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プロローグ Part.02

主要キャラクターの紹介を兼ねたエピソードです。

ごゆっくりお楽しみください。

翌日。

『キーンコーンカーンコーン』。


午後4時を目前にし、公立以東中学校に6限目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

ホームルームを済ませた生徒達はこれから部活に向かう者と下校する者に別れ、各々教室を後にする。


校舎2階に位置する2年2組の教室に目をやると1人の女子生徒がクラスメイトと挨拶を交わしながら帰り支度をしていた。


実季(みのる)ちゃん、またねぇ。」

「じゃあな、赤松。」

「また明日、実季。」

「うん、また明日。」


彼女の名前は赤松実季。

今年14歳になった『この間までは』ごく普通の中学2年生。

何故過去形であるかというと、彼女自身クロードと出会ったその日から『魔法少女』としての活動を懇願されたからであり、昨晩、突如現れた巨大な怪物と化した『ダークエナジー』を浄化した『魔法少女メルシールー』の正体は彼女自身なのである。



この作品はそんな実季の『魔法少女メルシールー』として華麗(?)に活躍する姿を描いたファンタジー作品である。



「(あぁ~、やっと帰れる・・・。)」

実季は溜め息交じりそんな事を思う自身が所属する2年2組の教室を後にした。

廊下を歩くと間も無く1人の女子生徒が声をかけて来た。


「実季。一緒に帰ろ!」


この女子生徒の名前は高島真琴。

実季とは同学年の14歳で幼馴染である彼女がメルシールーである事を知っている人物。

2年1組に所属。


「あ、真琴・・・。」

名前を呼び掛けられこちらを振り向く実季の表情からは疲労が見て取れた。

大凡察しは付いていた真琴ではあったが念の為、その理由を実季に尋ねる。


「実季、どうしたの。何だか疲れてない?」

「うん。昨日も『ダークエナジー』を浄化しに行ったからね、『メルシールー』として。」

「昨日も?何で言ってくれなかったよ! 最近、クロードくんに実季の事、聞いても答えてくれないし・・・。」

「いや、私がクロードに口止めしてるんだよ。私と一緒に居て真琴や智史に何か有ったらいけないから・・・。」

「『何か』って・・・。」


このところ実季がメルシールーとして活動する際、何故自分達が来ない様にしているのか理由を尋ねようとした真琴。

しかし、彼女なりの配慮が有っての事ではないかと推測すると躊躇する様に少しの間、口を閉ざす。


「『魔法少女』もなかなか大変みたいね・・・。」

「あはは。そうみたい・・・。」

数秒の沈黙の後、少し淋しさを滲ませた表情を浮かべつつ労いの言葉をかける真琴。

一方、実季は本来、真琴が何か別の言葉を言いたかったのではないかと悟ったが話を合わせる為、空笑いをしながら返答した。


下駄箱へ向かう為、階段を下りる2人。

ふと会話が途切れたところで実季が冗談交じりにポツリと呟く。


「やっぱ『魔法少女』なんて引き受けなきゃ良かったかな・・・。」


実季にとっては何気無い独り言に過ぎなかったのだが、その一言がまるで後悔を滲ませている様に聞こえた真琴は少し考えた後、優しい口調で語り掛ける。


「でも、『メルシールー』として活動している時の実季、カッコ良いと思うわ。何というか強くて頼りになるって感じがして・・・。」

「え。 そ、そうかなぁ・・?」

実季はその言葉に少し戸惑いながらもはにかむと真琴は手応えを感じつつ続ける。


「ええ、そうよ。 それに、『メルシールー』に変身した時の実季、とっても可愛いし・・・。」

「それ本当? やだ、可愛いだなんて・・・。」

「私達がこうして何時も通りの日常を過ごせるのも実季が『メルシールー』として魔法で『ダークエナジー』を浄化しているからだと思うな・・・。」

「よ、止してよ真琴。そんなに言われたら照れちゃうよぉ~。」


第三者が聞けば見え透いたお世辞にも取れる真琴の言葉に右手を後頭部に添えながら照れ笑いを浮かべる実季。

幼馴染が故、扱い方をよく理解している様だ。

下駄箱へ着くと2人はそれぞれ所属する靴箱の前まで行こうとすると1人の男子生徒の姿を発見する。


「あ、智史(さとし)!」

「お、実季、それに真琴も!」


この男子生徒の名前は吉岡智史。

真琴と同じく実季とは同学年の14歳で幼馴染であり彼女がメルシールーである事も知っている。

2年3組に所属。


「今日は同じクラスの子達とどっか行かないの?」

「ああ。今日は特に・・・。」

「じゃあ、今日は3人で一緒に帰ろうか・・・。」


実季の提案に賛成する形で一緒に下校する事にした幼馴染3人は部活動に勤しむ生徒達を背に校舎を後にする。


他愛の無い会話に花を咲かせつつ帰り道を歩いていると改まったところで智史が実季に尋ねる。


「なぁ実季。『メルシールー』の事なんだけど・・・。」

「え、何・・・?」


智史もまた真琴同様、実季がメルシールーとして活動する際に自分達を近付けさせない様にしている事を気にしているらしい。

実季が振り向くと智史は時折途切れながらも自分の想いを伝える。


「あの、俺達、あ、いや、俺、最近、お前が『メルシールー』として活躍している時、その場に居ないなって思って・・・。やっぱり、俺が居ると足手纏いだったか・・・?」


きっと、『魔法少女』である自分を思っての発言であろう。

そう判断した実季は智史を傷付けない様に注意しながら優しい口調で答える。


「そんな事無いよ智史。『足手纏い』だなんて、これっぽっちも思ってないよ。だけど、『ダークエナジー』は何処で現れるか分からないし、それに智史を危ない目に遭わせるのも嫌だし・・・。」


実季の言葉を受け次第に自分の想いを上手く伝えられないもどかしさを覚えた智史は気が付くと彼女の名前を力強く呼んでいた。


「実季!」


突然、強い口調で名前を呼ばれた実季は驚きながらも返事をする。


「は、はい!」


一方、後に引けない状況になった智史は思っていた以上に大きな声が出てしまった事で実季を驚かせてしまった事に少し動揺しながらもゆっくりと語り始める。


「お前の言いたい事は分かる。だけど、実季にもしもの事が有ってからでは遅いから、だから・・・。」

「だから・・・?」


不意に言葉を詰まらせた智史を実季は何事かと思いながら見詰める。

彼はその事に気付くと決して平常心では無い自分の気持ちを抑えつつ続けた。


「だから、何か有ったら少しでも力になりたいと思って、その・・・。」

「智史・・・。」


智史の言葉に実季は少しだけ目を潤ませるとその様子を先程から黙って見ていた真琴はついに我慢出来なくなり2人の間に割り込む様に口を開く。


「あのぉ、智史くん。水を差す様な事を言う様で悪いんだけど、私が居る事を忘れていない・・・?」

「ま、真琴・・・!」

忘れていた訳ではないが背後から話しかける真琴に驚く智史。

一方、実季は何を思ったのか真琴が話の輪に入れずやきもちを焼いていると勘違いしたらしい。


「あ、真琴の事を忘れてた訳じゃないよ。2人共私にとって大切な友達だもん!」

まるで幼子に語り掛けるかの如く真琴を宥める実季からは悪気等は一切感じられない。

しかし、真琴と智史の方は少々困惑している様だ。


「え? あ、あぁそうだよな。俺も真琴もお前にとって大切な友達だもんな!」

「実季、あんたって子は・・・。」


取り敢えず話を合わせるべく戸惑いながらも返答した智史と呆れた表情を浮かべながら呟いた真琴に対し何故そんな反応をしているのか理解出来ず不思議そうな表情を浮かべる実季。

そして、真琴は溜め息を1つするとこの場を仕切り直す様に口を開く。


「実季、結論から言うとあんまり1人で抱え込むなって事。あんたは『魔法少女メルシールー』である前に中学2年生の『赤松実季』何だからね。」


真琴は学校の廊下で実季と話していた際に言いかけてやめた想いを伝える。

すると、その想いに触れた実季は思いがけず不意を突かれた様な顔をした。


その表情に気付きながらも真琴は続ける。

「私も智史くんもあんたが心配なんだから、困った時は何か言いなさいよ。ねぇ、そうでしょ智史くん?」

「あ、あぁ・・・。 まぁ、クロードが居るから大丈夫かもしれないけど、どうにもならなくなりそうになったら、何でも良いから俺達には言ってくれよ。」

智史は真琴に促される様に返事をすると少し恥ずかしそうにしながらも先程の言葉に続ける様に言った。


「2人共、ありがとう・・・。」

実季は優しい笑顔を浮かべながら2人に感謝の言葉を告げる。

対して真琴と智史は先程よりも表情が明るくなった彼女を見て少しだけ安堵した。


そんなやり取りをしていると3人は公立七橋小学校の前を通る。

実季達が嘗て通っていたこの学校では現在、彼らの兄弟が通っており公立小学校でありながらブレザータイプの制服の着用が義務付けられている。

こちらでも授業を終えた児童達がランドセルを背負い学校を後にしている。

そんな中、校門の前で1人の少年が仁王立ちで誰かを待ち構えている。


「実季さん、待ちましたよ!」


この少年の名前はクロード・アンバー・フォールド。

魔法界から『魔法少女』と共にダークエナジーを浄化する命を受け人間界にやって来た魔法使い。

メルシールーである実季のパートナーとなった現在は赤松家に居候している海外からやって来た少年として、七橋小学校に通っている。


「実季さん、昨日も言いましたけど一般市民に絡んではいけないって何回言わすんですか?」


責める様なクロードの強い口調ぶりに少し驚きつつほぼ同時に実季に視線を向ける真琴と智史。


「何、実季? あんたまたやらかしたの?」

「真琴、『また』って・・・。まぁ俺も一瞬思ったけど・・・。」

やや冷ややかな彼らの反応を受け実季は興奮しながらも事情を説明する。


「聞いてよ!昨日、『ダークエナジー』を浄化しに行ってたら、避難してた人の中に私の事を『コスプレ』とか『魔女っ子ごっこ』って言う人達が居たんだよ!」

「だからってあんな鬼みたいな形相で言い寄る人がありますか!」

「実季、お前・・・。」

「クロードくんが居なかったらその人達、どうなっていたのかしら・・・。」


クロードが実季のパートナーになってから、2人の言い合いが日常となっているらしくその様子を苦笑しながらも見守る智史と真琴。


「さて、お説教はこの辺にして・・・。実季さん今日の晩ご飯はハンバーグにしようと思うんですけど、如何ですか?」


クロードは前置きをした後、改まった口調で夕飯のメニューを実季に尋ねる。

赤松家に居候してから医師として忙しくしている実季の両親に代わり、週に数回程ではあるがクロードが夕食を担当する様になった。


「おお、ハンバーグ!? 賛成! 異議無し!」

目を輝かせる様に反応した後大きく拳を突き上げながら喜ぶ実季。


「じゃぁそうと決まれば実季さんも手伝ってくださいね。」

「えぇ~、私料理苦手なのに・・・。 あ、『味見係』なら手伝うよ!」

「何ですかそれ? そんな係なんて有りませんよ! それじゃぁ、ただのつまみ食いじゃないですか!」

こちらも日常となった実季とクロードの掛け合いだが、先程とは違い険悪な雰囲気は一切感じられない。


「実季ったら、さっきまで疲れているかと思ったら・・・。」

「ま、こういうところが実季の良いところでも有るんだけどな・・・。」

そう言いながら、今度は微笑しながら2人のやり取りを見守る真琴と智史。


そして4人は賑やかにそれぞれの家へと帰るのであった。



実季の『魔法少女メルシールー』としての日々はまだまだ続く・・・。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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