を染めつつ胸中を明かしている最中、実季は背中越しに此方を窺う様にして尋ねる聞き覚えの有る声を察知する。


「ねぇ、もしかして実季?」

「ま、真琴?」


驚きのあまり一瞬、肩を震わせた後、恐る恐る後ろを振り返るとそこには額にかいた汗を首元に巻いたタオルで拭う仕草をする真琴の姿が在った。


「どうしたの、その格好?何かのアニメのキャラ?」

「いや、その・・・。」


真琴の問い掛けにどう答えて良いか分からず言葉を詰まらせる実季。

その様子を察知したクロードは実季をフォローすべく彼女達の間に割って入ると真琴に向け解説を始めた。


「何方かは存じませんが僕が代わりに説明します。これはアニメのキャラクターの格好ではなく歴とした魔法少女の・・・。」

「ちょ、クロード!何で入って来るの?」


意図せぬクロードの言動に実季は驚くと慌てながらも手の平を重ねる様にして彼の口を塞いだ。


「モゴモゴ、モゴモゴ・・・。(実季さん、いきなり何をするんですか?苦しいです!)」

「しーっ!お願いだから今は黙ってて!」


抵抗するクロードを押さえつけながらも実季は小声で彼を窘めると大人しくするよう求める。

2人のやり取りを受け真琴は訝しげにしながらも何事かと尋ねる。


「なあに?」

「いや、その。真琴の方こそどうしたの?もしかしてジョギング?」


動揺を覚えながらも何とかこの場をやり過ごそうと自分から話題を振る事にした実季は真琴の出で立ちを確認した後、そんな質問を投げかけた。

それを受け真琴は僅かではあるが体重の増加によりジョギングを始めた事を悟られぬ様当たり障りの無い受け答えをする。


「え、ええそうね。まぁそんなところかしら。」

「(上手く誤魔化せた。)」


真琴の反応を窺い実季は冷や汗を拭いながらそう判断するもそれも束の間。

我に返った真琴から再び問い質される事となった。


「じゃなくて、私はどうして実季がそんな格好してるかって聞いてるの!」

「(誤魔化せなかったか。)」


追い詰められる実季は別の言い訳を考えようとした矢先、一瞬のスキをついてクロードが真琴へ向け口を開く。


「あの、ですからこれは魔法少女としての・・・。」

「クロード。お願いだから今は黙ってて!」


これ以上、面倒な事にならぬ様、実季は再びクロードを押さえつけるとそれを見ていた真琴から一番聞かれては拙い質問が投げかけられた。


「実季、あとさっきから気になってたんだけどその子・・・。」

「えぇと。まずは格好についての質問だよね?これは決して魔法少女的な何かではなくその・・・、たまにはこんなファッションも良いかなって。」


強引なまでに話を逸らしつつ何とかこの場をやり過ごそうと試みるもどうやら通用しなかったらしく真琴はそんな実季の言葉を呆気無く突き返す。


「うそ。実季ってばさっきと格好が全然違うじゃない?」

「え?」

「私、この辺りを走ってたら実季の姿が見えて声をかけようとしたら突然、眩しい光に包まれたかと思ったら格好がまるっきり変わってたから・・・。」


「(オープニングから見てたんかい!)」


「それならそうと早く言ってくれよ。」と言わんばかりに心の中でツッコミを決める実季。


「それにこの男の子、誰?実季の親戚にこんな子居た?」


真琴の口から同様の質問が繰り返されたのをきっかけにこの場を逃げ切るのは無理だと判断した実季は一先ずこの様な事になった経緯を説明する。


「『魔法少女』?」

「うん。何か私、成り行きで変身しちゃったみたいで・・・。」


至って真剣に話す実季にどう反応して良いか分からないでいる物の何か訳が有るのであろうと感知した真琴は取り敢えず無難な言葉をかける事にする。


「でも、その格好とっても似合ってるわよ、実季。」

「そうですよ、自信持ってください!」

「いや、そういう事じゃなくて、これ以上、この格好で居るところを誰かに見られたくないというか・・・。」


真琴の言葉に同調するクロードに呆れながらも今一度、自分の心境を吐露する実季。

そんな会話を交わしているとまたしても実季の背中越しに聞き覚えの有る声がこちらを窺う様にして尋ねて来た。


「実季。お前、何でそんな格好してんだ?」

「さ、智史?」

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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