プロローグ Part.01
『Selfish Life』以外の小説を書きたいという衝動にかられ作成しました。
荒削りかも知れませんがよろしくお願いします。
時刻は夜10時をとっくに過ぎた頃、閑静な住宅街に突如としてけたたましいサイレンの音が鳴る。
『ウー、ウー、ウー!』
何事かと思い外の様子を見ると、まるで特撮映画の様な巨大な怪物が大きな呻き声と共に地響きを立てながら徘徊している。
それを受けこのサイレンが避難を促す物だと理解すると住民達は恐怖と混乱の中、怪物から出来るだけ遠ざかる様に逃げ惑う。
そんな中、避難住民達の真上をまるで鳥か飛行機の様に箒に乗った人物がこちらに向かってやって来る。
「おい、何だありゃ!?」
「こっちに向かってくるぞ!」
数名の住民がそれを見付けると箒に乗った人物が見た目から推測するに10代半ば程の少女である事が分かった。
「とお~ちゃ~く!」
そう言いながら少女は両足をしっかりと着ける様に着地する。
ひと際目を引く大きなとんがり帽子と肩にかけた丈の短いケープが特徴的な少女の出で立ちを見ると、上は白いブラウスに赤いリボンタイを付け下はハイウエストのスカートとニーソックスを履き、靴はショートブーツといったコーディネートだ。
宛ら魔法使いを彷彿させる少女が地上に降り立つと先程まで乗っていた箒をまるで手品の如く消し今度は何処からか魔法のステッキの様な物を取り出す。
「『魔法少女メルシールー』。只今、参上!」
決め台詞なのだろうか、右手に持ったステッキを斜めに傾けウィンクをすると右足の踵をトンッと軽く地面に叩き付けながらポーズをとる。
水星の如くやって来た『メルシールー』と名乗る少女に見惚れるあまり足を止めていた住民達だったが暫くして自分達が置かれている状況に気付いたのか再び避難し始める。
「おい、お嬢ちゃん何やってんだ!」
「早くお前も逃げろ! 危ないぞ!」
逃げながらもメルシールーに対して避難を促す住民。
それに対し、彼女は『やれやれ』と言わんばかりの表情をすると徐々に近付く怪物を目にし、今度は『まぁ見てなさい』と言った顔をしながらステッキを構える。
丁度その時、少し遅れてメルシールーの仲間と思われる1人の少年が同様に箒に乗ってこちらにやって来た。
「メルシールー、お待たせしました!」
「クロード、もう早くしなよ!」
10歳前後の見た目をしたこの少年の名前はクロードというらしい。
クロードは箒から降りるや否やメルシールーに注意を促す。
「そんな事よりメルシールー、気を付けて。敵はかなりのダークエナジーを吸収して巨大化しています!」
「そんなの見りゃ分かるよ。じゃぁ、今日もやりますか!」
そう言うと、メルシールーは手に持っていたステッキを使い、あっという間に巨大な怪物を浄化させてしまった。
「す、すごい!」
「たった、一瞬で・・・。」
「こんな可愛い子があんなデカい化け物を・・・。」
「お嬢ちゃんは俺達の命の恩人だ!」
その様子を間近で見ていた住民達からの喝采を浴び、右の手の平を後頭部に置きながら照れた様子で会釈するメルシールー。
「えへへへ・・・。どうも、どうも。」
ちやほやされるあまりデレデレと笑う彼女を横目で見ながら、クロードはこれ以上目立つと返ってこれからの活動に支障が出る事を危惧しこの場からの撤退を提案する為、メルシールーに耳打ちする。
「メルシールー、そろそろ引き上げた方が良いですよ。 ギャラリーが増えて来てます。」
「え~?良いじゃん別に・・・。私、感謝されているのよ? 良い気分に浸らせてよ!」
2人が小声でそんな会話をしていると、避難していた住民の一部が心無い言葉をメルシールーに向け浴びせる。
「な、なんなんだあの子は。コスプレイヤーか?」
「もしかして私達、あの子の『魔女っ子ごっこ』に付き合わされたのかしら?」
「だとしたら、問題だぞ!」
その声を背中越しで聞いていたメルシールーは徐々に顔を引きつらせる。
「あ、拙い! メルシールー、抑えて!」
それを察知したクロードは彼女を宥めようとするも時すでに遅し、心無い言葉を発した住民らに向けゆっくりと後ろを振り返る。
「『コスプレ』?『魔女っ子ごっこ』? ねぇあなた達、それ私に言ってるの?」
口調は優しいが激昂している為、物凄い形相で振り返るメルシールー。
「ひぃ~!」
恐怖のあまり悲鳴を上げた彼等はその場に尻もちを付く。
「普通、この場合お礼を言うところだと思うんだけど? あ、そうか!あなた達もダークエナジーに侵されているのね? だとしたら浄化してあげないと・・・。」
「メルシールー、やめて下さい! この人達はただの一般市民です!」
ステッキで右肩を軽く叩きながら詰め寄るメルシールーを制止するクロード。
「さぁ、早く。今のうちに逃げて!」
この呼び掛けを合図として心無い言葉を発した数名の住民は慌てた様子でその場から逃げて行った。
「クロード、何て事するのよ!」
「それはこっちの台詞です! 今日はもう帰りますよ! お説教は明日改めてします!」
そう言うと2人は箒に乗り、『一体何だったのだ?』と言いたげな表情をしている住民達を背にしてその場を去って行った。
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